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(刑法)抽象的事実と法定符号説

抽象的符号説の錯誤について、故意が阻却されるかという論点で、法定的符号説に立つと、「構成要件を異にする抽象的事実の錯誤は、原則として故意が阻却される。ただし、認識事実と実現事実の構成要件が同質的で重なり合う場合は、その重なり合う限度で規範の問題に直面しているので、例外的に故意は阻却されないと解するべきである」という結論が導かれるのはわかります。例えば、業務上横領罪の故意があるが、実際は横領の構成要件にしか該当しない場合、「横領」という部分の故意は認定され、横領罪の故意犯が成立するというのはわかります。 しかし、例えば、傷害のつもりが殺人となった場合、上の理屈に立つならば、殺人の故意は否定され、構成要件の重なり合う部分である「傷害」については傷害罪の故意犯が成立するのではないですか。それなのになぜ傷害致死罪などが成立する余地というか、そこまで故意を認めてよいのですか。つまり、傷害以上殺人未満の故意が認定されるということですよね?それは厳格に上の法定符号説に立つならば故意を認めすぎていることになるのではないですか?? まだ刑法は総論なので、殺人と傷害致死の区別をよくわかってないので、上記の質問が的外れなものであったならば、ご容赦ください。

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  • kepoku853
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回答No.2

うん,おっしゃるとおり刑法各論をやれば分かるんだけどね。 傷害致死という構成要件は,「結果的加重犯」と呼ばれ,これは, 「軽い罪の故意しかなかったのに重い結果を発生させた」場合の構成要件です。 つまり,「傷害の故意しかない」のに「死亡まで発生させた」という場合に成立する犯罪が,傷害致死罪なのです。 だから,傷害罪の故意と区別される「傷害致死罪の故意」というものはないのです。 「死に対する表象・認容」があれば,それは殺人罪になってしまいますからね。 傷害致死罪の認定は,傷害罪を認定した後,傷害行為と死亡結果との間に相当因果関係があるかを判断し, 相当因果関係があれば傷害致死罪を成立させるというステップを踏みます。 (学説によっては,相当因果関係では足りないとするものもありますがとりあえずそれは各論の話です) ですので,掲示の例も,重なり合いで傷害罪を認定し,傷害行為と死亡結果との間の相当因果関係を判断し, 相当因果関係を認めて傷害致死罪を成立させればよいです。

majestic7
質問者

お礼

なるほど、傷害致死罪の故意なんてものは存在せず、傷害行為と死亡結果との間に相当因果関係にあったなら傷害致死罪が成立すると考えればいいんですね。 少し疑問なのですが、『「死に対する表象・認容」があれば,それは殺人罪になってしまいます』というのは、「死んでしまえ」とか「死んでもかまわない」といった心的態度ですよね?では、殺人罪にならないためには「死なれたら困る」という心情は必要なのでしょうか? あっ、というか傷害罪というもの自体が,「傷害の故意しかない」=「死なれたら困る」という犯罪だからそこで傷害罪の故意と殺人罪の故意が区別されるのか…

その他の回答 (1)

  • 17891917
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回答No.1

意図していたのとは別の構成要件結果が発生してしまう抽象的事実の錯誤において,発生した結果のほうが重かった場合には,刑法38条2項の問題となります。この場合も,原則として故意は認められませんが,構成要件が同質的で重なり合う場合,その範囲内で故意が認められます。  甲の犬に向けて石を投げたら,散歩のために犬を連れていた甲にあたり怪我をさせた場合,動物傷害罪(261条)の故意で傷害罪の結果を発生させたことになりますが,2罪は構成要件間の同質性・重なり合いが認められないので,甲に対する過失傷害罪(209条)のみが認められます。  乙が死んでいると思って棄したが実は死んでいなかった場合,死体遺棄罪(190条)の罪で遺棄罪(217・218条)の結果を発生させたことになりますが,この場合も,重なり合いはないので,死体遺棄罪の故意は認められないでしょう。  甲に対し暴行罪(208条)または傷害罪(204条)にとどめるつもりで暴行したが,甲が不幸にも死亡したとき,判例は,甲に対する傷害致死罪を認めます。傷害致死罪を結果的加重犯といい,致死の結果(加重結果)は,故意によるものではありません。  判例は,結果的加重犯について,その基本的行為(ここでは暴行)自体がその性質上加重結果を発生させる高度の危険性を有しているのだから,基本的行為を行った者は,結果の発生について予見の上,結果についての責任を甘受すべきとして,加重結果発生についての過失の有無を検討せずに傷害致死罪(205条)を成立させています。  なお,殺人罪(199条)と傷害致死は故意が全く違います。殺人罪が人を殺す故意によるのに対し,傷害致死罪は,傷害の故意で暴行を加え,意図に反して死亡させた場合をいいます。