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NMRで出てくる核四極子相互作用とは?
- 核四極子相互作用は、1以上の核スピン量子数を持つ原子核が電気四極子モーメントを持ち、電場勾配のある環境に置かれることで起こる現象です。核の向きによってエネルギーが変わり、エネルギーの分裂が起こります。
- 核スピン量子数とは、原子核が持つスピンの量子数であり、整数あるいは半整数の値をとります。例えば、水素原子核は1/2の核スピン量子数を持ちます。
- 電気四極子モーメントは、原子核の電荷の分布によって生じるモーメントであり、双極子モーメントが平行に2つ並んだ形状をしています。核スピン量子数が1以上の原子核は、電気四極子モーメントを持つとされています。
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> 1以上の核スピン量子数を持つ原子核とは例えばどういうものが挙げられるのでしょうか? 第3周期までの元素(H~Ar)の安定同位体を、核スピン量子数で分類すると以下のようになります。 核スピン 0:4He, 12C, 16O, 18O, 20Ne, 22Ne, 24Mg, 26Mg, 28Si, 30Si, 32S, 34S, 36S, 36Ar, 38Ar, 40Ar 核スピン 1/2:1H, 3He, 13C, 15N, 19F, 29Si, 31P 核スピン 1:2H, 6Li, 14N 核スピン 3/2:7Li, 9Be, 11B, 21Ne, 23Na, 33S, 35Cl, 37Cl 核スピン 5/2:17O, 25Mg, 27Al 核スピン 3:10B 38種の原子核のうち、核スピンを持たない原子核は16種類、1/2の核スピン量子数を持つ原子核は7種類、1/2より大きい核スピン量子数を持つ原子核は15種類あります。これから分かるように、1/2より大きい核スピン量子数を持つ原子核は、珍しいものではないです。 > 電気四極子モーメントとは双極子モーメントが平行に2つ並んだものであると思うのですが、1以上の核スピン量子数を持つ原子核は電気四極子モーメントを持つ、というのが直感的に理解出来ません。これはどうやって理解すれば良いのでしょうか? 電気四極子モーメントとは双極子モーメントが平行に2つ並んだものである、という考え方にこだわるならば、まず、原子核を正電荷が一様に分布した球であると考えます。そして、その球の直径に沿って、正電荷と負電荷が +--+ または -++- のように1列に並んでいると考えます。+--+の並び方は2Hや14Nなどの電気四極子モーメントが正の値の原子核に、-++-の並び方は17Oや35Clなどの電気四極子モーメントが負の値の原子核に、それぞれ対応します。私自身は、この考え方は少し分かりづらいと思うので、あまり好きじゃないです。 それよりも、原子核を、正電荷が一様に分布した回転楕円体である、と考えた方が理解しやすいと思います。回転楕円体には、偏長楕円体(レモンやキウイフルーツのような形)と扁平楕円体(ミカンや地球のような形)のふたつがありますけど、電気四極子モーメントが正の値の原子核(2Hや14Nなど)が偏長楕円体に、電気四極子モーメントが負の値の原子核(17Oや35Clなど)が扁平楕円体に、それぞれ対応します。直感的には、これらの回転楕円体の回転軸が原子核の自転軸になっている(回転楕円体の回転軸が核スピンの向きに一致している)と考えればいいです。 > 電気四極子モーメントを持つ核が電場勾配のある環境に置かれている場合、核の向きによってエネルギーが変わるため、エネルギーの分裂が起こる。 原子核を回転楕円体であると考えれば、原子核と化学結合との間の相対的な向きによってエネルギーが変わることが、簡単に説明できます。例えば、重クロロホルムCDCl3において、重水素核の回転楕円体の回転軸がCDCl3分子のC-D結合軸に平行な時と直角になっている時とでエネルギーが違うというのは、(どちらのほうがエネルギー的に安定になるのかは分かりませんが)直感的には明らかではないでしょうか。