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基底状態の鉄の量子数について
基底状態の鉄の、全軌道方位量子数、全方位量子数、全スピン方位量子数がわかりません。最初の二つはどのように違うのかわかりません。またスペクトル項の求め方もよくわかりません。電子がたくさんある場合なので、量子数に全がくっついていると思うのですが、個々の電子の量子数を全部たすという意味ですか?よくわからないのでお願いします。
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基底状態にある原子の、全軌道方位量子数(L)、全方位量子数(J)、全スピン方位量子数(S)は、電子配置の表とフントの規則を使って求めます。 (1) 教科書などに載っている電子配置の表から、原子の電子配置を知る。 カリウム原子から亜鉛原子までの電子配置は以下のとおりです。 K :[Ar] (3d)0 (4s)1 Ca:[Ar] (3d)0 (4s)2 Sc:[Ar] (3d)1 (4s)2 Ti:[Ar] (3d)2 (4s)2 V :[Ar] (3d)3 (4s)2 Cr:[Ar] (3d)5 (4s)1 Mn:[Ar] (3d)5 (4s)2 Fe:[Ar] (3d)6 (4s)2 Co:[Ar] (3d)7 (4s)2 Ni:[Ar] (3d)8 (4s)2 Cu:[Ar] (3d)10 (4s)1 Zn:[Ar] (3d)10 (4s)2 この表で、[Ar]はアルゴン原子の電子配置で Ar:(1s)2 (2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 です。 この表から鉄原子の基底状態の電子配置が Fe:(1s)2 (2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (3d)6 (4s)2 であることがわかります。 (2) 不完全に満たされた副殻に注目する。 (1s),(2s),(3s),(4s)にはそれぞれ、2個まで電子を入れることができます。 (2p),(3p),(4p)にはそれぞれ、6個まで電子を入れることができます。 (3d),(4d)にはそれぞれ、10個まで電子を入れることができます。 鉄原子の基底状態の電子配置では、10個まで電子が入る(3d)に6個しか電子が入っていませんので、(3d)が不完全に満たされた副殻になります。他の電子が入った副殻は、完全に満たされていますから、鉄原子の基底状態では、不完全に満たされた副殻は(3d)だけです(クロムの場合は、(3d)と(4s)の二つが不完全に満たされた副殻になります)。 (3) フントの規則に従って、不完全に満たされた副殻に電子を入れる。 フントの規則1:α軌道から電子を入れて、α軌道が満たされた後に、β軌道に電子を入れる。 フントの規則2:磁気量子数mzが大きい軌道から順に電子を入れる。 s殻の場合 mz,spin 1番目の電子: 0 α 2番目の電子: 0 β p殻の場合 mz,spin 1番目の電子:+1 α 2番目の電子: 0 α 3番目の電子:-1 α 4番目の電子:+1 β 5番目の電子: 0 β 6番目の電子:-1 β d殻の場合 mz,spin 1番目の電子:+2 α 2番目の電子:+1 α 3番目の電子: 0 α 4番目の電子:-1 α 5番目の電子:-2 α 6番目の電子:+2 β 7番目の電子:+1 β 8番目の電子: 0 β 9番目の電子:-1 β 10番目の電子:-2 β 鉄原子の基底状態の電子配置では、(3d)に6個電子が入りますので 鉄原子の場合 mz,spin 1番目の電子:+2 α 2番目の電子:+1 α 3番目の電子: 0 α 4番目の電子:-1 α 5番目の電子:-2 α 6番目の電子:+2 β のように電子が入っています。 (3) LとSを求める。 Lはmzの総和から求めます。 鉄原子の基底状態では、 L=(+2)+(+1)+(0)+(-1)+(-2)+(+2)=2 になります。 Sはszの総和から求めることができますが、sz=1/2(α軌道)または sz=-1/2(β軌道)の関係がありますから、 S=(α軌道に入った電子の数-β軌道に入った電子の数)÷2 の関係式から求めます。 鉄原子の基底状態では、 S=(5-1)÷2=2 になります。 (4) フントの規則を使ってJを求める。 フントの規則3:β軌道に電子が入っていないときは、J=|L-S|。β軌道に電子が入っているときは、J=L+S。 鉄原子の基底状態では、3dのβ軌道に電子が入っていますから、 J=2+2=4 になります。 (5) スペクトル項を求める。 スペクトル項は、一般に (2S+1) (Lを表す記号) J とかけます。Lを表す記号は L=0,1,2,3,4,5,...に対して S,P,D,F,G,H,...が対応します。 (2S+1)はLを表す記号の左上に、JはLを表す記号の右下に書きます。 鉄原子の基底状態のスペクトル項は 2S+1=2×2+1=5、 Lを表す記号はD、 J=4ですから 5D4 になります。 ---------- カリウム原子から亜鉛原子までの基底状態のスペクトル項は、以下の通りです(間違っているかも知れません。検算していただけると幸いです)。 K :2S1/2 Ca:1S0 Sc:2D3/2 Ti:3F2 V :4F3/2 Cr:7S3 Mn:6S5/2 Fe:5D4 Co:4F9/2 Ni:3F4 Cu:2S1/2 Zn:1S0
お礼
くわしくわかりやすいご説明ありがとうございます! フントの規則から計算していくのがよくわかりました。 化学の本を見ても求め方などよくわからなかったので、とても参考になりました!