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芸術/アートとは?

ereignisの回答

  • ereignis
  • ベストアンサー率57% (11/19)
回答No.4

美術関係の仕事をしている者です。 芸術にまつわる社会通念に「芸術は純粋でなければならない」というものがあります。ここから、芸術家は世間に迎合してはならないだとか、金のために作品を作ってはならないだとか、金儲けの巧い芸術家は本当の芸術家ではないといった理想の芸術像が生まれてきます。 こうして「純粋」であることを負わされた芸術の同伴者として、例えば石川啄木・ゴッホやといった「清貧」の芸術家やアウトローの芸術家がその典型的な作家として印象付けられています。 しかしながら、芸術が人間の本質や世界の真実をその卓抜な技巧・技術によって作品化することであり、作品という物理的な存在によってはじめて同時代の他者や後世の人々にも享受(鑑賞)できるようになるものならば、芸術家はその生きている世間から離脱することは本質から外れることになるでしょうし、作られた作品も物理的に存在する以上、商品としての価値を生むことは避けられません。また避ける意味もありません。 芸術の世界という何か空間的なイメージで捉えられる神の国のようなものがあるわけではありません。芸術とはいつの時代でも生きている人間が制作した作品とそれを取り巻く作家と鑑賞者の間に起こる出来事ですから、その作品が素晴らしいと認められれば、それを欲しがる人はお金を支払って自分のものにしたいと思うのは当然ですし、それによって芸術家の生活は支えられています。逆にいえば、どんなに素晴らしいものでも見てくれる人がいなければ何の意味もありませんし、評価されなければそれで終わりです。仮に作品を売ることを拒否して清貧を貫いた芸術家がいたとしても、それだけで(つまり金にまみれていないだけで)それが良い作品ということにはなりません。もしも芸術家が作品を売らずに生活の糧を得ようとすると、美大や音大などの先生をして給与を得るか、コンクールなどで賞を取って賞金を得ることくらいしかありません。しかし芸術家であることと何かを教えることとは別のことですし、ましてや芸術家は賞金稼ぎではありません。 ついでにいっておくと、絵画の場合、画廊などで売っている絵よりも美術館に収められている絵のほうが公共的で金に汚れていないと思われていますが、実際には美術館の作品は寄贈品以外はすべて画廊や作家から作品購入したものです。その額は個人購入の比ではありません。 そもそも「金儲け=汚れている」という社会通念は間違っていると思いますし、芸術家が社会から乖離せずにいられるためには経済的に自立していなければならないでしょう。時代によっては国家やパトロンが芸術家の生活の面倒を見ていたこともありましたが、それは逆に作家としての不自由を意味します。また金絡みであることではコマーシャル・アートと全く意味は変りません。 coffee_and_kissさんはきっと、現実の世界は金銭欲にまみれた汚い世界で、芸術とは穢れのない理想の世界だと思っているのでしょう。しかし、そのどちらも間違っています。現実の「金銭絡み」はそれ自体悪いことではありません。また芸術は現実に根ざしているものです。芸術が金銭絡みであることは、汚くもなければ悪いことでもなく、また芸術性を貶めることでもありません。そもそもコマーシャル・アートとアートの区別というものも存在しませんし、百歩譲ってこの言葉を使えば、すべてのアートはコマーシャルアートだといっても間違いではないでしょう。 芸術家の中にもcoffee_and_kissさんと同じような考え方の人はたくさんいます。しかしその多くはいわゆる「売れっ子」になれなかった自分を正当化するための方便で言う場合がほとんどです。もちろん、レコードにしろ絵画にしろ、商品価値が芸術的価値であるわけではありません。しかし、全く関係ないわけではありませんし、無理にそれを分けるまでもないでしょう。 参考のために、文章を参考URLにあげておきます。小説家であり評論家でもある笠井潔のエッセイ的な評論『独立生産者としての作家』です。小説家という立場から、芸術と経済の関係を論じています。小説家が集まって作ったe-novels(http://www.e-novels.net/)というページの中の無料ダウンロード作品です。ページの下の方にあるダウンロードボタンを押すと、PDFファイルをダウンロードできます。 一読の価値はあると思います。

参考URL:
http://www.e-novels.net/novel/sakuhin.php3?bookid=k0010000
coffee_and_kiss
質問者

お礼

せっかく書き込んでいただいたのにお礼が遅くなりしつれいしました。 考えがまとまったら補足させていただきたいと思っております。 取り急ぎ…

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