新幹線が無事故なのは、「神話」なんてものではありません。(質問者様が「神話」をどういう意味で用いているかわかりませんが、当方は通常はごく一部不確定要素はあるが、その不確定要素にたまたま該当しなかったため偶然深刻な重大事故が起こらなかったという意味に介しています。)
最初から無事故を目標としてシステムが設計され、たとえその無事故目標に対して万一想定外の事象が生じて事故に至ったとしても最悪の事態には至らないようにするのが鉄道の信号(制御)システムであり、今までその通りになったからこそ重大事故が生じていないのです。これは偶然ではなく必然なのです。
事故回避に関して鉄道と鉄道以外の交通機関の最も大きな違いは、鉄道は線路の上しか進めない以上、危険回避は自車の停止しか方法がないという点です。鉄道以外では例えばハンドル操作でお互いに進行方向を急変化させ衝突を防ぐとか、飛行機の場合は高度を変化させて衝突を回避するなどの方法があります。
この違いが原因で、鉄道の信号システムは絶対安全な場合以外は最高速度での走行を認めないようにして、そもそも衝突や追突のリスク自体が生じないように管理しています。(鉄道以外の場合は信号や管制で異常な接近を防ぐものの完全に防ぐことは最初から期待しておらず、最終的には運転者の操作で回避することを想定に入れたシステムにしています。)
具体的に言うと線路上はいくつかの区間に分けられており、1つの区間には1つの列車しか存在を許されません。これを徹底させれば、追突や衝突は絶対に生じません。で、どのように徹底するかというと、ある区間に列車が存在すれば、その1つ手前の区間には赤信号を表示します。しかも、その赤信号を無視した場合、強制的にブレーキ操作を行い、その列車を停止させてしまいます。2つ以上手前に対しては具体的な指示はその路線(本数や最高速度等により変化する)により異なりますが、黄色信号灯で減速、速度規制、加速禁止などを指示します。これにより、何かの事情で走行しているはずの列車が急遽停車したとしても、その続行の列車は信号システムにより、赤信号・黄信号などにより停車・減速し、追突(単線なら正面衝突)が防がれます。ここで、赤信号と書きましたが、新幹線の場合はその位置関係に応じて出してもよい速度が表示され、制限速度を超えた場合、その速度まで強制的に減速させます。これにより、想定外に先行列車が突然停車しても、後続列車に追突のリスクはありません。
もちろん、これは線路上に列車以外の障害物がないことが前提で、新幹線の場合は踏切を一切もうけず、代表的な障害物である車等が線路上にないようにし、それ以外の障害物は線路内に障害物を置くことを犯罪にすることで、社会的に安全を担保します。自然災害等に関しては、一定以上の風速・降水量になれば、列車を止め、崖崩れ・線路異常などの運行障害が生じていないことを確認できるまで運行は再開されません。地震に関しては、一定以上の震度が計測された瞬間に自動的に運行が停止されます。(地震を検知させた瞬間に停電が生じるようになっており、各車は停電を検知するとその瞬間に自動的にブレーキ操作が行われる。この一連の操作に人の判断は介されず、安全が確認できるまで再開できない)
もちろん、これらのシステムを持ってしても想定外の事象は生じます。例えば阪神大震災の際には、地震検知と同時に想定通り停電が生じました。まだ始発前でしたので、運行中の列車はありませんでしたが、駅員や運転士等は、運転させようとしても運転できず、地震の影響を確認できたようです)阪神大震災の場合、地震の発生と同時に高架線路が崩れたので、走行中の列車の概ね2km以内前方の線路が崩れてしまえば、システムや運転士の急ブレーキでも間に合わず、落下した悲惨なことにはなってしまいます。これが避けられないのは事実ですが、その後の構造強化工事により、線路が崩れるリスクは阪神大震災当時よりは低くなりました。(その想定を越える地震であればもちろん崩れるリスクはありますが、そのような場合、町中の建物も全滅状態です。)
そのような事態が生じた場合に、その列車は悲運としか言い様がありませんが、その列車以外は、システムにより停車・減速しており、少なくともその崩壊場所から続々と落下することはありません。(阪神大震災やその他の災害でも道路崩壊が生じた場合、生じた瞬間に走行した車が落下するのはもちろんですが、それ以降の車も、特に停止命令がないので、異常に気づかなければ続々と落下します。実際、阪神大震災の現場ではそのような状況でした)
列車はすぐ止まれないからこそ、止まらないで済むように常に制御されているのです。3分間ごとに列車が運転されていると言うことは、200キロを超える最高速度で運行中に事情を問わず列車が急停車しても、その後続の列車は通常のシステムで何か特別なことをしなくても、減速・停車して追突を回避できるようになっていると言うことです。ちなみに、青信号すなわち最高速度を出してもよいという指示は、上記位置関係の条件の他、信号システムに異常が認められないなど、全ての条件に問題がないことを確認して初めて表示されますので、先行列車と充分離れてても、信号系統に何らかの異常があるとか、ポイントが設定通りに稼働していないとか、どこかで停電が生じているとかの異常があれば赤表示のままになります。(言い換えると、列車を動かしてはいけない条件時に誤って青が表示されることのないように何重もの安全策が施されている)
なお、車の場合運転士が急に死亡・失神した場合に前後の車も相当危険になりますが、新幹線の場合は上述のシステムで安全性に問題は生じません。(どこかの時点で指定速度を超えることになりシステムが減速する)実際、営業列車運転中に運転士が失神したケースがありましたが、予定の停車駅に停車して、乗客の安全性には影響しませんでした。(停車位置が大幅にずれたため確認して初めて運転士の気絶に気づいたようです)運転士しかいない列車の場合は、一定時間運転操作をしなかったら自動的に列車を停める装置もあります。
もちろん、想定外のことはあるかもしれませんが、鉄道は外国の在来線から数えると150年以上の歴史があり、見逃されたリスクというのはかなり少ないと考えられます。(実際鉄道事故の大半は信号無視を含む人為的なエラーであり、想定外の自然災害等を含む想定外のことが原因となった事故はほとんどありません)新幹線は新システムとはいえ、在来線の発想をさらに安全側に強化させたものであり、新幹線に限ればかなり安心できるものです。
想定外といえば東日本震災の原発が挙げられますが、これは元々数あるリスクの内の一部を最初から想定しない(安全対策を打たない)ために起こった、言い換えればある意味必然的なものです。直接の原因は想定外の津波が襲ったため(本当に想定外であったかどうかはここでは問いません)と言われますが、そもそも運転中の原発を安全に停止させるには、徐々に温度を冷やすために相当期間電力が必要なのに、その期間の電力を確保する方法すら準備されていなかったことの方が原因として大きいです。
お礼
お答えありがとうございます。 確かに想定内の事故はありえますね。 ただ私の心配とは少し違うかな? 私は多数の乗客の乗った超高速の列車を過密ダイヤで走らせる怖さ・・ちょうど車間距離を取らないで高速道路を走る状態の怖さなのです。