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源氏物語の翻訳について
- 秋の月を見ながら、帝は桐壺更衣の母親の気持ちを詩にしたためた。
- 「雲の上の人たちでさえ秋の月が沈む時は涙を流している」という言葉に触発され、帝は松明を掲げたままで起きていた。
- 右近衛府からの声を聞いて、帝は丑の時刻が来たことを知った。
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今晩は! 1)And now the moon had set. The Emperor thought of the girl's mother in the house amid the thickets and wondered, making a poem of the thought, with what feelings she had watched the sinking of the autumn moon: >そして今、月は沈んでしまった。帝はやぶと驚くべき家の真っただ中にいる桐壺更衣の母の事を考えた、彼女は秋の月が沈んで行くのを見ながら何を感じたのか思う歌を作りながら・・・・・? >wondered・・・・・驚くべき?すごくすさんでいるという感じでしょうか? ●「驚くべき」は、wondrous です。wonder はよく使われる動詞で、「~だろうかと思う」という意味です。 wonder if ~、wonder + 疑問詞 が頻出形です。この場合も、making a poem of the thought を飛ばして、wonder + with what feelings she had watched the sinking of the autumn moon と疑問詞と連結しています。 訳は、「彼女(=桐壺更衣の母)は、どんな感情をもって、秋の月が(西に)沈むのを見守ったことであろうかと(帝は)思った」となります。 2)”for even we Men above the Clouds were weeping when it sank.” He raised the torches high in their sockets and still sat up. >「雲の上の人たちでさえ秋の月が沈む時は涙を流している」・・・・・? ●「雲上人」は宮廷人を意味します。「というのは、われわれ雲の上の人間と言われている宮廷人でさえ、月が沈むのを見て(その悲しさに)涙を流している(だからわびしい家に住んでいる更衣の母の悲しみはいばかりか)」 >for even weはどうやって訳すのでしょうか? ●「というのは、われわれでさえ…なのだから」です。 >彼は松明をそれらの受け口の中に高く掲げ、そしてまだ上体を起こしていた・・・? ● sit up は「上体を起こす」の意味もありますが、「寝ずに起きている」という意味もあります。ここは後者です。 3)But at last he heard voices coming from the Watch House of the Right and knew that the hour of the Bull had struck. >しかしついに彼は右近衛府から来る声を聞いた。そして彼は丑の時刻が鳴ったのを知った。・・・・? ●その通りです。午前2時ころですね。 4)Then, lest he should be seen, he went into his chamber. He found he could not sleep and was up before daybreak. >それから彼は見られないように、彼は彼の寝室に行った。彼は眠ることができないことを見出し、夜明け前に起きた。・・・・? ●その通りです。 >Then・・・・それから? ●その通りです。 5) But, as though he remembered the words ”he knew not the dawn was at his window”of Ise's poem, he showed little attention to the affairs of his Morning Audience, scarcely touched his dried rice and seemed but dimly aware of the viands on the great Table, so that the carvers and waiting-men groaned to see their Master's plight; >But, as though he remembered the words”he knew not the dawn was at his window”of Ise's poem >しかし彼は「彼は夜明けは窓にはないことを知った」という伊勢の歌を思い出したけれども、・・・??? ● as though は、as if と同じく「あたかも~であるかのように」です。 "he knew not the dawn was at his window" は、原文では「明くるも知らで」ですが、「窓に夜明けが来ているのも知らず」という意味の歌(=女性と愛し合って、夜が明けたのも分からない)を思い出したかのように、ということで、帝はまた、在りし日の桐壷の更衣との愛の交歓を思い出しているわけです。 >”he knew not the dawn was at his window”・・・・・意味が全くわかりません。伊勢の歌にあるのでしょうか? ●そうです。「玉すだれ明くるも知らで寝しものを 夢にも見じと思ひかけきや」という歌だそうです。 >he showed little attention to the affairs of his Morning Audience, scarcely touched his dried rice and seemed but dimly aware of the viands on the great Table >彼は彼の朝の謁見の行事に注意をほとんど示さず、かろうじて彼の乾いたお米に手をつけ、そしてしかし立派なテーブルの上の食物に仄暗く気付いているように思われた・・・・・? ● scarcely は「ほとんど~でない」という否定辞です。dimly は、「かすかに、おぼろに」くらい。 >butの部分が訳しづらいです。後半の意味がよくとれませんでした。Tableが大文字で始まっているのはなぜでしょうか? ●but は、ここは「しかし」ではなく、only の意味です。「帝は朝の儀典にほとんど注意を払わず、乾飯にもほとんど手を付けず、食卓の上の食物をただかすかに意識しているだけといったご様子でした」。 Tableが大文字で始まっているのは、宮中のものですので、尊敬の気持ちです。帝のことを、His Majesty といいますが、それが大文字なのと同じ理由です。 >so that the carvers and waiting-men groaned to see their Master's plight; >それで食卓で肉を切り分ける人たちと待っている人たちは帝の有様を見て不満の意を表した。・・・? ● wait on で給仕するという意味があります。ですので、waiting-men は、給仕たちです。 >the carvers and waiting-men・・・・・carversを辞書で引いたら「食卓で肉を切り分ける人」とあったのですが何かこの訳はおかしいような気がしていますが。彫刻師でしょうか? ●西洋の食事に擬しているのです。西洋だと、carver は「食卓で肉を切り分ける人」です。原文は「陪膳にさぶらふ限りは」で、carver などは出てきません。 ちなみに、西洋では、客人に肉を切り分けること(carving)は、host 役を務める男性の義務とされています。(正式な食事に欠かせない儀式であるわけです。) **************************** 《余談》19世紀後半、西洋列強は世界中に乗り出していき、とうとう最も遠かった日本にまで押し寄せました。大体は上から目線で見ましたが、日本文化のあるところは非常に魅力的に映りました。浮世絵が西洋絵画に与えた影響は有名ですね。こうした日本文化への傾倒を《ジャポニスム》と読んでいます。ラフカディオ・ハーンが日本に来たのが 1890年です。プッチーニの「蝶々夫人」(1904)もこの東洋趣味の伝統につらなっています。 1920年代のイギリスにもそれは、まだ継続していたようで、ブルームズベリー・グループの Waley が『源氏物語』に惹かれたのも、その現れですし、同じくブルームズベリー・グループのエズラ・パウンドは日本の俳句に強い興味を持ちました。またこのグループではないですが、イェーツという詩人は能楽に関心を寄せました。 Waley の『源氏物語』の翻訳に、エキゾティックな香りが漂っているのは、そうした伝統のためでしょう。現代の日本人は西洋化されていますので、『源氏物語』にたいして、かつての西洋人が感じたようなエキゾティックな魅力を、一部感じているのかもしれませんね。
お礼
今晩は!いつも大変丁寧に回答してくださってありがとうございます。 wonderがwith~と連結していたことはわかりませんでした。andが出てくると前の文とくっついて「~と」となるのかそこで区切って「そして」となるのか区別できてない感じです。(wonderの後に挿入句が入っていたのでカンマで区切ったのですね) for even weの「というのは、われわれでさえ…なのだから」という訳は教えていただかないととてもわかりませんでした。 伊勢の短歌を教えて下さってありがとうございます。(伊勢は百人一首の歌人ですね)どんな短歌なのか気になっていました。 butはonlyの意味だったのですね。ここの文の他の解説も詳しくしてくださってありがとうございます。 肉を切り分ける人というのが謎でしたが西洋の食事に擬していたのですね。 いろんなところがクリアになりました! ************************************** 確かに日本の浮世絵はゴッホなどの西洋絵画に影響を与えましたね。西洋文化と日本文化が融合するのは目新しいことだったと思います。ラフカディオ・ハーンもプッチーニもその頃の人なんですね。 イェーツが能楽に関心があったことは知りませんでした。俳句も英文にしてみるとおもしろそうですね。 (センスがないとできないですね) 源氏物語は日本の古典でありながら別の国の世界のような魅力があります。情緒にあふれているところが好きです。それがまさにエキゾティックなのかもしれませんね。 日曜日は投稿をお休みします。今週一週間本当にありがとうございました。