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近代科学とギリシャの自然哲学
コペルニクス、ケプラー、ガリレオ等によってはじめられニュートンによって集大成された近代科学と、ギリシャの自然哲学の違いについて教えてください。
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- JidousyaGaisya
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記録媒体の違いに起因する格差を追加させて下さい。
- transaction
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コペルニクスからニュートンにいたる物理学における大きな変化をふくめ、17世紀ごろに起こった科学上の大転換を、17世紀科学革命(またはたんに科学革命)と呼びます。 あとでコメントしますが、ニュートンでひとまずの完成を見たのは近代物理学であって、近代科学すべてとはいえないと思います。近代物理学の特徴であっても、近代生物学の勃興期には当てはまらない特徴もあります。 近代科学の説明に偏ってしまいますが、お許しください。また、ここでギリシアの自然哲学としてとりあげるのは、後世に大きな影響を与えたアリストテレスの哲学だけにさせてください。 1 自然観の転換 アリストテレス的な宇宙像――もちろん天動説です。地球を中心にして、惑星や恒星を載せたいくつもの天球が回転している様子を思い浮かべてください。天(天球のある世界)と地(地球の表面)では、力学の原理が異なっていました。天の原理は等速円運動であり、地の原理は地球の中心へ向かう運動でした。また、天は永遠に変わらないものであるとされていました。さらに、天球で囲まれている以上、宇宙は有限であると考えられていました。 近代の宇宙像――太陽中心説です。彗星が不規則な動きをしていることから、天球が存在しないことが示され、新しい恒星の観測が天の不変を否定しました。また、ニュートンが天上の力学と地上の力学をまとめ、天地の2分が崩れました。天地の力学を数学的にまとめたのがニュートンです。ニュートン力学では、宇宙は無限に広がるものと考えられていました。 2 機械論的世界観 ギリシア哲学にもまして近代科学では、物体にしろ生物にしろ、それに内在する力でそれが動くと考えるのではなく、すべて機械的に物質粒子の運動として捉える機械論的世界観が彫琢されていきました。アリストテレス的世界観では、そのような内在する力というのは許容されていました。 3 科学的方法の成立 近代科学ではギリシアの自然哲学とはちがい、科学の数量化が発展していきました。また、仮説を立ててそれを検証しうるという経験主義的スタイルも確立します。これには、望遠鏡の開発など、技術の発展も重要です。 4 科学と技術の連携:知識の実際性 ギリシアの自然哲学は、理論的な興味から発展してきました。近代では、戦争で大砲を飛ばすなど、実際の必要性から生じた側面があります(すべてではありませんが)。たとえば、タルターリャの投射体の理論など。 5 科学革命初期:神と自然 一方で、科学革命では、中世の科学の暗い時代からの解法という単純なことにはなりませんでした。世界が機械だとしても、その機械の製作および作動は、神の手によるものです。また、従来自然の研究がキリスト教と相容れない悪魔の所業とみなされていた側面がありましたが、神を讃美する行為にまで引き上げることができました。そこでは、数式と経験データとが一致し、それは神の理性によるとされました。理論のほうが経験的結果よりも重視され、結果は一般的な理論の一部として解釈されるのみでした。 6 科学革命が進行するにつれて:科学の学会と数学 学会が成立し、雑誌が刊行されるにつれ、経験的なデータが氾濫していくことになりました。これは、それまで1冊に理論としてまとまった書籍を媒体に科学が展開していたのと対照的です。結果が重視されるようになって理論の力が衰え、理論は結果にたいする解釈として付属的なものとしてみなされるようになっていきます。また、数学も純粋数学として経験世界から切り離されていくようになります。 補説:生物学における仮説検証と機械論的世界観 最初に述べたように、科学のすべての分野で機械論的世界観が徹底されたわけではありません。生物学ではハーヴィの血液循環理論が大きなトピックでしたが、ハーヴィの研究スタイルは、数量化とも機械論とも関連が薄いものでした。ニュートンなどの物理学者はデカルトの機械論的な哲学の影響を受けましたが、デカルトの生物学への影響は、それほど大きいものではありませんでした。現代の分子生物学のようにはミクロなメカニズムを見ることができなかった当時、生物の身体の仕組みは、機械論的に考えるにはまだまだ複雑なものだったからです。その自然像は、全体としてはアリストテレス的自然観と矛盾するものではありませんでした。しかし、仮説検証という経験的事実を積み重ねる研究法は、近代物理学と類似しています。 読みづらいところがありましたら、すみません。 この回答は次の本の内容にもとづいてまとめました。 渡辺正雄 (1982). 科学の世界: その形成と展開. 東京: 共立出版.