仮差押登記は,換価のための保全を目的とするものですから,常に売却によって消滅(抹消)されます。また,所有権移転仮登記は,例え非担保目的であっても,最先順位の担保権よりも後れるものですから,抹消されます。
次に,売却によっても抹消されない権利についてですが,ご質問の「競売によって」は,「売却許可決定が確定し,買受人が残代金を納付したとき」という意味だと思われますので,それを前提として,売却に伴って権利が消滅しない権利の主たるものを掲げておきます。
1 質権
使用収益を伴う質権で,かつ,最先順位の担保権(抵当権・根抵当権等)よ りも先順位にあるもの
2 留置権
差押後のものであっても,買受人が負担することになる。
3 仮登記(非担保目的のもの)
売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記等で,抵当権と併用さ れているなど,担保目的であると認められないものであり,かつ,最先順位の 担保権よりも先順位にあるもの
4 用益権
最先順位の担保権よりも先順位で,かつ,対抗要件を備えたもの
ア 建物の賃借権(対抗要件は,建物の引渡し)
イ 建物所有を目的とする賃借権(対抗要件は,所有権保存(移転)登記・建 物の表示登記)
ウ 短期賃借権
契約期間は,建物は3年を超えないもの,土地のうち,樹木の栽植又は伐 採を目的とする山林は10年を超えないもの,その他の土地の場合は5年を 超えないものであり,実際に使用占有の事実が存し,かつ,差押・仮差押よ りも前であること(最先順位の担保権よりも後でも可)が必要である。対抗 要件は,上記ア・イのとおり。
エ 地上権(対抗要件は,登記)
オ 地役権(対抗要件は,登記)
5 仮処分
ア 処分禁止の仮処分
最先順位の担保権よりもまえのもの
イ 占有移転禁止の仮処分
差押・仮差押よりも前であること(最先順位の担保権よりも後でも可)
6 買戻登記
最先順位の担保権よりも前のもので,買戻期間が残っているもの