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時効の概念を全否定?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060927-00000010-san-soci 今回の殺人、死体遺棄(隠匿)事件の民事判決は、これまでの時効の概念を全否定するような判決に見えるのですが、似たような判例はこれまでにあるのでしょうか?なんか有罪(民事なので表現が不適切なのはわかってます)ありきの判決に見えてしょうがありません。

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回答No.5

 こんにちは。 >今回の殺人、死体遺棄(隠匿)事件の民事判決は、これまでの時効の概念を全否定するような判決に見えるのですが、似たような判例はこれまでにあるのでしょうか?  民法724条の「除斥期間」の解釈の問題ですね。  「除斥期間」は、「法律関係を速やかに 確定させるため、一定期間の経過によって権利を消滅させる制度」である点は「消滅時効」と同じ性格を持ちますが、決定的に違う点は「時効の中断」(時効の完成を阻止し、期間計算を振り出しに戻す)のような制度がないということです。  「殺人」という「行為」に対する損害賠償の除斥期間は「不法行為のとき」から起算します。それは、本件では行為の性質から見て不動とすべきであり、当判決もこの枠に従っています。また、本件の場合は『不法行為は殺人の完了によって終了している』のですから、これを「事後に動かす」ことは、民法第724条の立法趣旨から言って法解釈論の範囲を超えていると思われます。  なので、この部分は質問者様のご指摘部分ではないと思いますので、ざっと流してしまいますね。  次に死体隠匿行為についてです。  おそらく、質問者様が「これまでの時効の概念を全否定する」と感じられたのは、この部分だと思います。  この判決が「クローズアップ」されたのは、通常の殺人・死体遺棄事件では「ここまで長期にわたった死体隠匿行為」がそれほど起こらず、加害者に対する「賠償請求」でも、両者を併せて請求する場合がほとんどであったからだと思います。  ところで、本件のような事例では、2つの考え方が成り立ちえます。  ひとつは、『死体隠匿行為を、刑法における「継続犯」と同様に解し、「死体発見時」をもって除斥期間の開始時と考える』方法、  もうひとつは、『死体の発見を、ひとつの「損害」と考える』方法です。  後者は「死体の発見は、殺人・死体遺棄のあったことを客観的に証明する、ひとつの事実にすぎない」という視点をもとに考えれば、それについて「損害の発生」という独自の地位を持たせることは難しそうです。  今回の判決は前者にたったものと考えますが、『不法行為法における死体遺棄行為の被害者には、「被害者の遺族」も含まれるのだ』、そして『遺族には、故人を追悼するという、独立した法律上の権利があるのだ』という論理構成をしたように見えます。私も、民法第711条(近親者に対する損害の賠償)の法意からして、『追悼権』は保護されてしかるべき利益だと思います。善良な習俗に従い遺族の請求を汲み取った論理構成をうちたてた部分において、本判決は非常に高く評価されるべきでしょう。  そうすると、「遺棄行為」を「被害者に対する不法行為」ないしは、「遺族による死体の発見・埋葬を著しく妨げる行為」と考えるならば、遺棄行為終了時をもって除斥期間の起算点と考えるのが妥当ということになりますが、『遺族の追悼権の侵害』を賠償請求の根拠とした本件では、『追悼』行為が時間的幅をもって行われるのは社会的にみて当然ですから、これらとは切り離された解釈をせざるを得ません。つまり、『追悼権』を認める以上、本件のような除斥期間の解釈の問題は当然起こりえるものであり、また当たり前の解釈をするかぎり、本判決のような方向に持っていかざるを得ない傾向にある性質のものなのです。  さらに、民法の解釈が刑法の「死体遺棄」に関する公訴時効の解釈(遺棄行為時から起算)とは異なっても、法秩序を破壊するような法的問題は生じないと思います。むしろ、「死体遺棄」罪の保護法益と「遺族の追悼権」は全く別次元のものですから、損害賠償権の除斥期間の判断は、刑法の解釈にとらわれない方法によることが望ましいと思います。  結論として、「今までの常識的な論理構成を超えた」論理構成を提訴の理由付けとして組み立てた弁護士が、とても優秀な方だったと賞賛せざるを得ません。私としても、本件の殺人・死体遺棄事件は本当に残念ことですが、とてもすばらしい弁護士にめぐり合えたことが、ご遺族にとって、せめてもの救いだと思います。また、凶悪犯の逃げ得を許さないような民事・刑事の法制度の確立を願ってやみません。  謹んで、故人様のご冥福と、ご遺族様のこれからのご多幸をお祈り申し上げたいと思います。  【おまけ】  ちなみに、除斥期間について注目すべき判断をしている最高裁判決を、2つ挙げたいと思います(ただし、この2つも「民法第724条」の解釈枠を超えるものでもないですし、むしろ社会的に見れば「常識論」の枠内ともいえる内容ですから、決して「消滅時効・除斥期間の制度を全否定する」ものではありません)。  平成16年4月27日の最高裁判所第三小法廷判決(いわゆる「三井鉱山じん肺事件」)は、じん肺が長期の潜伏期間を伴うため、「被害者が発症前にじん肺にかかっていることを知って賠償訴訟を提起すること」は、当時の社会的見地に照らして不可能といってもよい程度であったという実態があり、この場合にまで「行為のとき」を厳格に解するならば、結果として被害の公平な分担を目的とする不法行為制度(この場合は国家賠償法第1条第1項)の目的にそぐわないと考え、除斥期間の起算点を「健康被害発生時」としています。また平成18年6月16日の最高裁判所第二小法廷判決(いわゆる「予防接種禍事件」)も、これと同様の構成をしています。  その両判決の論理テクニックは非常に緻密で、「『損害』の発生時期は行為の終了時ではなく、『発症時』である(「発症」をもって法的に保護すべき「損害」が生じたと考える)」と読めるのです。つまり、「傷害致死事件において、被害者の死亡に関する損害賠償の請求権は、その傷害行為によって生じた被害者の死亡の時点から起算する。」という、当然に成り立ちえる理論構成と寸分違うところすらないのです。  最高裁HP: 「三井鉱山じん肺事件」http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25119&hanreiKbn=01 「予防接種禍事件」 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=33231&hanreiKbn=01  

yakyutuku
質問者

お礼

詳しいご回答ありがとうございました。

yakyutuku
質問者

補足

詳しいご回答ありがとうございます。つまり追悼権は遺族に対して長期間与えられるというわけですね。では追悼権は何年程度あるのでしょうか?今回の件を考えると請求時から20年前には追悼権がまだあるから、時効ではないという考え方ですよね?つまり追悼権が十年や二十年もあるということでしょうか?

その他の回答 (4)

  • h2goam
  • ベストアンサー率27% (213/786)
回答No.4

判決には殺人の不法行為時の基点は殺人が行われた時点であると明確に詠われていてこの部分の判断が今後覆ることはありません。又裁判で覆るべきでもありません。 (本件は例え法改正されても救済されませんが)本件の主張を認めるには法改正が必要です。 刑事上の罪の名前は死体遺棄ですが本件の不法行為は死体遺棄事実ではなく死体隠匿事実を不法行為としたのでこの不法行為は死体隠匿事実が発覚するまで不法行為が継続するので時効にかからないと言う判断です。 死体遺棄を不法行為とすれば殺害後間もない時期に遺棄したと思われるのでこの場合の不法行為時といえば死体を遺棄した時点となるのでこの場合も(本件の場合時効ではなく)排斥期間が過ぎているので棄却されるのは明々白々の事実です。 本件の弁護士は不法行為についての知識が高く請求可能な不法行為を見つけられた事が勝因ですね。

yakyutuku
質問者

お礼

ご回答ありがとうございます。

  • SUPER-NEO
  • ベストアンサー率38% (706/1857)
回答No.3

この判決ですが、 1、殺人の事実に基づく損害賠償 2、死体を隠し、遺族に供養をさせなかったことについての損害賠償 以上の2つがあります。 「1、」については28年前の時点から届出があり既に時効となって いる、という判断ですが、当時は「行方不明」として生きている可能性も あったわけで、殺害されていたのを知ったのは2年前のことです。 つまり、「2、」については、不法行為によってご遺族が受けた、 精神的な苦痛への慰謝料が認められる、ということです。 今後、高裁や最高裁といった場で裁判が行なわれることになりますが、 「1、」の部分は棄却されてしまうのではないか、と思います。 しかし、例えば毎月献花をするといったことが、判決に加えられる 可能性はあります。

yakyutuku
質問者

お礼

ご回答ありがとうございます。

  • oshiete-q
  • ベストアンサー率33% (813/2428)
回答No.2

私が報道から得た情報では、「時効の概念を全否定」とは思えませんが。 今回の判断は「殺人等は刑事上も民事上も時効が成立している」「遺体を隠し続けた行為はまだ時効ではない」という判断です。 これら2つの犯罪を区別して捉え判断するという手法については議論の余地があるのかもしれませんが、質問のように「時効の概念」といった点は問題になってないと認識しています。

yakyutuku
質問者

お礼

ご回答ありがとうございます。

  • nebura71
  • ベストアンサー率23% (177/743)
回答No.1

 損害賠償ではなく、慰謝料についての判決ではありませんでしたっけ?

yakyutuku
質問者

お礼

ご回答ありがとうございます。

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