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不応期に電位が生じる理由

 神経細胞が興奮する経緯を考えたとき、以下のような過程を経て不応期に至ると思っているのですが、そうすると不応期で静止電位が生じる理由が分からなくなりました。私の考え方の中で、抜けている部分、間違っている部分をご指定いただけると幸いです。  まず、静止期に静止電位が生じる理由は、ナトリウムポンプによって輸送されるNaイオンとKイオンの数に差が生じるため。(ポンプが一回作動するごとに、Naイオンが3個排出され、Kイオンが2個吸収される)  次に活動電位が生じる理由は、Naチャネルだけが開き、拡散によってNaイオンのみが細胞内に流入するため。このとき、Kイオン濃度は依然として細胞内の方が高いため、細胞の内外で電位差が逆転する。  最後に、Kチャネルが開き、拡散によってKイオンが細胞外へ移動する…  つまり、最後の時点でNaイオンとKイオンは細胞の内外で濃度差が生じていない、つまり電位がゼロではないか、と考えていました。そしてその状態から静止電位まで回復するためにNaポンプが頑張るまでの間が不応期だと考えていました。  しかし、不応期はNaチャネルやKチャネルが反応しないだけで、電位は静止期と同様になっています。  不応期に電位が生じる理由って何でしょう?

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noname#24872
noname#24872
回答No.3

内容的にはNo.1の方の回答で完結していますが、表現を変えて回答してみます。 >静止期に静止電位が生じる理由は、ナトリウムポンプによって輸送されるNaイオンとKイオンの数に差が生じるため。 基本的にはそれで正しいのですが、静止電位が生じるのはK+が1つ足りないからではなく、細胞の内外でK+とNa+に濃度差が生じるからです(細胞内の全電荷は、他のイオンによってバランスが保たれます)。静止期にはNa+はほとんど細胞膜を通過しませんが、K+は高濃度の膜内から低濃度の膜外へ漏れ出します。この漏れ出したK+が、-70mVの静止電位を生じさせるのです。 >Kイオン濃度は依然として細胞内の方が高いため、細胞の内外で電位差が逆転する。 膜電位が逆転するのは、「Naチャネルが開くと、漏れ出すK+より、入ってくるNa+の方が多くなるから」です。チャージだけで収支を計算すれば分かりやすいと思います。 >Kチャネルが開き、拡散によってKイオンが細胞外へ移動する Na+チャネルは一旦開くと、0.5ミリ秒ほどでまた閉じてしまい、数ミリ秒の間は再び開くことができません。この間は、「外からNa+が入ってこれないため」脱分極を起こすことができません。これが不応期です。 Na+チャネルが開いている時間は非常に短いので、細胞内でNa+濃度が上昇するのは、細胞膜の内側に接した極薄い液層のみです。その背後には、圧倒的多量の細胞質が控えているため、Na+チャネルが閉じてしまえば、Na+濃度が上昇した液層は元からある低Na・高K+の細胞質と混ざりあってしまい、Na+チャネルの開く前と同じ状態に戻ってしまうのです。これが御質問の「不応期に電位が生じる理由」です。 K+チャネルは、流入したNa+によって過剰になったプラスチャージを細胞外へ汲み出すことにより、より早くもとの-70mVの静止電位に戻る手助けをしています。結果的にK+は余計に汲み出されてしまいますが、これも圧倒的多量の低Na・高K+の細胞質と混ざりあってしまえば問題ではなくなります。

greenhouseeffect
質問者

お礼

ありがとうございます!分かり易く書いていただき、非常に助かりました。 特に、 「背後の細胞質と混ざれば元に戻る」 これは、私の疑問をずばりと解決してしまいました。 言われてみれば当たり前のことですよね。ただ、「膜電位」という考え方が抜け落ちていたために今まで分からなかったようです。だから、先のお二方も、そのことを仰っていたんですね。

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その他の回答 (3)

  • suiran2
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回答No.4

まず,ナトリウムポンプは忘れましょう。極端に言うと静止電位や活動電位にナトリウムポンプは関係ないのです。軸索の内液をローラーで絞り出して測定した話を紹介しましたのも,内液が無くなれば当然内液のATPも無くなります。つまり,ナトリウムポンプは働かなくなります。この状態で測定しても同じなのです。正常軸索でも,ATPase阻害剤を加えた状態で測定しましても静止電位はありますし,1万回以上も活動電位は発生します。ナトリウムポンプはあくまでもイオンの濃度勾配を作るだけです。 また,ここで扱われている電位とは,あくまでも膜電位です。膜を横切る陽イオンの流れです。ですから良く電池やコンデンサーにたとえられるわけです。外液と内液の電位差ではありません。その辺をきちんと理解してください。ですから内液や外液を特別なリンゲルに変えても可能なのです。ここら辺はもう一度参考URLを見直してください。 静止電位はカリウムのリークチャネルで生じ,活動電位はナトリウムの電位依存チャネルで生じます。原因は別なものです。 また,不応期についても参考URLをご覧になってください。電位依存チャネルは3つの状態があります。ゲートが二つあるわけです。不応期は内側ゲートが閉じた状態です。ですから,ナトリウムイオンは流入しません。

greenhouseeffect
質問者

お礼

重ね重ねお答えいただきありがとうございます。 >極端に言うと静止電位や活動電位にナトリウムポンプは関係ないのです。 というのは、あらかじめ細胞の内外でNaイオンと、Kイオンの濃度差があることが条件と考えてよろしいでしょうか。 あくまで「膜電位」であり、内液と外液の電位差ではないという点が私の知識として欠落していた部分でした。 本当にありがとうございました。

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  • suiran2
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回答No.2

専門的な説明の後ですので,歴史的なお話を… 静止電位:「ベルンシュタインの膜説」 神経繊維の内側にはK+が多く,そしてこれは膜を通過できるが,陰イオンは通過できない。そのため,K+が膜外に出て(+)に,膜の内側は陰イオンによって(-)に分極する。これを静止電位という。 活動電位:「ハックスレー,ホジキンのNa+説」 活動電位は,Na+の透過性が増加し,そのためNa+は内外の濃度差にしたがって内側に流れこみ,膜電位を減少させ,さらにプラス側に変化させる。 軸索内液を取り除いて溶液を変えたり,外液を調整したりしたベイカー,ショウの研究(記憶が定かではありませんが,ATPは入れてないはずです。つまり,ATPaseは働いていません。) 静止電位:高カリウムリンゲル液に軸索を入れ,カリウムの漏出を止めると静止電位は無くなることから,静止電位はカリウムリークチャネルからのカリウムの漏出による。 活動電位:内液を硫酸カリウムに変え,外液のナトリウムイオン濃度を維持すると活動電位が発生し,内液のナトリウムイオン濃度を高めると活動電位が発生しないことから,活動電位はナトリウムイオンが電位依存ナトリウムチャネルからの流入による。 この2点は,最低把握しておかなければならないのではないでしょうか。カリウムの電位依存チャネルは活動電位をスパイク状に鋭くするだけです。 さてここまでの説明で静止電位と活動電位が別なものであることがおわかりいただけましたでしょうか。不応期は電位依存チャネルは確かに閉じています。しかし,カリウムのリークチャネルは開いています。ですから不応期でも静止電位は同じになります。 参考URLはその辺をわかりやすく説明してあります。

参考URL:
http://www.fnorio.com/0038Nerve_signal11/Nerve_signal11.htm
greenhouseeffect
質問者

お礼

ありがとうございます。 私は、陰イオンの存在を全く考えずにいました。 そのため、「電位的な平衡」無しに考えを進めていってしまいました。 紹介してくださったHPにある、コンデンサのような状態っていうのがなかなか理解できませんが、もうすこしじっくり読んでみたいと思います。 >不応期は電位依存チャネルは確かに閉じています。しかし,カリウムのリークチャネルは開いています。ですから不応期でも静止電位は同じになります。 活動電位の状態から静止電位の状態に電位が再逆転するとき、Kイオンは細胞外に排出されるのですよね。 ならば、静止期と不応期では若干Na・Kイオン濃度が異なるはずです。しかし、共に同様の電位を持つことが出来るのが不思議なのですが…。う~ん、もう少し勉強してみます。

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  • Sbacteria
  • ベストアンサー率42% (55/129)
回答No.1

>静止期に静止電位が生じる理由は、ナトリウムポンプによって輸送されるNaイオンとKイオンの数に差が生じるため。(ポンプが一回作動するごとに、Naイオンが3個排出され、Kイオンが2個吸収される) ------------- ナトリウムポンプは、1分子のATPの水解に伴って、3分子のNa+を排出し、2分子のK+を取り込みます。でも、この起電性が直接膜電位を反映している訳ではないのですよ。寄与は10%程度だそうです。 膜電位は、すごく見にくいでしょうが、  Vr = RT/F*ln{(Pk[K]o+Pna[Na]o+Pcl[Cl]i)/ (Pk[K]i+Pna[Na]i+Pcl[Cl]o)}   ここで、Rは気体定数、Tは絶対温度、Fはファラデー定数 Pk, Pna, Pclはそれぞれ、K+, Na+, Cl-の膜の透過性を表す定数。 [K] [Na] [Cl] はそれぞれの濃度を表し、下付の o, i が細胞膜の外側、内側を表します。 早い話が、膜電位が変化するのは、各種イオンの細胞膜に対する透過性が変化する(チャネルが開くというのはそう言う意味があります)からです。 静止時には、 Pk:Pna:Pcl=1:0.035:0.02  なので、 これで計算すると大体 -90mVになるわけです。 チャネルが開いて、どれだけイオンが移動するか?と言うと、そんなに沢山のイオンは移動しません(濃度は大きくは変化しない)。だから、Na-KATPaseが止まっていたとしても、興奮は起こるし、おさまれば静止電位に戻ります。しかし、何回もやっていると膜内外の濃度差は平衡値に近くなるので、Na-KATPase は、その平衡点からずれるように絶えず動いている訳です。

参考URL:
http://www.kawato.jst.go.jp/htabata/integrate.html
greenhouseeffect
質問者

お礼

ありがとうございます。 ナトリウムポンプが膜電位にあまり寄与していないということは驚きでした。 また、紹介していただいた式は、正直理解できませんでした。スミマセン。 >チャネルが開いて、どれだけイオンが移動するか?と言うと、そんなに沢山のイオンは移動しません(濃度は大きくは変化しない)。 感覚的なものかもしれませんが、上記の文章がちょっとひっかかりました。私はチャネルが開くことで完全に濃度的な平衡状態になると考えていましたので、それに比べると実際のイオンの移動は少なくなるかと思います。しかし、電位が逆転するほどのイオンの移動が起こっているわけですので、「そんなに沢山のイオンが移動しない(濃度は大きくは変化しない)」というのはどうかな、と思いました。まぁ、私の考えている「沢山」とか「大きく」という量が素人の感覚なので見当違いなのかもしれませんが…。

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