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屋号と言葉の結びつきに関して
夏目漱石『虞美人草』より~ …… 「そうする方が詩的でいい。何となく雅でいい」 「じゃ当分雅号として用いてやるかな」 「雅号は好いよ。世の中にはいろいろな雅号があるからな。立憲政体だの、万有神教だの、忠、信、孝、悌、だのってさまざまな奴があるから」 「なるほど、蕎麦屋に藪がたくさん出来て、牛肉屋がみんないろはになるのもその格だね」 …… ここの 「蕎麦屋に藪がたくさん出来て、牛肉屋がみんないろはになる」 についてですが、今でも藪のつく蕎麦屋やいろは牛肉という屋号の店は多いようです。この言葉の結びつきにはどういう謂われがあるのでしょうか? よろしくお願いします。 (屋号と言葉の結びつきで、これ以外にも何かあればあわせて教えていただければ嬉しく思います) --- 青空文庫『虞美人草』はこちら http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/761_14485.html
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全国には「やぶ」を名乗るそば屋がたくさんあります。その中で「藪御三家」と称される店があります。所在は三店とも東京です。 1:神田「やぶ」(東京都千代田区神田淡路町2) 2:並木藪蕎麦(東京都台東区雷門) 3:池之端藪蕎麦(東京都文京区湯島3) 神田やぶそばの起こりは「団子坂藪蕎麦」というお店を明治13年に堀田七兵衛が譲り受けたことから始まります。ですが、この名称も俗称で本当は「蔦屋」というのが正式な屋号です。団子坂(文京区千駄木二丁目と三丁目の境を東へ下る坂)のあたりは竹「やぶ」が多かったので、いつしか「やぶそば」となりました。 明治の頃の「やぶそば」はとても広い敷地を有し、1600坪もありました。 だから前庭には崖や滝が配置されていました。 ところが、「団子坂藪蕎麦」は明治39年に突然廃業します。このとき「藪蕎麦」の看板を受け継いだのが「神田やぶそば」です。 堀田七兵衛はもともと「砂場」系の店主(中砂というお店の主人)だったのですが大正12年の関東大震災の折りにはお店は消失したものの、同年中に(ということは9月1日の震災後、3ヶ月で)再建しました。 現存する建物もこのときのものです。 「並木藪蕎麦」は堀田七兵衛の三男・勝三が京橋にのれん分けをして始めたお店です。大正2年に浅草の現在地に移転しました。並木の由来は当時の地名が「浅草並木町」だったからです。今でも雷門から目と鼻の先にこの店はあります。由緒ある様子を感じさせるところは、下町っぽくてよいです。 「池之端藪蕎麦」は勝三の三男・鶴雄が昭和29年に開業したお店です。 つまり御三家店主の人間関係は、祖父=神田やぶそば、父=並木藪蕎麦、子=池之端藪蕎麦になります。 昭和の終り頃のテレビドラマで「火の用心」(シナリオ倉本聰)・トンネルズの石橋と木梨が異母兄弟の物語で、シナリオでは日本橋の蕎麦屋となっていますが、これは明らかに神田藪蕎麦を意識したもので"通し言葉"が使われています。 この店は倉本聰氏や、池波正太郎(鬼平犯科帳、作者)がこよなく通った店です。 設問はもう答えてしました。『団子坂(文京区千駄木二丁目と三丁目の境を東へ下る坂)のあたりは竹「やぶ」が多かったので、いつしか「やぶそば」となった』ということです。 次に「いろは牛肉店」ですが、木村壮八という人物が、関係したそれぞれの女性に一件づつ、つまり妾の数だけ支店をつくった、牛鍋屋「いろは大王」の彼に由来するものです。 木村は「いろは」牛肉店を東京各地にひらき「いろは大王」、つまり今で言う「何々チェーン王」だったのです。そしてその店を、自分と関係した女性に経営をあたらせた。そこで本文の『牛肉屋がみんないろはになるのも・・・』とは、彼の事業の拡大の勢いが凄いことを指し、その店の名がすべて「いろは」になるということです。 この壮八については、去年八月に発売された『悲願千人斬の女』(小沢信男/著 筑摩書房1,995円(税込))に詳しいです。 また「いろは」の意味は「母、生母」(「いろ」は接頭語〕)なので、それとの関係もあるとは思います。ちなみに「父」のことは「かぞ」(古くは「かそ」)と言います。
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- hakkoichiu
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広島県呉市仁方はやすり(File)の産地ですが 「壷xx」の屋号がやたらに多いです。
お礼
回答ありがとうございました。 やすりと壷ですか。 それも由緒あるのれんにあやかってかな。
お礼
回答ありがとうございました。 > あたりは竹「やぶ」が多かったので 一本松茶屋みたいなものですね。 それが広がったのは、繁盛にあやかりたかったということでしょうかね。 > 牛鍋屋「いろは大王」 こちらはチェーン店でしたか。 なにか語呂合わせや、縁起かつぎのような言葉の繋がりが ウラにあるのかと思ったのですが、そういうものではないようですね。 詳しい回答をありがとうございました。