まずは大都市近郊区間制度を正しく理解してください。大都市近郊区間制度というのは自動的に最安運賃になるわけではありません。この点を御質問者様は根本的に誤解されていると思います。
大都市近郊区間制度というのは、「運賃計算」のルールではなく、「乗車券の効力」についてのルールです。旅客営業規則においても全く別のジャンルで規定されています。
大都市近郊区間制度における「運賃計算」は、普通に計算します。特に変わったところはありません。つまり、実際に乗車する経路の距離を運賃計算表に当てはめるわけです。様々な運賃計算の特例も、大都市近郊区間制度であっても変わりなく適用されます。
「乗車券の効力」というのは、この場合は、「運賃計算」に用いた経路以外の経路を乗車してもよろしいですよ(不正とは扱いませんよ)という意味です。ただ、その代わり、普通だったら100kmを超えていれば途中下車ができ、有効期間も2日間以上になるけれども、それはダメですよ、ということです。
同じ駅を二度通らないこと、経路がバッティングしないこと・・・などは、別に大都市近郊区間制度に限った話ではなく、当たり前の話です。乗車券自体は、言ってみれば「乗車権」という名の権利の購入であり、駅や経路が重複するということは、権利の重複行使ですので、その際はもう一度改めて乗車券を買ってください、という話です。
ということは、普通の状態であれば誰だって最安経路で「運賃計算」をしようと考えますよね。それだけの話です。でも、逆に遠回りの経路で乗車券を作り、最安経路で乗車してもよいわけです。ただ、そんなことは不合理なので普通はしないだけの話なのです。
でも、中にはあえて遠回りの経路で発券した方が合理的な場合もあります。
大阪近郊区間でいうと、例えば、朝霧から奈良へ行くのに、普通だったら「朝霧(山陽)神戸(東海道)大阪(大阪環状線)今宮(関西本線)奈良」という98.6kmの1530円のところが、あえて「朝霧(山陽)神戸(東海道)大阪(大阪環状線)京橋(片町)木津(関西)奈良」という106.1kmの1890円にして、100kmを超えているので学割(2割引)を適用させて1510円とするようなことが考えられます。
この場合であっても、大阪近郊区間内であれば、運賃計算に用いた経路以外の経路を通ってもよいので、券面どおり京橋経由でもいいし、最安経路の天王寺経由でもいいし、はたまた新大阪から新幹線で京都を経由しても構いません。
さて、長い前置きはこれくらいにして、ご質問そのものに戻りますが、西宮から120円区間ということは、東海道本線(神戸線)でいうと、上り方面は甲子園口行き、下り方面ではさくら夙川行きの乗車券ということですよね。ですから、この乗車券だけでは甲子園口駅かさくら夙川駅でしか下車できないのです。
ただ、そのまま隣駅に行ってもいいですが、福知山線(宝塚線)や加古川線で谷川を経由して、それぞれのゴール駅(甲子園口又はさくら夙川)に行ってもよいわけです。
いずれにせよ、ゴール駅はあくまで甲子園口かさくら夙川に限られます。西宮からの120円区間乗車券である以上、西宮がゴール駅にはなり得ません。
西宮を発着する環状線一周の乗車券にするためには、例えば、「西宮(東海道)尼崎(福知山)谷川(加古川)加古川(山陽)神戸(東海道)西宮」の186.0kmの3260円であればOKです。でも、これであっても「効力」としては大都市近郊区間制度が適用され、他の経路も乗車できます。といっても、この場合の他の経路はありませんが(笑)。大阪から大阪環状線で京橋へ、東西線で尼崎へ、福知山線(宝塚線)で谷川へ・・・という経路はダメです。尼崎で重複してしまいますので、権利の重複行使に該当します。
今回、再度120円を取られたとのことですが、もし谷川経由の環状線一周をしたのであれば、本来は3260円掛かるところ、隣の甲子園口(又はさくら夙川)でいったん降りたことにして、最初の120円区間乗車券はおしまいと扱い、再度、甲子園口(又はさくら夙川)から西宮までの120円区間乗車券を買って、この乗車券も大都市近郊区間制度が適用されますので、大回り乗車をして西宮へ戻ってきたことにしたわけです。結果的に3260円掛かるところが240円で済んだわけですので、お得でしたよね。
で、「どうして大都市近郊区間制度においては環状線一周ができないのか」とのご質問ですが、冒頭に述べたように、これは「運賃計算」のルールではなく、「乗車券の効力」の話ですから、環状線一周であっても山陽新幹線を利用しているとか、大阪近郊エリアを出ていない限り、大都市近郊区間制度は適用されます。
実際のお尋ねは、「どうして環状線一周で120円にはならないの?」ということだと思います。これについては、逆に考えて、西宮から120円の区間の駅はどこか?それは甲子園口かさくら夙川しかない。つまり、西宮行きの最安は3260円しかないから、としか言いようがありません。いずれも同じ大阪近郊エリア内で完結していますので、「効力」としては間違いなく大都市近郊区間きっぷですよ。
自動的に最安経路で計算し、経路の指定をしないのは「運賃計算」の話、一応券面には経路を記載するものの、それ以外の経路もOKなのは「効力」の話。よく似ていますが、位置付けが全く異なります。この区別がきっちり付けば、ルールの理解が進むと思います。
下記の参考URLは、JRの旅客営業規則です。「運賃計算」は第3章、「効力」は第4章と、全く別立てになっていることがお分かりいただけると思います。
お礼
ご丁寧な回答ありがとうございます。なんとなく分かってきました。