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源氏物語の翻訳について
- 高麗人が宮廷に来るが、帝は彼らを招かなかった理由
- 極秘で皇子を見知らぬ客の住居へ送った理由
- 占い師が皇子の未来を予示する内容
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質問者が選んだベストアンサー
今晩は。『国語便覧』はすごい本ですね。一生使えますね。 1) >この日頃いく人かの高麗人が宮廷に来て、そして一人の占い師が彼らに混ざっていた。これを聞いたとき、帝は彼らに対して宮廷に来ることを招かなかった。宇多天皇によって作られた外国人の入国に反しての法が原因で。・・・・・・? ●とてもいいです。send for 人 で「人を呼びにやる(自分が行くのではなく、人を使って呼びに遣らせる)」、admission は「入国」よりも「宮廷に入ること」 >among them a fortuneteller・・・・・ここの直訳がわかりません。a fortunetellerを主語にして訳したいところなのですが一番後ろに来ているので・・・・?です。 a fortuneteller came to Court among themという解釈をしていいのでしょうか? ●これは、At this time some Koreans came to Court and among them 【was】a fortuneteller. と was が省略されている形です。倒置で、A fortuneteller was among them. のことです。英語らしくすると、There was a fortuneteller among them. です。文法的にうるさく言うと、among them 【being】a fortuneteller と分詞構文の being の省略された形ということになるのでしょう。いずれにせよ「そして一人の占い師が彼らに混ざっていた」という訳でいいです。 >Hearing・・・・(分詞構文で)聞いたとき? ●その通りです。 >the law against the admission of foreigners which was made by the Emperor Uda・・・ここはシンプルにthe law which was made by the Emperor Udaになると思うのですが、against the admission of foreignersを訳文にどう入れたらいいのかよく分かりませんでした。 ●against the admission of foreigners は the law に掛かりますので、「(宇多天皇によって作られた)外国人の参内を禁ずる法律」となります。 >law・・・・法?習慣、習わし? ●原文は「宮の内に召さむことは、宇多の帝の御誡めあれば」なので「いましめ」を訳しているわけですね。「決まり」くらいでもいいでしょう。 ちなみに Seidensticker は injunction(禁止命令)、Tylerは admonition(戒告)と訳しています。 2) >しかし極秘で彼は見知らぬ客の住居へ皇子を送った。彼は右大臣の護衛下に行った。右大臣は皇子を彼自身の息子として紹介する予定であった。占い師は皇子の人相にひどくびっくりしてそして断続的にうなずきながら彼の驚きを表現した。・・・・・? ●「使える」訳になっています。問題なしです。 3)”He has the marks of one who might become a Father of the State, and if this were his fate, he would not stop short at any lesser degree than that of Mighty King and Emperor of all the land. But when I look again--I see that confusion and sorrow would attend his reign. But should he become a great Officer of State and Councilor of the Realm I see no happy issue, for he would be defying those kingly signs of which I spoke before.” >「彼は国の父になる可能性がある人の特徴を持っています。そしてもしこれが彼の運命なら彼はすべての国の強力な王と帝の程度に劣らず急に立ち止まらないでしょう。しかし私が再び見るとき--私は混乱と悲しみが彼の統治に伴うだろうということを見ます。しかし彼は国の偉大な役人や王国の顧問官になるべきです。私は幸せな結末が見えません、私がすでに話したそれらの王者の徴候を彼が無視し続ける気があるなら」・・・・・・?? >he would not stop short at any lesser degree than that ~のところが和訳して意味がよくわかりません。 stop short・・・・急に立ち止まる? ● short of ~は大事なイディオムです。fall short of ~の形でしばしば使われます。「~に達しない」の意味です。走り幅跳びのイメージでとらえてみて下さい。3メートル跳ぼうと目標を立てて、跳んだものの2メートル90で地面に落ちてしまったという感じ... stop short of だと、「(昇進が)~の手前でストップしてしまう」部長になろうとしていたのに課長どまりになってしまった、というときに使えます。 degree はこの場合は「位」です。lesser は「劣った」つまり「~より下位の」です。 そうすると、ここは2重否定になっているのですね。「~より劣った位の手前で昇進ストップということはないだろう」=「~にまで昇りつめるだろう」 >But should he become a~・・・ここのButは「しかし」と訳しましたが「ではなくて」の訳になるのでしょうか?いろいろ迷いました。 ●Butは「しかし」でいいです。 >should he become a great Officer of State~・・・・he should becomeの倒置ですか? ●これもこの機会にぜひ覚えて下さい。If S should do と、if 節に should を入れますと「万一~なら」という意味になります。そしてこの構文は、よく if を省略し、should を文頭に出して、Should S do という形を取るのです。 should he become a great Officer of State and Councilor of the Realm I see no happy issue を訳しますと、「もし万一このお方が、高官になったり顧問官になったりすれば、けっして幸福ななりゆきにはならない相でございます」となります。 >issue・・・・結末? ●その通りです。 >he would be defying・・・・無視し続ける気があるなら?仮定法ですか? ●仮定法です。訳しますと、「私が最前申し上げました帝王の相に背かれることになるからでございます」となります。つまり人相見の言うのは、若宮には帝王の相がある、しかし帝王になればその治世は、悲しみと混乱の世となるであろう、しかしだからといって、帝王以外の高位の役職についても、幸福になる見込みはなさそうだ、というわけです。 >for he wouldのforはwhich I spoke for beforeのようにspokeの後ろに付くものでしょうか? ●これは接続詞の for です。「というのは~だから」と訳します。これも是非覚えて下さい。おそらく今後、何度となく使われるでしょう。 >I spoke beforeのbeforeは「すでに」ですか? ●まあそうです。少し前に帝王になる相をお持ちだ、と言ったことを指します。 3)の疑問が一杯になってしまいました。 ●難しかったですね。2重否定の文は凝りすぎてますね。 >占い師というのは本当に昔から重宝されていたのですね。 ●現代の占い師は偏差値ですね。 ************************* 《余談》 エリオットやジョイスやウルフら《モダニスト》たちが試みたことは、一言では言えませんが、日本で、川端康成や横光利一がやろうとしたことと少し通じます。それまでの文学にはない、新しい技法や文体を作り出して、20世紀的な感覚を表現することでした。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」というような日本語は、今では普通ですが、当時は斬新な感覚を反映しているものとして受け止められました。 絵画において、西洋では、透視画法や油絵の具の発明によって3次元の写実的な描写が19世紀後半には完成されていましたが、それは結局は目の錯覚であり、リアリティではないですね。その時浮世絵という、平面の構成だけで十分魅力的な絵が描けるという啓示は、かなり大きな衝撃だったに違いなく、印象派以降の西洋絵画は、透視画法を破壊していく方向に向かうことになるわけですが、同じような文学上の革命が《モダニスト》たちによって企てられたと考えられます。1922年というのが記念すべき年でした。(続く)
お礼
今晩は。『国語便覧』はすごいです。同感です。 いつも大変丁寧に回答をくださってありがとうございます。 1)and among them ~以下に動詞が出てこないので??になってしまいましたがwasが省略されていたのですね。(分詞構文のbeingが省略されたとも言えるのですね。) lawの所は訳者によって微妙に選んでいる単語が違うのですね。 3)は重要な要素がいろいろ入っているのですね。 Should S do という形が「万一~なら」というのを覚えておくと訳しやすくなりますね。この形を知らないで訳したので意味が全然違ってました。 とてもわかりやすくいろんな個所(forについてなど)を解説してくだってありがとうございます。 *************************** お聞きしたかった昨日のお話の続きを聞かせていただいてありがとうございます。 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」はあまりに有名な冒頭部分ですが当時としては斬新だったのですね。(漠然と書き出したわけではなく新しい技法や文体を作りだそうと試みて生まれたものだったのですね) 西洋絵画は時代によって描くテーマも技法もどんどん変わっていますが、浮世絵が新しい絵画の時代を切り開くような衝撃を与えたというのは興味深いです。平面の構成だけでも魅力が出せるということは抽象画が生み出されるきっかけにもなったでしょうか? 1922年というのがどんな記念すべきだったのか。。。。また続きを楽しみにしています!