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ギリシア陶器の題材

ギリシア陶器の題材として有名な逸話や登場する妖精などを教えてください。

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  • sheperd
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回答No.1

ギリシアの装飾陶器と一口に言っても古くはミノア時代(前16C頃)、ミケーネ時代(前13C頃)の装飾様式から、幾何学文様(前10C頃)→東方様式(前8C頃)→黒絵式(前6C頃)→赤絵式(前5C頃)と変遷していますので、モチーフをこれと断言するのは難しいかと思います。 各時代に見られた代表的なモチーフを挙げるなら、ミノア時代ではカマレス陶器に自然主義的な植物紋や海洋生物(蛸など)の姿が、ミケーネ時代にはこれらを引き継いで蛸の触手や海草などを簡素化させた海洋紋がありました。一部に戦争描写などもありましたが、この時代には質問者さんの求めているような神話表現は見当たりません。 幾何学文様期に入るとほとんどは線描画となりますが、後期には鳥や馬といった動物紋に加えて「腕のある女神像」や「グリュプス(グリフォン)」といった神話上の存在もちらほら表れるようになります。 これはオリエントとの文化的接触によって簡素化傾向にあった美術表現に刺激が与えられたものと考えられており、この傾向は東方様式時代により顕著となります。この時代にはライオンやイルカ、牛のようなモチーフが多用されました。スフィンクスやグリュプスも前時代に増してちらほら見られるようになりますが、神話表現はまだ一般的ではありません。 いわゆるギリシア神話の神々や逸話が頻繁に登場するようになるのは前7C以降の話で、黒絵式でよく使用されたモチーフでは、『イリアス』や『オデュッデイア』にまつわる逸話のほか、ヘラクレスの難行やテセウスのアテネ建国譚にまつわる図像があります。 アキレウスやヘクトール、オデュッセウス、パトロクロス、プリアモスといった有名な英雄が名前を付して表されたほか、トロイア戦争に関わったヘラ、アテネ、アフロディテー、アポローン、ヘルメスなどの神々の姿が中心的題材となりました。ヘラクレスの退治した獅子や猪、ケルベロス、ケンタウロスなどの神話生物、さらにはオデュッセウスが放浪先で出会ったキュクロプスやアマゾーン、セイレーンなどの姿もよく使用されています。 またメディアとイアソーン、アイネイアスとアンキセスなど各地のポリスに纏わる伝承がこぞって使用され始めたのもこの頃です。 また陶器を酒宴の席で用いたためでしょうか、酒神ディオニュソスや牧神パン、サテュロスやマイナス(ニンフ)、ムーサイなど宴会に関わる音楽の神や妖精なども好んでモチーフとされています。 『神統記』などの古典叙述に表れるギリシアの神々と神話伝承のほとんどは、この時代既に何らかの形でモチーフとされていました。 しかし赤絵式になると一転、今度は神話世界ではなく日常的な事象に纏わるモチーフが多くなってきます。オリュンピアなどでの競技会の一場面であったり、他国との戦争であったり、祭りの行列であったり、神に捧げる犠牲獣を連れて歩くシーンであったり、といった風にです。この時代にも神々の姿は多く描かれていますが、戦勝を約束する女神ニケであったり、牛(エウロペー)を追い回すゼウスであったり、ケンタウロスに酒を飲まされるヘラクレスであったりと、どこか人々の生活に通じる図像が選ばれるようになっています。ムーサイやサテュロスは変わらず好まれたモチーフのひとつでした。 と駆け足でギリシア陶器の歴史とモチーフの変化を巡ってみましたが、参考になりましたでしょうか。 黒絵式・赤絵式時代のモチーフと神々の系譜については 山川出版社『壺絵が語る古代ギリシア』 が参考になるかと思います。

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