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乳児期と臨界期
乳児期は形態的成長や、精神運動機能の発達が著しいです。臨界期は成長と発達に決定的な時期がある時期のことです。乳児期と臨界期は同じ時期と考えていいのでしょうか?
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こんにちは。 臨界期といいますのは「学習臨界期」のことであり、これは幼児期の脳の発達に伴うものです。赤ちゃんは脳が未発達な状態で生まれてきます。そして、脳機能が最終的に成人に達するまでには誰でも15~20年の歳月を要するわけですが、生後3~4歳までの期間はこの脳の発達が極めて集中的に行われる時期と考えられています。 中でも、視覚、聴覚、運動の中枢といいますのは末梢神経を介して外界と接触するものです。このため、赤ちゃんは自分の見たもの触ったものなどの体験に基づいてこれを完成させようとします。このようなものが未発達であるというのは、結果的には、それは自分が生まれた環境に適応した神経機能を獲得するためです。 例えば、日本語環境に生まれたならば日本語を習得しなければなりません。ですから、このようなことを生まれる前から決めてしまうわけにはゆかないわけです。そして、言語学習臨界期を過ぎますと、それ以降は外国語を母国語として習得することができなくなります。 臨界期といいますのは、ある時期までに訓練学習の必要があり、それを過ぎると習得、変更ができなくなるというものです。視覚や聴覚に臨界期があるのは、赤ちゃんは脳は生後環境から頻繁に入力される情報を基にその部分の神経接続を強化してゆくためと考えられています。これにより、与えられた生後環境に適した脳が効率良く作られます。ですが、それは必ずしも乳児期ということではなく、決して決定的なものでもありません。 例えば、 「視覚、聴覚、運動:4歳」 「言語:8歳」 「数字:4歳」といったものが紹介されていますが、人間の赤ちゃんでこれを実験するというのは許されることではありませんので、未だ科学的に立証することはできず、各書籍でも解釈は大幅に異なります。 ただひとつはっきりと言えることは、このような能力は「普通の環境」が与えられるならば自然に獲得されるものであり、臨界期があるからといってわざわざ親が支援をしてあげる必要は全くないということです。もちろん、言葉を教えるというのは親の役目かも知れません。ですが、赤ちゃんにとって必要なのは言葉を覚えることではなく、言語中枢を活発に働かせるということなんです。 確かに4歳頃までの基本的な発達はたいへん重要です。例えば、この時期に眼帯で目を治療するとか、ギブスで手足が固定されるというのはあまり良いことではありません。ただ、それが直ちに発達を阻害するというわけではありませんし、長期間に渡る病気療養などといったことはよほど特別な事態です。ならば、そのようなことを避けるためにも当然、赤ちゃんの健康や栄養といったものはたいへ重要ということになるわけです。 やらなければ習得できないものとしましては、 「絶対音感:4歳」 「バイリンガル:5歳」といったものがあります。このようなものは結果として検証が可能であるため比較的信憑性は高いのですが、習得できなかったからといって日常生活で特に支障はありません。 遅ければ手遅れ、早ければ天才的な能力が身に付けられるといったことは、これはほとんどが「早期教育教材」などを販売する側の宣伝であり、科学的な根拠は何処にもありません。むしろ、視覚、聴覚なとの基本的な機能を正常に発達させた上で、最も重要なのはそれらを統合して考えたり創造したりする「前頭葉」の機能です。これが未発達では、仮に天才的な能力といえど何の役にも立たないわけです。加えて、前頭葉を健全に発達させるためには、その後15~20年というたいへん大切な期間があります。 私は、個人的には学習臨界期仮説に基づく早期教育にほとんど重要性はないと考えます。むしろ、子供にはきちんと成長するまで十分な環境を与え、周りがその無限の可能性をしっかりと見守ってあげることだと思います。