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空中窒素固定植物の伐採の影響とは?
- 岡山県の海辺某所において、ハリエンジュとオオバヤシャブシが主な構成種となっている雑木林が伐採される計画があります。
- ホテル事業を展開するためにホテルの裏にある雑木林を整備する必要があるため、選択的に伐採が行われます。
- しかし、ハリエンジュとオオバヤシャブシは空中窒素固定能を持つ植物であり、その伐採によって植生に影響が生じる可能性があります。
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単に伐採しただけであれば、またハリエンジュが出てくるでしょうね。根の再生力が強く、難防除植物として世界各地で問題になっています。それを防ぐためには、根っこを掘り出すか、切り株に薬剤を処理する必要があります。 それはともかく、窒素固定能を持つ植物は、緑化には、肥料をまく手間もいらず、ほっといても緑のボリュームを増やしてくれるものとして重宝がられていました。しかし、窒素固定能故に、その地の生態系基盤を破壊する植物として、現在は各地で伐採や防除が検討されているようです。 窒素成分が増えることは、植物にとっては確かにありがたいことではありますが、それによって得をするのは、肥料を食う代わりに成長の速い一部の種だけです。そのような種がもともとその地の植生にあれば、その種によって植生は復元するのですが、実際は外来種が得をする、つまり優占するという結果になることが多いです。そして、その地で本来辿るべき植生遷移が損なわれ、外来草本を伴うハリエンジュ林あるいはオオバヤシャブシ林となってしまいます。 岡山ではおそらくマツ→落葉樹→シイ・カシというのが正常な遷移の粗筋だと思います。それがいきなりハリエンジュ林で固定しちゃいます。ハリエンジュは根を広げ、そこから萌芽する性質が強いため、ますます他の木本植物が生えにくくなります。そして下草には外来種が蔓延るため、雑木林の林床に生えるようなランなど繊細な植物がその地で絶滅することになります。 伐採するということは、おそらくそのように危機に瀕している在来種があるからではないでしょうか。もちろん、景観的にも相当在来林とは相当異なったものにもなります。 ハリエンジュの「害」はもっといろいろあり、例えば、強烈な香りと甘い蜜(アカシアの蜂蜜は、ハリエンジュの蜜です)で昆虫を誘引するため、周辺のもっと地味な香りと蜜を持つ在来種の交雑が妨げられる、とか、蜜を求めてサルの集団が集まり、行動パターンを変化させる、などが報告されています。 ただ、逆にハリエンジュの旺盛な生育力でないと、表土の流出を止められないこともあります。それにより、大規模な土砂災害を予防するために有用です。 そのように、メリット、デメリットを検討した上で、デメリットが大きいということで伐採という結論になったのではないでしょうか。
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- voodoomoon
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オオバヤシャブシ、ハリエンジュともにフロンティア種です。 繁殖力の点では、先の回答の通り、ハリエンジュは根による栄養繁殖がメインで種子の発芽力はあまりないのに対し、ヤシャブシ類は風散布の種子をたくさん作る種子繁殖型です。 ハリエンジュの原産地は北アメリカ大陸で、これは日本ではちょっと想像つきませんが、ハリエンジュ林→ユリノキ林という遷移だそうです。 ではアカマツ、クロマツとハリエンジュを比べた場合どうかというと、マツ林のギャップにハリエンジュが侵入する、という報告はかなりあります。マツが成木になり種子を落とすより、ハリエンジュが根を伸ばす方が早い(定着後4~5年で栄養繁殖を始めます)ので、ハリエンジュの方が強いと言えるかも知れませんね。いったん侵入されると大変ということです。 このような横に根を張る能力を持つ種はかなり特異ですね。他に似たような種はありません。 あと、ユーカリについて書き忘れたので、ついでに。 ユーカリ類はものすごく吸水力が強い種です。乾燥地に強いというのもその能力があるからです。しかし、それがあだになり、降水量が少ない地方に植えると、そこの土壌水をすべて吸ってしまうため、他の植物が生えないそうです。ですから、ユーカリ林は「緑の砂漠」と呼ばれます。日本ではそれに該当するほど、降水量は少なくないですけど、乾燥地では砂漠化の防止のために一時大量に植えられましたが、そのような弊害があるため、今は伐られています。
お礼
非常に参考になりました。ありがとうございます。 外来種をむやみに植樹すると当然デメリットも発生するんですね。ところでオオバヤシャブシやハリエンジュってアカマツと同様に先駆植生となり得るくらい繁殖力が強いんでしょうか?