断面積が等しい四角断面の梁の断面係数と最大応力の問題
- 梁の断面係数と最大応力についての技能検定問題について、一部誤解があるようです。
- 四角断面の面積が一定の場合、応力は断面係数に逆比例し、四角断面の面積が一定であれば必ず2倍になるわけではありません。
- 特殊な例を考察し、全体についての検証が怠られた解説の例である可能性があります。
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断面積が等しい四角断面の梁の断面係数と最大応力の問題 機械工作技能系の雑誌「ツールエンジニア」(大河出版)には技能検定の学科問題に似せた「実力検定テスト」が連載され、出題の翌々月号にはその答と解説が載るのでなかなか勉強になるのですが、本年8月号の断面係数と応力についての答えと解説は誤っているように思われますので、皆様のお考えをお聞かせいただければ幸いです。 「ツールエンジニア」2006年6月号の課題(5) 断面係数は,四角の断面ではz=1/6*b*h*hで表わされる.断面積の等しい正方形と長方形では,梁に加わるモーメントが等しいとき、梁に加わる最大応力は、正方形が長方形の2倍になる. (長方形の幅を b 高さを h とし、掛け算の「掛ける」記号をxと混同しないよう * で表しました) 技能検定方式ですからこの課題文が正しいか誤りか、マルバツ式で答えるわけです。これに対して 「ツールエンジニア」2006年8月号 答え マル (課題文は正しい) 「解説」 「荷重条件が等しい場合,応力は断面係数zに逆比例します.図1 A(幅 b と高さ h が等しい正方形断面)、B (幅 b/2 高さ 2h = 2bの長方形断面)の断面係数を比較すると, Aの場合:Za=1/6*b*h*h=1/6*b*b*b Bの場合;Zb=1/6*b/2*2b*2b=1/3*b*b*b となります.したがって、Aの場合は、梁に加わる最大応力はBの2倍になり、強度は1/2になります.」(図は省略) B坊の考えでは、最初の課題での条件は「断面積の等しい正方形と長方形」ですから、幅 b 高さ h の四角断面の面積を S とするならば、S は定数ということになります。したがって四角断面の断面係数 z=1/6*b*h*h=1/6*S*hということになります。この式において変数は h だけですから、四角断面の面積 S が一定では、断面係数 z は高さ h にのみ比例することになります。 したがって、荷重条件が等しい場合,応力は断面係数 z に逆比例しますから、四角断面の面積 S が一定では、たとえば正方形の高さが長方形の1/4ならば、正方形の断面係数は長方形の1/4となり、応力は4倍となります。同様に正方形の高さが長方形の高さの2倍ならば、正方形の断面係数は長方形の2倍となり、応力は1/2となる、というわけで、必ず2倍になるわけではありません。 ゆえに、6月号の課題(5)に対する正しい解答は「バツ」で、これを「マル」とした8月号の「解説」は、偶然か故意か、たまたま正方形の高さが面積の等しい長方形の1/2である場合を例にして、断面係数の計算をしたため、正方形の断面係数が長方形の1/2になり、その結果断面係数に逆比例する応力では、正方形が長方形の2倍になったに過ぎずません。 特殊で不適切な例のみを考察し、全体についての検証を怠った、悪い証明の例のように思われますが、その後、同誌には訂正記事など見当たりません。 皆様はいかが思われますでしょうか。 UPして2週間経ちましたので締め切ることといたします。 回答をお寄せいただいた皆様を始め、御覧いただいた皆様に御礼申し上げます。
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小生も『×』と回答するでしょうね。 B坊さんが仰るように、この回答を○にするには、任意のいかなる場合でも成立することが必要なはずだと思います。 で、小生なりに考えてみました。幅b,高さhの長方形があるとし、高さ方向にモーメントMが付与された時の最大曲げ応力σ1は、 σ1=6M/(b・h^2) ・・・・・(1) また、面積S=bhであるから、これと同じ面積を持った正方形の一辺の長さaは、a=√(bh)となります。これより、(1)と同様にこの正方形の最大曲げ応力σ2を求めると、 σ2=6M/{bh√(bh)}・・・・・(2) (1),(2)から、 σ2/σ1=√(h/b) ・・・・・(3) よって、問題の条件σ2/σ1=2となるのは、(3)より、h=4bという特定の条件下でのみ成立することとなります。これは、問題の回答での寸法関係と一致しますよね。 出題するなら、『正方形が長方形の2倍になる』ではなく、『正方形が長方形の2倍になる場合がある』とするべきでしょう。小生ならそうします。
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そもそも「長方形」という曖昧な表現だけで問題を作成する時点で 担当者の力の無さを露呈してますね。 他の書籍や公式集ですら誤字誤認が結構ありますよね・・・ 「出版社の実力検定テスト」なんですよ、きっと。
お礼
T.S. 様 早速のお教えありがとうございます。 「長方形」は「正方形」、「台形」、「平行四辺形」などと同じく、幾何学の用語で、「4箇所の内角がすべて直角である四角形」という定義がありますので、その意味で用いる限りでは曖昧ではない、と承知しております。 この雑誌の課題でも、辺の長さや縦横の比率に無関係な長方形一般について、それと面積の等しい正方形と比較する、ということ、すなわち、縦横比が2:1の長方形だけの話ではなく、いかなる長方形についても、ということだと理解しております。 さて、論語にも「過ちては則ち改むるに憚ることなかれ 」とあるように、自分の間違いを認めてそれをただちになおすというのは、孔夫子の言われるとおり、なかなか難しいことです。 過ちは人の常なので、出版物に誤植や間違いなどがあるのはいたし方ありませんが、版元にそれを指摘すれば、礼状の一通くらいは送ってくるし、雑誌ならば次の号にでも訂正記事を載せるでしょう。 ところが、この出版社は何を言ってもまるっきりの「梨の礫」なんですよ。そういうことだと、よほど自信があっても、ひょっとしたら自分のほうが間違っているんじゃないか? と不安になってしまいます。 カストリ雑誌やエロ漫画ならともかく、こういう雑誌を公刊しているからには、それなりの責任というものがあって、たとえば、間違った記事に訂正を出さずにいて、読者がそれをそのまま覚えこみ、技能検定の学科試験で落ちたら、大げさに言えば責任問題になりますよね。 材料力学の話など、仕事仲間には話せる相手もなかなか居らず、学校とも縁が切れては教えを乞う方も無く、自分の判断を確かめたくてこちらに書き込ませていただいたようなものなので、また、お暇な折にでもお話をうかがえれば幸いです。
>したがって四角断面の断面係数 z=1/6*b*h*h=1/6*S*hということになります。この式において変数は h だけですから、四角断面の面積 S が一定では、断面係数 z は高さ h にのみ比例することになります Sとhが独立ではないからです. Sが定数でhだけを変数とすることは出来ませんよね. そこをよく考えて見られるといいと思います. おっしゃる通りです. スイマセン.... たしかに「長方形」っていう表現で2倍なんて分かるわけないですよね. 深く考えずにいい加減な返答をしてスイマセンでした.
お礼
BONCHIKI様 早速のお教えありがとうございます。 代数式だけでなく実際の数値を入れてみましょう。おもしろい結果が出るのです。 たとえば b=9、h=1の長方形Aと面積の等しいb=h=3の正方形Bでは、正方形の高さは長方形の3倍ですね。 そこで、断面係数 z=1/6*b*h*h を計算してみましょう。 zA=1/6*9*1*1=1/6*9=1.5 zB=1/6*3*3*3=1/6*9*3=4.5 あきらかに、正方形Bの断面係数は長方形Aの断面係数の3倍で、高さの比率に比例しています。 では、b=0.25、h=4の長方形Cと面積の等しいb=h=1の正方形Dとでは、どうでしょう。この場合、正方形の高さは長方形の1/4です。 zC=1/6*0.25*4*4=1/6*4=4/6 zD=1/6*1*1*1=1/6 この例では、正方形Dの断面係数は長方形Cの断面係数の1/4で、やはり、高さの比率に比例しています。 荷重条件が等しい場合,応力は断面係数 z に逆比例しますから、正方形Bに加わる最大応力は長方形Aの1/3になり、正方形Dの断面係数は長方形Cの断面係数の1/4ですから、課題の記述のように「正方形が長方形の2倍」ではないことは明白です。 「正しい」か「誤り」か、の話ですから、この課題(5)を「正しい」とするには、すべての場合で正しいことを証明しなければなりませんが、「誤り」とするならば、ただひとつだけでも課題(5)が成立しない場合を見つければよいわけで、数学の証明ではアラさがしのほうが簡単、といわれるゆえんなのは、御存知の通り。 また、お暇な折にでもお考えをお聞かせいただければ幸いです。 恐縮です。 ネット上の表記には制限があって、n乗の指数がうまく表せなかったので、カン違いさせてしまったのか? インテグラルや根号なんかが入っている式はどう記したらいいんだろう? 特殊記号は機種依存文字かもしれないし・・・ などと、次から次へと見当違いの心配ばかり。 何しろ、大手ではなくとも老舗の専門書の出版社の出版物にイチャモンをつけようってェんですから、なかなか覚悟がいります。 それにしても、この版元、これまで何度か間違いを指摘しても見事なまでに無視してくれて、浅学・未熟のB坊としては、もしやこちらが間違いか? と不安になっているところですので、また、お暇な折にでもお話をお聞かせいただければ幸いです。
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