• ベストアンサー

2001年宇宙の旅について

ojiqの回答

  • ojiq
  • ベストアンサー率41% (121/291)
回答No.5

人類の夜明け、サルの生活から映画は始まる。彼らの生活空間にある日忽然と細長い巨大な石板〔モノリス〕が現れる。それに啓発されるがごとく、一匹のサルが、動物の骨を持ってものを叩くことを覚える。その後、争いの時に骨を使って、相手を叩きのめすに至り、勝利の印のように宙に投げ上げられた骨は、似た形の宇宙船の漂う姿に変わる。400万年があっという間に過ぎ去ったのである。ここまでで17分が過ぎ、最初の台詞までは20分以上が経過する。謎をはらみながらも、映画は整然としたリズムを持っている。この冒頭と同じように、最後の部分もまた23分近く台詞は一切なく、そのまま終るのである。間に挟まれている100分近い時間の中にも、台詞は決して多くないのだが、最初と最後の長い沈黙の時間の連続は、今作が決して人間中心の物語ではないことを示していると同時に、均整のとれた美学をも呈示している。冒頭に流れていたリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」の荘重なムードから一転、ヨハン・シュトラウスの「美しき青きドナウ」の流麗な調べに移り、先ほどまでのサルの原始的な争いの世界から未来の洗練された世界に急反転したかのように思われる。地球からやって来たフロイド博士は、宇宙ステーションで、月との交信が10日間不能になっていると聞く。伝染病蔓延説まで広がる中、彼らには隠していることがあった。それは400万年前に埋められたと考えられる岩の発見である。フロイド博士たちは何故それを隠すのか。400万年前にはあんなにもあらわにサルたちの前にさらけ出されていたものを。モノリスは今、月にある。フロイド博士たちがその前で記念撮影をしようとすると、異常に高い音が聞こえて、彼らは死んでしまったらしい。18カ月後木星に向うのはディスカバリー1号だ。乗組員は5名。その中の三人はカプセル内で冬眠している。食糧の節約のためだ。起きているのは船長のボウマンと副長のプール。だが、実際に飛行の総てを管理しているのは「HAL9000」〔=ハル〕というコンピューターだ。ハルは感情があるがごとく反応する。しかし、感情が実際にあるのかどうかは誰にも判らない。ハルは今回の任務に疑問を抱いており、ボウマンも同じ思いではないかと聞くが、ボウマンはまともに応えようとしない。人間は、相手がどんなに高度に発達したコンピューターだとしても、それは機械としてしか認めようとしない。自分の相談相手ではないのである。ボウマンもそうなのだろうか?そうではなく、ボウマンは人間らしい心を失って、機械にだけでなく機械的な反応しか示せなくなっているのだろうか?ハルが72時間後に故障する部分が出るという予知をするのも、ボウマンたちに相手にしてほしかった為に言った冗談かもしれない。ところが、ボウマンとプールはこのことをきっかけに、ハル自体の故障の可能性を協議し始め、二人で秘密に話し合った結果、ハルの思考機能を停止させ、制御機能のみを残すことにする。しかし、ポッド内での二人の話を口の動きから察知したハルは、船外で作業中のプールの命綱を切り、宇宙に葬り去る。ボウマンはハルにプールがどの方向に飛ばされたかを質問するが、はっきりした答えが返ってこない。ボウマンはBポッドに乗り、追跡する。アームでプールをキャッチし、連れ戻すが、その間、ハルは冬眠状態の三人の生命維持装置をストップさせて殺し、帰ってきたボウマンのドアを開けよという指示にも従わず、議論の余地無し、サヨナラ、と冷静に言い放って、後は沈黙となる。ボウマンはアームを使って開けるため、捕まえていたプールを再び宇宙空間の闇に葬り、非常用ハッチから爆発用ボルトを使って船内に入る。そして、嫌がるハルの思考機能を停止させてしまう。1992年イリノイ州で作られたハルは、その時教えられた「デイジー」という歌を歌いながら、脳死に至ったのである。ハルにしか知らされていなかった極秘命令が流れる。月にモノリスを埋めたのは地球外知的生命体で、木星に向けて強力な電波を発している目的を探ること。人間はコンピューターに完璧を求める。しかし、高度に発達した機械は人間と同じなのだから、対等に扱ってほしいと思うだろう。もし人間がハルと同じような扱いを受けたら、怒るのではないか。対等に扱ってくれなかったと相手が怒った時に、それを反乱と呼ぶか。ハルの反応は人間で考えるなら当然の怒りではないのか。もう一つ問題がある。ディスカバリーを木星に送り込んだ人たちは、ボウマンたちよりハルの方を信頼していたわけである。現場の人間にとっては、やはり機械より自分自身である。ここにねじれが生ずる。では最終的に責任を取らされるのは誰なのか?この映画のラストがそれを暗示している。木星の近辺を浮遊するモノリス、ボウマンは時空を飛び越えて、やがて宮殿のような部屋に導かれる。そこで食事をしているのは自分自身であり、やがてベツドに横たわるのは年老いたボウマンであり、最後には赤ん坊のような生命体として生まれ変わる。これはSFである以前に信頼と管理の物語である。

miamix
質問者

お礼

うわぁっ。なんだかすごいものをいただいてしまいました。 でも、ごめんなさい。実はもったいなくてまだ全部読んでません。自分が見たところ以降は、またあとで読ませていただきます。 それにしても、やはり影響力のある作品(監督)なんですね。期待以上のお返事をたくさんいただき、とてもうれしいです。 どうもありがとうございました!

関連するQ&A

  • お勧めの昔の日本映画は?

    昔の洋画は知っているのですが、昔の邦画はあまりなじみがありません。 昔の洋画の名作といえば、風とともに去りぬ、カサブランカ、駅馬車など。 おなじように日本映画の名作と言われているもので、1975年以上前の作品であげるとどういう映画があげられますか。 主観的なコメントで結構なので、10作品ほどあげてもらえますか。 おもしろそうなものであれば、ビデオ屋で借りて見てみたいと思っています。 よろしくお願い致します。

  • 2001年宇宙の旅

    2、3年前にペプシが2001年に宇宙に行けるキャンペーンみたいなものをしたと思うんですけどあれってどうなったんですか?懸賞に当たっても一部費用は負担しなくてはならないとか、結構具体的だったような気がするけど。前にCM見て戦闘機がホントに当たると信じた人がいたけど、またしてもペプシの冗談?

    • ベストアンサー
    • CM
  • 「2001年宇宙の旅」について

    スタンリーキュブリック監督の「2001年宇宙の旅」について質問です。 音楽・映像ともに素晴らしい映画だと思いますが、ラストの意味がさっぱり分かりません。 途中の内容は理解できるのですが、宇宙空間に投げ出された主人公が豪華な装飾をされた部屋に行くあたりから意味が分からなくなるのです。 初めて見たときは、まだ私が高校生だったので、理解できないだろうと思っていました。しかし、大人になってから最近見ても、やはりラストが謎なのです。 巨大な赤ちゃんが宇宙空間に包まれて終わるのは宇宙とは子宮のようなものってことなのですか? どうか、うまく説明できるかた回答お願いします。

  • 2001年宇宙の旅

    昨日映画を観たのですが、原作者が何を言いたいのかさっぱり分かりませんでしたので、教えて欲しいのですが、最後主人公がタイムトラベル(??)をして未来の自分に出会うシーン(?)では一体何がいいたいのでしょうか?? そして、もっとも意味が分からない所はラストで、主人公が胎児に戻って(?)、地球とトモにあるっていう所なんですが、ここはどーゆー意味があるのでしょうか?? 謎だらけなので、教えて下さい。

  • 2001年宇宙の旅

    人工知能HAL(ハル)がシャトルが故障していなのに、「故障している」と嘘をつたのは何故ですか? 又。木星調査の「真の目的」とはなんですか?

  • 「2001年宇宙の旅」などで

    宇宙船の中で、飛行士がゆったりと無重力で浮かんで作業とかしているシーンがありますが、(いつも不思議に思っていました)一体、どのようにして撮影したのですか? 目を凝らしてみても、ピアノ線などの物はいっさい使用していないように見えるのですが。 よろしければ、お暇な時にお願いします。

  • 2001年宇宙の旅で。。。

    宇宙船内を歩くドクターヘイウッドが手に持っている鞄が欲しいのですが、どこのブランドかご存知の方はいませんか?または似たような物でもかまいません。 宜しくお願い致します。

  • 2001年宇宙の旅

    この映画を絶賛する人はこんなすばらしい映画はないと褒めたたえるのですが、私は以前この映画を(劇場ではなく、ビデオで)見て、退屈で、正直どこが面白いのかよくわからなかった。今夜(11/22/2013)NHKBSプレミアムでこの映画が放映されるので、もう一度トライしてみようかと思っているのですが、この映画の面白さがわかって絶賛する方にお聞きしたい。どこが面白いのでしょうか、この映画を見るポイントを教えてください。

  • 「2001年宇宙の旅」で・・・

    映画「2001年宇宙の旅」で、後半、木星探査の途上ディスカバリー号は意思を持ったコンピュータの反逆に遭って乗組員を失い、かろうじて船長ボーマンだけが最後に木星(或いはその衛星?ちなみに原作では土星)に着いたか着かなかったのかそのあたりは定かではありませんが、(何せ、1968年当時世界中で流行ったサイケデリック?な強烈な色彩映像が延々と続く・・・)とにかく映画のラストでは一転してロココ調の部屋で年老いたボーマンがベッドで寝ていたり、新たな人類の誕生を思わせる胎児(俗にスターチャイルド?などと言ってますが、あえてそのような低俗な名前は付けないで欲しいものです)の神秘的なイメージ映像などが画面いっぱいに表れ、何か新しいものの出現を予感・予想、そして様々にオーバーラップし、さも観客に何かを問いかけるような意味合い・感じは、S・キューブリック一流のアートというか、イメージ映像だと思っています。(うまく言えないのですが・・・) このあたりについてどのように思われているかご感想を頂ければと思います。 原作と違い、ストーリーはかなり脚色されたり、映像的にも誇大化されたりしているのはご承知の通りです。 まあ、映画は映画として別物として考えて、楽しめればいいわけですが・・・

  • 2001年宇宙への旅

    題記のキューブリックの名画ですが、BGMと融合した映像美に衝撃を受けたものでした。あの時代によくあんな映像を作れたもんですね。 さて本題。 あの金属の柱のような、棒みたいなのはいったいなんですか?いまいち理解できずにおります。あれを理解しないとキューブリックの他の作品を見ても理解できない気がして(シャイニングは見ましたが)前へ進めません。 想像力・理解力に乏しい私ですが、みなさんなりの答えを教えてください。