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債権者取消権(折衷説)は、なぜ相対効か?

 債権者取消権について、取消権説、取戻権説、折衷説、責任説があることは承知しています。責任説はかなり特殊なので置いておくとして、取消権説だと絶対効、取戻権だと相対効というのは理解できます。そして、取消権説には取消後取戻訴訟を起こさなければならないという二度手間がネックで採りえず、取戻権説にはなぜ取り消してもいないのに取り戻せるのかという理論的弱点があって採りえないのは分かります。ですから折衷説(取消権+取戻権説)が妥当だと考えます。  しかし、です。取消+取戻権だとしても、絶対効か相対効かは、論理必然ではないのではないでしょうか。折衷説は相対効とよく言われますが、その根拠に疑問を感じます。  相対効にした場合、転得者がいないとして、受益者は債権者との関係でのみ買受を無効にされますが、債務者との契約関係はなお有効です。支払済みの代金は不当利得返還請求で債務者に請求可能のようですが、契約が有効(→代金債務弁済が有効)なのに不当利得というのはおかしいですし、受け取った物の返還との間で同時履行を主張できないのもおかしな話です。  取消+取戻権説を採った上で絶対効と解した方が、ずっと法律関係がすっきり分かりやすくなるのではないでしょうか?  絶対効にすると取引の安全を害するという主張があるのは分かりますが、悪意者以外取消を受けない債権者取消で、なぜ絶対効にすると取引の安全が害されるのか今ひとつピンときません。悪意者から善意の転得者に渡った場合、取消を善意の転得者に対抗できない(詐欺の取消権などと同様)と考えれば済む問題ではないでしょうか?

みんなの回答

回答No.2

 #1ですが・・・  私が言っているのは,債権者が,債務者と受益者の双方に同時に同一内容の取消の意思表示をしたからといって,それはあくまで債権者と債務者,債権者と受益者の間の法律関係を変動させるだけで,債務者と受益者との間の法律関係を変動させることにはならない,それが,民法というか,私法の不文の大原則ではないか,ということですね。  民法の債権法の世界で,法律関係の当事者でない者の意思表示によって,その表意者を含まない第三者間の法律関係を変動させるような制度が他にありますか?。意思無能力者の行為の取消であっても,取り消されるのは,意思無能力者が直接の相手方にした意思表示であって,相手方と第三者の間の法律関係に直接の変動は生じないですね。  身分法の世界や,会社法の世界では,直接の当事者でない者による法律関係の解消(例えば,重婚取消,設立取消)の規定がありますが,これらについては,身分法や組織法の特殊性が背景にありますし,形成判決の効力についての規定も置かれています。  これに照らして考えると,個別の取引行為を規律の対象とする民法債権法の一制度であり,明文では債務者を必要的な当事者にする規定もなく,その効力についての規定もない詐害行為取消権について,民法の一般原則を踏み越えて,明文にない債務者と受益者の双方を必要的共同被告とする要件を創設し,それによって,債務者と受益者の間の法律関係の解消まで,取消の効力として認める解釈は,論理的に成り立たないわけではないけれども,解釈論としては行きすぎではないか,ということになるわけです。  法律解釈は,極端に言えば,言えば何でも通る,という世界ですし,実際にも,明文にさえ反している解釈が通説になっているものもないわけではありません。  そのような場合の視点として,結果的妥当性が重要なことは言うまでもありませんが,それだけではなく,当該法律,あるいは法制度全体を見渡したときに,そのような解釈を採ることは,バランスを欠いているのではないか,突出しているのではないか,そういった面からの検証も必要ではないかと思います。

noname#41546
質問者

お礼

 ご回答、ありがとうございます。  そのようなお立場もあるでしょう。  他人間の法律関係の変動というと、少し前まで「詐害的賃貸借の解除」がありましたね。まあそれ以前に、詐害行為取消権自体、随分特別な制度なので、特別な効果が与えられてもいいように思いますけどね。  民法において何を原則と見るか、そして「取消」という語をどう捉えるかで立場の違いが生じるようですね。私に言わせれば、受益者と債務者の間では契約が有効なのに、受益者の受け取ったものだけが突然取り上げられるという、現在の多数説の方が不自然なのですが。

回答No.1

 一つの考え方として,民法の世界では,相対効(意思表示は当事者間でのみ効力を生じる。)が原則で,絶対効を認めるには,法律の明文の根拠か,それに匹敵する解釈上の根拠が必要だという基本原則があると考えられます。  確かに,民法96条は,取消権の行使に絶対効があり,詐欺取消しの善意の第三者に対する関係だけ,例外的に「対抗できない」と規定しているように見えますし,意思無能力者の法律行為の取消権は,明文の規定なく絶対効と解釈されています。  しかし,これらの規定は,「法律関係の変動は当事者の自由な意思表示による」という原則を裏から条文化したものと理解することができます。すなわち,契約の意思表示にせよ,その一方の意思表示の取消しにせよ,効力は当事者間でのみ生じることが原則で,取消しの意思表示の効力を第三者に及ぼすためには,「自由な意思の保護」というより大きな民法上の原則との優劣関係が問題とされなければならない,と考えられます。  この原則からすると,詐害行為取消権は,債権者の受益者または転得者に対する意思表示によって行使されますので,その効力も,債権者と受益者,あるいは債権者と転得者の間でのみ生じるのが原則だということになります。債権者は,債務者・受益者間の法律関係の当事者ではありませんから,債権者の受益者に対する意思表示が,債務者・受益者間の法律関係に影響を及ぼすには,それなりの法律の明文または解釈上の根拠が必要だということになります。  しかし,そのような法律上の根拠がない,というのが,詐害行為取消権の取消しの効果を相対効と解釈する大きな根拠であると考えられます。  後の法律関係の処理に便宜だということは,法律関係の当事者でない者は,他人間の法律関係に介入できない,という原則を破るに足る法律上の根拠にはならない,ということになるわけです。  民法に限らず,法律の勉強をしていると,ややもすると表面的な解釈論の対立に目を奪われがちですが,その背景には,その法律を通じるものの考え方,さらに広く,その法分野を通じるものの考え方,さらには,法の世界全体を通じるものの考え方があります。  問題が難しければ難しいほど,そのような背景に遡って考えることが必要ではないかと思います。  

noname#41546
質問者

お礼

 ご回答、ありがとうございます。民法の原則が相対効だとすると、そういうことになるのでしょうか。  ただし、 >>詐害行為取消権は,債権者の受益者または転得者に対する意思表示によって行使されますので,その効力も,債権者と受益者,あるいは債権者と転得者の間でのみ生じるのが原則だということになります  の部分は、相対効説を採るから受益者または転得者のみに対する意思表示になるのであって、取消+取戻権と解しつつ絶対効として債務者も含めた意思表示を要求するという道もあるものと思われます。実際、私が今よいのではないのかと考えているのは、取消+取戻権で、絶対効、相手方は債務者と受益者・転得者の両方という考え方です。

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