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van der Waals 力とは分子間相互作用すべて?

siegmundの回答

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回答No.3

rei00 さんの質問見るまで,van der Waals 力 = London 力, あるいは van der Waals - London 力と思っていました. 手元の固体物理のテキスト見ますと,やはりそういうことが書いてあります. 釈迦に説法かも知れませんが,通常 van der Waals 力と言われているのは, 非極性分子の電荷分布が球対称からずれることによる力です. 球対称からのずれは,多重極展開で双極子,4重極子,...,と展開でき ポテンシャルは,双極子-双極子で -C6/r^6,双極子-4重極子で -C8/r^8,... になります. 遠距離で主要なのは -C6/r^6 で, これのみを van der Waals 力ということもあるし, 全体を指すこともあるようです. いずれにしろ,量子力学的効果で,プランク定数に比例する大きさを持っています.. Lennard‐Jones ポテンシャルで引力部分を -1/r^6 の形に取ることが多いのは, こういうことから来ています. いずれにしろ,van der Waals 力はクーロン力の長距離性から来ますから, 波動関数の重なりとは直接関係がありません. 一方,原子が近づくと波動関数が重なり始め,Pauli 原理による斥力が働きます. Lennard‐Jones ポテンシャルで 1/r^{12} とよく書いている斥力部分がこれです. 12乗はかなり経験的に選ばれているようです. さて,van der Waals 力の議論をきちんとやったのは,London です. なぜ,これが van der Waals 力と呼ばれるかは,van der Waals 方程式 (1)  (p + a/v^2)(v - b) = RT と関係があります. これは,引力効果を a/v^2 の形で,斥力効果をbで, それぞれ平均場的に取り入れたものです. この引力効果を London の議論でうまく説明できるため,van der Waals 力と 呼ぶことになったようです(誰が言い出したんでしょうか?). van der Waals 自身はかなり経験的に(1)を導入したようです. (1)が提案されたのは1873年ですから,量子力学誕生の50年ほど前です. このころ(もうすこし後?), 他にも理想気体の状態方程式を修正する試みがかなりなされています. こういう事情を考えると,問題のテキストの主張はかなり説得力をもっています. つまり,非極性分子の電荷分布ゆらぎによる相互作用をちゃんと議論したのは London だから,これは London 力と呼ぶべきである,というわけでしょう. 一方,van der Waals 状態方程式(1)では,分子間力を経験的に取り込んだだけで, その起源についてはほとんど突っ込んでおらず, 引力と斥力があるくらいしか考えていない. ですから,(1)のaやbは分子間力なら何でもOKと見るべきではないか. 必ずしも,London の議論したものには限らない 例えば,イオン間のクーロン相互作用を含むし, Pauli 原理の斥力も含まれるべきだ. 推測ですが,問題のテキストは以上のような考えだと思います. 私見ですが,以上のようなことを考えると, 問題のテキストの主張は当を得ていると思います. ただし,van der Waals 力 = London 力, あるいは van der Waals - London 力, という用語法(あるいは概念)はかなり定着しましたから, 用語法がすぐに変えられるか(変わるか)はちょっと疑問です. 例えば,電荷の正負は今から考えるとどうも選び方が「ハズレ」だったようですが (電流の向きと電子流の向きが逆になってしまっています), 今さら直せそうもありません. また,正常 Zeeman 効果と異常 Zeeman 効果も, 後の視点から見るなら角運動量はJ=L+Sであるという異常 Zeeman 効果の方が むしろ当たり前で,正常 Zeeman 効果はS=0であるという特別の場合に過ぎません. いやあ,なかなか勉強になった話で,私も一つ利口になりました.

rei00
質問者

お礼

siegmund さん回答ありがとうございます。いつも siegmund さんの回答を拝見して,説明の仕方も含めて様々な勉強をさせていただいています。 >rei00 さんの質問見るまで,van der Waals 力 = London 力,あるいは van der Waals - London 力と思っていました. >いやあ,なかなか勉強になった話で,私も一つ利口になりました.  色々な質問に的確に回答されている siegmund さんにそう言っていただくと,質問者としてもホッとします。内心,「いつも回答されている様に,それぐらいは自分で調べましょう」的なご注意を受けるのではないかとも思っていました。 >手元の固体物理のテキスト見ますと,やはりそういうことが書いてあります.  そうですか。固体物理でも同じですか。実はこの質問も,最初は物理屋さんの意見が知りたくて(一応,専門の有機化学の方はある程度調べましたので),「物理」に出そうかと考えたぐらいです。 >なぜ,これが van der Waals 力と呼ばれるかは,van der Waals 方程式 (1)  (p + a/v^2)(v - b) = RT と関係があります.・・・中略・・・(1)のaやbは分子間力なら何でもOKと見るべきではないか.必ずしも,London の議論したものには限らない.例えば,イオン間のクーロン相互作用を含むし,Pauli 原理の斥力も含まれるべきだ.  どうもこの様ですね。私自身は「イオン間のクーロン相互作用」には若干違和感を持ちますが・・・。

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