- ベストアンサー
バカオロカ(京極夏彦風)の仏語訳
名刺、形容詞ごちゃまぜですが、使い分け(?)を教えてください。一様にバカだ、間抜けだ、ではないと思うので。特に下三つ。上二つは=なのですか? 手持ちの辞書(オックスフォードではなく白水社ですが)ではそうなっています。こんな質問をするわたしはane? Idiot? imbeciel idiot bête ane niais またcochon、renardは、日本語と同じように使うのですか? 「豚野郎!」「こすか~(ずるーい)」
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
- ベストアンサー
おそらく、独学の方なのでしょうね。先日は「堪えた」とのことですが、せっかく楽しく学習しているところを、失礼しました。私は、いつも辛辣な環境にいて揉まれておりますので、あまりものの言い方について、配慮がないのです。 さて、ご質問ですが、ニュアンスが知りたいときは、辞書の語源の項目を見てください。白水社の辞書とありますが、ロワイヤル系でしょう。としたら、語源の項目が無いでしょうね。仏仏を使わないとわかりませんよ。私が前にオクスフォードと書いたので、オクスフォードと書いてらっしゃるのかと思いましたが、用意なさるなら、ロベール社のものがいいでしょう。古本屋に行けば、千円を切りますよ。というのも、毎年、改訂していますから。他には、ウェブ上にも権威ある辞書の一つ「フランス語宝典」が公開されています。 http://atilf.atilf.fr/tlf.htm かいつまんで、私の見解を書いておきましょう。しかし、敢えて差異が分かりやすくなるように、下手に訳語を探さずに、「~~な意味でのバカ」と、すべて「バカ」とまとめています。 Imbécile:意志薄弱という意味でのバカ。 Idiot:究極的にものを知らないという意味で、バカ。 (※)二つの語は医学的に障害がある者に対しても使われるが、imbécileの方が軽度である。 Bête:理性の無い獣に喩えて、バカ。 Âne:ロバが強情で要領が悪いというのに喩えて、バカ。 Niais :突き詰めて考えることが無いおめでたい人という意味で、バカ。 Fou:(病院に連れて行かなければならないような)狂っているという意味での、バカ。 ――というわけで、差異を見出すことはできそうですね。 しかし実際に使い分けがあるかと言われると、これは、私の知る限りでは、何とも言えません。Idiotは使ってはいけない類の差別用語なので、使う人はみたことがありません。せいぜいimbécileがいいところです。 日常会話では、「あ、やってしまった」と自分を批判する意味で、bêteという語を使います。が、その他は、ほとんど使う人を見たことがありません。「あいつは豚だ」など、日本でもそうそう言わないように、フランスでも言いませんよ。今となっては、古いフランス語か、文語でしょう。 そして、あらかじめ言っておくと、他人のことを、imbécileといっておいて、「意志が弱いという客観的な意味で言ったのだ。侮辱するつもりはありませんよ」などと言い訳しても、通用しないと思います。どれもそれくらい強い語で、結局、十把一絡げと言った方がいいでしょう。日本語でも、アホとバカの違いがあるなどという人がいますが、原則として違いが分かっていたにしても、実地で厳密に使い分けても、あまり意味が無いでしょう。 その代わり、naïfやinnocentが皮肉をこめて「この人は何も考えちゃいない」というニュアンスで使われます。またfaibleが「無能」とか「役に立たない」という意味です。他には、大人に対して、garçonとか、Mademoiselleという風ないい方で、「歳不相応な愚かしさ」という言い方をします。この程度のいい方なら、喧嘩になりませんから。 こうやって婉曲する理由は、「愚かさ」はフランスでは、日本より強い意味であり、ともかく避けるべきことであったからです。だから、フランスでは最近、滑稽さという意味でのbêtiseというテーマも成立するようになったと騒いでいるのです。日本だと、滑稽さなどは、古くから文学のテーマであって、取り立てて騒ぐことにも思えないのですが、それほどにフランスだと、bêteを嫌ったわけです。動物は愚かしさの象徴だったのです。動物にも理性があるはず、などという意見は、実に近年になって言われるようになった話です。現代の先端を行くフランス人の学者がbêteについて「良寛に学ぶことがある」などと言っているように、愚かさとか、動物に対する理解は、日本の方が深かったのかもしれません。動物愛護の観点からいっても、「あいつは豚だ、あいつはキツネだ」などという言い方は受け入れなくなっていると言えますね。
お礼
ジュ・ヴ・リメルシエ。そしてこちらこそ失礼いたしました。 >独学の方なのでしょうね。 ウィ・ムッシュウ 必要に迫られて(?)少しだけかじっています。系統的にベンキョーしてるわけじゃありませんよ。カタカナ表記しましたが、わたしの発音はこんなものということで…。そのうちもう一つ質問すると思います。どうぞお見捨てなきように。 汚い言葉について質問したのは、わたしの小説の登場人物――ノルマンディー公ロベールの配下――に使わせる言葉を調べていました。 >Idiotは使ってはいけない類の差別用語なので、使う人はみたことがありません。せいぜいimbécileがい いところです。 知りませんでした! >それほどにフランスだと、bêteを嫌ったわけです。動物は愚かしさの象徴だったのです。 目から鱗でした。 では、ロベール公子ファレーズお国入り道中の一こまを 「オズベルン、それくらいにしておけ」 「しかし、エドワード様の母君は殿下の叔母上ではありませんか」 「言うまでもないが、知っている。エマ叔母を救い出さんとするアルフレッドには支援を惜しまぬ。加えて、余はエドワードを嫌いではないぞ。モナステールに起居しておるは世の目を欺くため、ではなかろうか」 「あのうらなりのペール殿にそのような深慮遠謀がおありでしょうか」 「見てくれは色白でひ弱だが、それに欺かれてはならぬ。白髪で色の白きは生まれついてのものだそうな。血の気の多いアルフレッドを矢面に立て、自らは安全なモナステールに居る。なかなかのルナール(キツネ)だ、とは思わぬか?」 「今日はたくさんベトゥ(馬鹿者)が出てきましたな。コション、アーヌ、ルナール、おおっ、われらもシュヴァルにまたがるシュヴァリエ(騎士)なり!」 デュローがまぜかえし、また笑いが広がっていく。ロベールのみは笑わない。 「余もベトゥかもしれぬぞ。父から体(てい)よく追いやられたのだ。ルーアンでもル・アーブルでもない、エヴルーやリジウーでもない、片田舎に。余もベトゥだが、ベトゥの余について来るその方らもベトゥだ。これはベトゥの行列也!」 コションは動物の豚として使用(コションの餌にでも) アーヌは阿呆の意味で使用(王妃様を奪われて手をこまねいているのですぞ! アングレーは皆アーヌ(ロバ)(まぬけ)なのですか) 次回の質問の時にでも添削していただければ幸甚。ありがとうございました。