Nr1です。おせっかいとは思いますが回答の中に少し誤解が若干おありのようなので専門家としてもう一度回答させていただきます。
質問に誘導されてうっかり同調してしまいましたが、♯♭が3つくらいは19世紀中ごろまでのオーケストラ曲では少なくとも普通です。そのわけは主に金管楽器のせいです。詳しくは後で書きます。
ミーントーンで演奏できる調性が♯♭3つくらいと言うのも、少し短絡的かと思われます。
交響曲、弦楽カルテット、オラトリオなどの主調と言うものと、そこから転調して行くのとは全く別のことで、たとえばモーツアルトの39番の終楽章ではEs-durから短3度上のGes-dur(実際には譜面を読みやすくすると言う判断からエンハーモニックでFis-dur)に一挙に飛ぶ所があります。(スコアのお持のかたは50小節からです。)曲はこの後展開部でかなり大胆な転調(例えばE-durからe-moll、115小節)、主に3度転調を駆使いています。その他、ベートーヴェンもハイドンも枚挙に暇はありません。
詳しく調べてみたわけではないですが、これらの作曲家もその他多くの作曲家も生涯書いた曲中、すべての調性を使っていたことは経験上からもほとんど断言できます。転調の仕方と言うのは、不協和音をどううまく使うかと同じくらい作曲家にとっては大事なことで誰しもそれに精力を傾けていたと思います。決して調律法などで挫ける訳がありません。
と言うわけで交響曲第N番 N調というのは主調であるという意味しかありません。
では何故こういった調が圧倒的に多いか。それはオーケストラではナチュラル金管楽器の管のせいです。トロンボーンは別として、トランペット、ホルンは主に曲の主調の管を使います。この管は抜き差しして使うのですが、どのくらい種類があるかというと、C,D,Es,E,F,G,A,B(B♭)です。Asはありません。お分かりかと思いますが、この辺が主調の真相かと思われます。特にトランペットは記譜でドミソ以外の音かなり困難なのでモーツアルトはティンパニーとほとんど同じような機能でしか使っていません。こういった楽器は主に主調とその近くの調で活躍し、遠い調になると姿を消します。
では鍵盤楽器の入った曲はどうなのか。たとえばピアノコンチェルト。
これも同じような理由で主調は同じようなものです。しかし転調は自由自在です。どうしてか。ここからは想像ですが、例えばC-durの曲が転調で As-dur さらにエンハーモニックで gis-moll のような転調をした時の少し濁って不安定な響きになるのをこの時代の人は結構楽しんでいたのではないかと思います。それに第一作曲家たるものがC-durで始めたシンフォニーをG-durとF-durとA-moll だけの転調で書くわけが無いのです。(おもちゃのシンフォニーと言う例外もあるけれど)
さらに一言加えると確かに調律法の理由もそれなりにあって鍵盤楽器の響きが良い調を用いたのは確かです。しかしかといって曲中そのせいでこういった大家が転調に躊躇したとは到底思われません。ベートーヴェンの後期のピアノソナタなどを参照してください。
時代が少し下って19世紀中ごろから金管楽器が飛躍的に改良されて半音が出せる、現代の楽器とほとんど同じになりました。この頃になると作曲家も少し大胆になって、この間も話に出た「新世界」の2楽章は第一楽章のe-moll の同主調 E-durから金管楽器の美しいコラールで Des-durに転調します。そのほかボロディンの2番だったかFis-mollですね。そして終楽章は確かFis-durだったと思います。この辺は金管楽器の改良の成果ではないでしょうか。
因みに鍵盤音楽では、シューベルト(1797-1828)はアンプロンプチュで既にGes-durをつかっているし、ショパンは黒鍵系の調性の大家です。
補足
ん? 変ホ長調とかハ短調はどうなるのですか?