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展示会で使用する人形の著作権は必要なのでしょうか?
知人の依頼での質問です。 彼女は、趣味で人形の洋服を作っています。 自分なりに納得できる作品がいくつか出来たので、 作品展を開催したいと考えました。 使用する人形は、あるメーカーのものが主体なので、 一応了解を取ろうと、その会社に問い合わせました。 すると、(1)商標表記をすること、(2)販売物ではないことを 明記するよう指示されました。 さらに、他社製のものを使用しないことを確約するよう 求められたそうです。 計画では、すべてそのメーカーの人形だけではなく、 他社製のものも使用する予定です。 彼女の企画していることは、あくまで人形洋服の作品展であり、 そのメーカーの人形の展示会ではありません。 たまたま、そのメーカーのものが多いという理由だけで、 他社製のものを使ってはならないという制約を受けなければ ならない理由が分かりません。 そもそも、このような展示会に、著作権許諾が必要な ことでしょうか? 法律的な根拠を知りたいと思います。
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事実関係(その「着せ替え人形」なるものが、どういう経緯で製造・販売されているのか、など)が不明確なので、断言はできませんが... 1. 基本的に、「単なる着せ替え人形」は、実用品ないし実用芸術の範疇に属すると考えられますから、著作物ではありません。 これに対して、純粋美術と同視できる程度の人形であれば、著作物といい得ます(ケース(A)。判例では、博多人形がそうであるとされています。この点からすると、洋人形だとビスクドールのようなものでなければ、著作物とはいえないものと考えられます〔人形には興味がないので、もっと適当なたとえがあるかも知れませんが...〕)。 また、もともと純粋美術として作成された作品を元に大量生産の型を起こした場合は、その大量生産の人形も著作物の複製物となります(ケース(B)。キューピー人形の事件でこの問題が扱われました。キューピー人形は、ローズ・オニールが「戯れに作成した人形〔=量産目的ではない=著作物〕」を見た玩具メーカーからのオファーに答えて量産化したものとされています)。 したがって、まず最初に、問題の「着せ替え人形」が、(1)著作物といえるだけの美術性・芸術性をもっているか、または(2)著作物の複製物であるか、について検討する必要があります。この点を確定しないと、著作権法上の問題があるとも、ないとも、いえません。 2. 次に、その「着せ替え人形」が著作物であるとして、もともと「着せ替え人形」として売られているという点からすると、同一性保持権ないし翻案権の主張は、かなり制約され、メーカーないしデザイナーの人格攻撃にいたるようなものでない限り、問題ないと考えた方が良いでしょう。 したがって、もともと「自作の服を着せて展示することは認めない」という根拠を欠きます。 なお、展示権(著作権法25条)は、「・・・美術の著作物・・・を・・・原作品により公に展示する権利」なので、複製物やレプリカ(ケース(B)の場合)に関しては、当たりません(ケース(A)の場合は、1個1個の人形が「原作品」に当たると解されます)。 3. 逆に、著作物ではない場合については、根拠なしといって良いかと思います。 なお、意匠権に関しては、意匠権とは「・・・業として・・・意匠の実施をする権利」ですから(意匠法23条)、およそ個人の単発的な展示がこれに当たるとは考えられません。 4. もっとも、私法の一般原理として、ある行為によって他人に損害を与えた者は、損害賠償責任を負います(民法709条)。ただ、単に展示するだけで何らかの損害が生じるというのは、ふつう、考えられません。 したがって、けっきょくのところ、問題となりそうなのはケース(A)の場合だけで、それ以外の場合はメーカー側の主張には理由がないといえそうです。 なお、 >> 作品展そのものは、イメージを壊すどころか むしろそのメーカーの人形の宣伝にもなるものと 思いますが、個人の勝手な思いこみでしょうか。 // この点については、仮にメーカー側の主張に法律上の根拠があるとすれば、その処分はメーカー側の一存なので、「こちらがどう思うか」は関係ありません(あなたが「あんなボロっちい車なんかさっさと廃車にして、新しいのを買えよ」といわれる筋合いがないのと同じです。あなたが嫌がっても無理やり廃車にする根拠があるか、というところが問題なのです)。 問題は、「宣伝になるから良いじゃんか」ではなくて、「メーカーの主張に法的根拠があるか」なのです。 また、「法的根拠を裁判所で主張するだけ」は自由です(日本の民事裁判とはそういうものです)。上に書いたことは、裁判をもし起こされてもこう判断されるんじゃないか、という結論部分なので、この回答は、裁判を起こされないことを保障するものではありません。
その他の回答 (1)
著作権の中の「同一性保持権」「展示権」が当たるかと思われます。 「同一性保持権」とは著作物を公表する場合に、著作者の意に反して改変されない権利のことです。 もともとの洋服とセットにされて販売されていたわけですから、それを改変するには許諾が必要です。 「展示権」とは著作物を公に展示する権利 のことです。 これも許諾が必要です。 どちらの許諾に関しても条件を出された場合はそれに従わなければなりません。 それが排他的な条件であってもです。 これを受け入れたくなければ”そのメーカーの人形は使わない”、という選択しかありません。 人形の著作権が認められるかどうかは微妙なところですが、 美術品というよりは工業製品の「意匠権」として認められると思います。 例えば、その人形のイメージとまったく異なる洋服や、イメージを壊す洋服を着せたり展示した場合、 メーカー側がそれを”リスク”と考えるかもしれません。 いずれにしても筋はちゃんと通したほうが良いでしょう。
補足
早速のご回答、ありがとうございます。 もう少し、この人形について説明を加えさせていただきます。 もともと、この人形は「着せ替え人形」であり、 多くの人がこの人形の洋服やアクセサリーなど 作って楽しみ、売買もされています。 人形の顔のメイクも、自由に変えることが出来、 これらのことは、メーカーも承知していることです。 作品展そのものは、イメージを壊すどころか むしろそのメーカーの人形の宣伝にもなるものと 思いますが、個人の勝手な思いこみでしょうか。 一番困っていることは、「他のメーカーのものを使うな」と 指示されていることです。 自由にカスタマイズすることを許されている人形でも、 メーカーにそこまでの権利があるのか、 今ひとつ納得できないものが残ります。
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