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1個の訴訟物を分けて裁判をしてもいいのか?
・・・1個の不法行為から生じた財産的損害の賠償(逸失利益や積極的利益)と非財産的損害の賠償(慰謝料)とでは、民事訴訟法上の訴訟物は1個としてとらえられ・・・・ との記述が民法710条(非財産的損害に対する賠償)にありました。 そこで交通事故の被害者は入院費や仕事休まなくちゃならなかった休業補償分と、精神的苦痛たる慰謝料は別々の訴訟を提起したらダメなんでしょうか? 訴訟物が1個である以上、必ず一緒に提起しなければならないのでしょうか?
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- law_amateur
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ちょっと混乱しているようですが・・・・ 訴訟物とは,当該訴訟で確定を求められている権利義務関係のことで,訴額ではありません。このような考えをすると,とんでもない間違いを起こすことになります。 次に,1個の不法行為による損害賠償請求権の訴訟物が1個であるというのは,確定した最高裁の判例であり,これに矛盾する議論をしても,裁判所の実務では通りません。 最高裁昭和48年4月5日判決・民集27巻3号419頁 このことから,上記判例は,例えば,治療費200万円と慰謝料100万円を請求した場合でも,治療費は100万円しか認められないが,慰謝料を200万円を認めても差し支えないとしています。 しかし,訴訟物が1個であると言い切ったことから,理屈上,1個の訴訟物については,1個の訴訟で請求しなければならず,逸失利益などを求める訴訟を提起したあと,慰謝料を求める訴訟を提起したとしても,後訴は,二重起訴として却下される,逸失利益を求める訴訟の判決が確定したあと,慰謝料を求める訴えを提起しても,既判力に抵触するとして,請求棄却の判決がされるというのが,論理的な帰結となります。 また,財産上の損害を求める訴訟に,慰謝料の請求を追加することは,訴訟物に影響しないので,訴えの変更でもなく,単なる攻撃防御方法の変更にすぎないとされます。 しかし,このような帰結は,時として不当な結果を生じかねません。例えば,交通事故で一旦症状固定とされながら,後に,後遺症が悪化したり,予想外の後遺症が出現する場合に,その悪化分や新たな行為性分を請求できないというのは,明らかに不当です。また,そうでなくても,不法行為損害賠償請求の時効は症状固定時から3年ですので,その時点では,十分確定できない損害もあり得ることになります。 他方,不法故意による損害賠償請求は,損害項目が多数に亘りますので,損害項目ごとの訴訟を許していたのでは,加害者の立場を不当に侵害することにもなります。 そこで,最高裁は,少なくとも,当該訴訟での請求が,金額的に,あるいは損害項目において一部請求であることを明示してされた請求については,その余の金額,あるいは損害項目については,改めて訴訟を起こすことができるとしています。 最高裁昭和37年8月10日判決・民集16巻8号1720頁 ただ,最高裁判例の読み方として,ならば,損害項目を明示して一部請求だと言えば,何でも認められるかというと,微妙なところがあります。例えば, 最高裁平成20年7月10日判決・判例時報2020号71頁 という判決がありますが,ここでは,不当な仮差押に対する損害賠償で,前訴では,仮差押の被保全債権の存否を争う訴訟のために要した弁護士費用を損害として請求して一部勝訴判決を得た後,仮差押により借り差し押さえ対象土地の売買代金の支払いが遅れたことによる遅延損害金請求の訴訟を提起したという事件で,最高裁の判決文は,一部請求が明示されていたかどうかという判断に加えて,弁護士費用の請求と,遅延損害金の請求を一度にできなかったことを正当とする理由についても触れていることからすると,一度に請求できる損害項目(例えば,症状固定後に請求する場合の,交通事故による治療費と,入通院慰謝料)を,わざわざ分断して別々に請求することは,許されないとされる可能性が,十分にあるだろうと思われます。 この最後の部分は単なる私見ですが,このようなことからすると,他の回答のように簡単に一部請求を認めてくれるとは考えることには,危険が伴うと思われます。
- tk-kubota
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>・・・命題そのものが間違っているということですか? 私達が実務上行っている「訴訟物」と言うのは、請求の趣旨に記載されている訴額で、これは、例え、車両の修理代であっても、その額が「100万円」ならば、訴額は100万円です。 慰謝料が100万円であれば、訴額は100万円です。 これを別々な訴状でしてもいいですし、合計200万円請求してもかまわないです。 しかし、ここでは「訴訟物」と言うことで「額」ではなく「物」で考えているようです。 従って、交通事故のような不法行為に基づいてする金銭的な請求ならば、修理代と慰謝料を分けて請求できます。 ですから「1個を分けて」することができます。 他の例で、例えば、建物の明渡を求めるとします。 この場合でも、所有権に基づいて明渡を求める場合と、賃借権に基づいて明渡を求める場合とあります。 これを、別々な訴状ではできないで。 何故ならば、訴訟物が1個だからです。
- buttonhole
- ベストアンサー率71% (1601/2230)
>訴訟物が1個である以上、必ず一緒に提起しなければならないのでしょうか? 例えば、前訴で、当該不法行為の全損害額200万円の内、「一部請求」として休業損害額である120万円を請求する旨を「明示」すれば、前訴の訴訟物は120万円の部分になりますので、80万円(慰謝料)の残額請求の訴え(後訴)は、重複起訴の禁止に抵触しないと解されます。
補足
buttonholeさんありがとう そうですよね。 分割して請求しても構わないわけだから、訴訟物が1個でも、訴状は複数と考えてもいいんですよね。 ありがとうございました。
- tk-kubota
- ベストアンサー率46% (2277/4892)
そんなことはないです。 交通事故ならば、その請求の趣旨は「・・・修理代〇〇万円支払え」と言うことと 「・・・慰謝料〇〇万円支払え」とあり、合計して支払いを求めてもいいし、別々な訴状としてもかまわないです。 別々だからといって裁判所は併合事件とはしないです。(当事者の上申で併合することは考えられますが) なお、710条は、上記の例で言うと、車の修理代を直接的な財産的損害で、それに伴う精神的慰謝料を非財産的損害と言うのです。
補足
tk-kubotaさんありがとう。 (1)一つの交通事故による共通の損害であっても、(1)車両の物損→修理代が掛かる。(2)怪我による治療費→入院費治療費が発生する。(3)休業による逸失利益→給料がもらえなくなる。といったものが710条の財産的利益に該当するわけですよね。そうするとこれらは別々の損害ですよね。 これに対して(4)慰謝料とは精神的損害まさしく非財産的損害ですから、上記(1)(2)(3)と同列の別個の存在と考えていいのですか? (2)現代訴訟実務では旧訴訟物理論によるから、上記(1)(2)(3)(4)ごとにそれぞれ別訴訟で提起できるし(もちろん一緒に訴訟提起しても構わない。)といった解釈でいいのですか? (3)そうすると私の命題・・・・・・1個の不法行為から生じた財産的損害の賠償(逸失利益や積極的利益)と非財産的損害の賠償(慰謝料)とでは、民事訴訟法上の訴訟物は1個としてとらえられ・・・・ というのは、命題そのものが間違っているということですか?
- jkpawapuro
- ベストアンサー率26% (817/3046)
分けて訴状を出しても裁判所の判断で統合されると思いますが。
補足
tk-kubotaさんありがとう (1)結局「訴訟物」とは、金額で換算できる場合を前提とするなら、分解した訴額ごとに訴状を提出できると考えていいのですか?つまり訴訟物が1個であっても、それが金額で分解できるなら、それぞれでの金額でつまり分解して訴状の提出ができるという事ですか。 (2)所有権に基づいて明渡を求める場合と、賃借権に基づいて明渡を求める場合では「明け渡せ」という給付が目的で、金銭給付が目的ではない以上、訴額も分解できず従って訴状も分けて出せないという理解でしょうか?