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過失と教唆

iustinianusの回答

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回答No.3

 結論的には、ご質問者がご回答をお信じになって行動された結果、ご質問者が亡くなられたり犯罪行為をなさったりした場合、ご回答者も刑事責任なり民事責任を負われる余地はありますが、それゆえに処罰を受けたり損害賠償責任を負わされたりすることは、まずないと思われます。 1 法的責任の成否 (1) ご質問者が亡くなられた場合 ア 刑事責任  この場合、ご回答者は、ご質問者ご自身をいわば道具として犯罪的結果(ご質問者の死)をもたらされたわけですから、殺人罪(刑法199条・故意がある場合)または過失致死罪(刑法210条・故意がない場合)の刑事責任を負われる余地があります(ここにいう「故意」とは、「ご質問者がご回答にしたがって行動される結果、ご質問者が亡くなられるかもしれないが、それでもかまわない」とお考えになってご回答になることをいいます。)。  もっとも、この種の刑事責任(間接正犯、といいます。ご回答者ご自身は直接手をお下しになっていませんが、それと同視されるわけです。)が成立するためには、ご回答者がご質問者の行動を実質的に支配していたといえることが必要です。  ところが、このサイトでは、ご質問者とご回答者との間に物理的な(=実際に会う、という意味です。)接触の可能性がほとんどなく(=ご回答に従わなくても、ご質問者がご回答者から不利益な扱いを受けることは考え難い。)、ご回答に従われるかどうかはご質問者ご自身が判断されるべきである旨規約上も注意書にも明記されていますから、ご回答者がご質問者の行動を支配していたといえることは少ないでしょう。  そうすると、ご回答者が間接正犯としての刑事責任を負われることは、通常ないと思われます。  なお、社会通念上、ご回答に従って行動される方がいらっしゃるとは通常考えられないようなご回答(例えば、「走行中の新幹線を素手で停車させてください。」などがこのようなご回答にあたるでしょうか。)であったにもかかわらず、ご質問者がこれに従って行動されたような場合には、ご回答とご質問者の行動との間の相当因果関係が否定され、殺人未遂罪(同法203条・故意がある場合)の刑事責任を負われる(故意がない場合は、何ら犯罪は成立しません。)ことになります。  また、ご質問者が亡くなられた原因が自殺であった場合において、ご回答者が故意をもって自殺をアドバイスされたときは、殺人罪の間接正犯が成立するほどの支配関係が認められなくとも、自殺関与罪(同法202条前段)の刑事責任を負われる余地があります。 イ 民事責任  ご回答とご質問者の行動との間に相当因果関係が認められる(=社会通念上、ご回答に従ってご質問者が行動されることが通常であると考えられる)限り、ご回答者は、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負われる余地があります。  もっとも、上記アでも申し上げたとおり、ご回答に従われるかどうかはご質問者の任意ですから、ご回答に従ってご質問者が亡くなられるほどの危険な行為をされることが通常であるといえることは少ないと思われます。  そうすると、実際にご回答とご質問者の行動との間に相当因果関係が認められ、ご回答者が損害賠償責任を負われることはあまりないと思われます。 (2) ご質問者が犯罪行為をなさった場合 ア 刑事責任  ご質問者が犯罪行為をなさった場合において、ご回答者がご質問者の行動を実質的に支配していたといえるときは、ご回答者は、間接正犯として刑事責任を負われる余地があります。  ご質問者が故意に犯罪行為をなさった場合において、ご回答をご覧になった結果、犯罪意思を新たにお持ちになり、または強められたときは、ご回答者は、それぞれ教唆(刑法61条1項)または幇助(同法62条1項)の刑事責任を負われる余地があります。  もっとも、ご回答者に故意(ここにいう「故意」とは、「ご質問者がご回答に従って犯罪行為をなさるかもしれないが、それでもかまわない」とお考えになってご回答になることをいいます。)がない場合は、教唆・幇助は成立しません(過失による教唆・幇助は不可罰)。  また、ご質問者の犯罪行為が過失犯にすぎない場合、ご回答者に教唆・幇助が成立するか否か(=過失犯の教唆・幇助を処罰するか)は、議論が分かれています(実際に公訴が提起された事例はほとんど知られていないようです。)。 イ 民事責任  ご回答とご質問者の行動との間に相当因果関係が認められる(=社会通念上、ご回答に従ってご質問者が行動されることが通常であると考えられる)限り、ご回答者は、共同不法行為に基づく損害賠償責任(民法719条2項)を負われる余地があります。  この場合、ご回答者に故意がなくとも(過失による教唆・幇助)、ご質問者に故意(ここにいう「故意」とは、ご質問者が「自分の行動によって他人に○○という損害を与えるかもしれないが、それでもかまわない」とお考えになって行動されることをいいます。)がなくとも(過失行為の教唆・幇助)、ご回答者は、損害賠償責任を負われる余地があります。  もっとも、上記(1)イで申し上げたとおり、ご質問者の行動から生じた結果が重大であればあるほど、相当因果関係は認められ難く、したがって、ご回答者が損害賠償責任を負われる余地は少なくなると思われます。 2 ご回答者の法的責任を立証できるか  ご回答者が法的責任を負われる余地があるとしても、刑事責任を追及したり、被害者の方が損害賠償責任を追及したりするためには、ご回答者がどなたであるかを特定しなければなりません。 (1) 刑事責任について  刑事訴訟法上、運営者に証言拒絶権は認められていませんから、捜査機関や裁判所から証人尋問の方法により登録情報の提供を求められれば、運営者はこれに応ずる義務を負うと解されます(刑事訴訟法143条(証言義務)、226条(公判前の証人尋問))。  もっとも、管理担当者が犯人隠避罪(刑法103条)や証拠隠滅罪(同法104条)の刑事責任をあえて負ってまで登録情報を秘匿した場合、事実上ご回答者の刑事責任を立証することは不可能でしょう。 (2) 民事責任について  運営者は会員の方に対して、登録情報を開示しない旨約束しています(ご利用規約15条1項柱書本文)から、運営者が被害者の方から登録情報の開示請求を受けても、運営者はその請求を拒む義務があると解されます(わが国には、不法行為の加害者に関する情報を持つ者に、被害者に対してその情報を開示するよう義務づけた法令の規定は存在しません。)。  したがって、被害者の方がご回答者を特定されることは極めて困難です(=不法行為の立証は事実上不可能。)。  もっとも、同項柱書ただし書前段は、「ただし、法令に基づく公的機関からの照会及び当社が法令によって公開義務を負う場合、または消費者センターなど公共性のある機関に対する場合はその限りではありません。」と規定していますから、被害者の方のお申し立てにより弁護士照会(弁護士法23条の2)や調査嘱託(民事訴訟法186条)があったときは、運営者は、これに応じて登録情報を開示することができます(同項柱書ただし書前段は、同後段のように「但し、個人を特定できない情報に限るものとします。」との限定がありませんから、公的機関からの照会があったときは、運営者は、個人を特定できる情報も開示することができます。)。  ただし、開示を拒絶しても運営者には何ら法的制裁は課されませんから、総会員からの信用維持などの政策的配慮により、運営者が開示を拒絶することはあり得ます(なお、登録情報は民事訴訟法197条1項3号所定の「職業の秘密」にあたり、管理担当者は登録情報に関する証言義務を負わないと思われます。)。  ご参考になれば幸いです。

tatomiver2
質問者

お礼

私のふとした疑問のために、お時間を割いていただいてありがとうございました。

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