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妊婦を殺害した場合、堕胎罪はどうなるの?

刑法を勉強しております。 妊婦を殺害して堕胎が死亡した場合、 妊婦に対する殺人罪のほか、堕胎罪も対象となると思いますが、 殺人罪と堕胎罪は観念的競合となるのでしょうか? それとも、法条競合で殺人罪に吸収されるのでしょうか? ご教授ください。

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回答No.1

通常は、堕胎罪は問題にしなくて良いと思います。 なぜなら、堕胎罪の故意または実行行為性を欠くと考えるべきだからです。 堕胎罪における実行行為である「堕胎」とは「胎児を母体内で殺すこと」「自然の分娩期に先立って胎児を母体外に排出させる行為」を言います(なお、「胎児の生命の侵害を意図して胎児に侵害を加える」という場合も含むと考える説もあります)。しかし、妊婦を殺害する場合に「堕胎となる手段により殺害する」とは限らないでしょう。この場合、妊婦の殺害は堕胎の実行行為性を欠き、堕胎罪は問題にならないとすべきです(確かに妊婦を殺すこと自体が、胎児の生命に危険を及ぼす行為であるということは言えますが、それだけで母体に対する殺害行為一般を堕胎罪の実行行為に含めるのは疑問があります。もっとも、そういう説があってもまったく驚きませんが)。 また、仮に「殺害行為が堕胎結果をもたらすもので実際にその結果堕胎の結果を惹き起こした」としても、行為者が堕胎の結果を惹き起こすことを意図していたのでない限りは故意を欠きますからやはり堕胎罪は成立しません。 逆に言えば、もし仮に堕胎行為によって同時に妊婦を殺害することを意図し、その行為が両方の結果を生じる現実的危険があると言えるものならば、両罪が成立しうることになります(例えば、胎児と母親の両方を殺すつもりで妊婦のおなかの胎児を狙って包丁で刺したなどという場合)。この場合、殺人罪の保護法益と堕胎罪の保護法益は異なる(前者は人の生命、後者はいろいろありますが一義的な保護法益は胎児の生命です)のですから、母体に対する殺人罪と胎児に対する堕胎罪が成立し、一つの行為で二つの犯罪を実現したのですから観念的競合になると考えるのが素直でしょう。余り議論しているのは見たことがありませんが。なお、母体に対する殺意がなければ堕胎致死罪(類型は3種類あります)の問題になりますが、この場合は、堕胎致死罪一罪です(ただし手段によっては母体について傷害致死罪などが成立する余地はあります)。 基本的には「侵害法益が一つか二つ以上でも一方が他方を包摂する、もしくは行為が他の法益侵害を伴うのが通常というような場合は単純一罪、そうでなければ本来数罪」と考えておけば良いと思います(なお、大前提として複数の構成要件に該当することが必要です。そもそも複数の構成要件に該当しなければ罪数は問題するまでもありません)。 母体に対する殺人罪と胎児に対する堕胎罪は侵害法益は二つですし、一方が他方を含んでいるわけでもありませんし、一方の行為が他方の法益侵害を伴うのが通常とも限りませんから本来数罪と考えるべきでしょう。

vitanC
質問者

お礼

大変ご丁寧な回答を有難うございます。 ここまで検討を加えて頂くと恐縮するばかりです。 刑法も考えれば考えるほど奥が深いといいますが底があるのかと思ってしまうところです・・・。 助かりました。 機会があれば、また宜しくお願い致します。

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