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源氏物語の翻訳について
- A.Waleyの『TALE OF GENJI 』(帚木 The Broom-Tree)の翻訳について、わからない箇所や訳の間違いを教えていただきたい。
- 質問文章では、主要なポイントとして以下の3つの要約文があります。 1. 馬頭の冷淡さと彼女の嫉妬について 2. 彼女に不親切に扱われたときの馬頭の説明 3. 馬頭が愛を続ける条件
- ハッシュタグ: #源氏物語 #翻訳 #疑問点 #要約文 #愛と感情
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今晩は。桜の寿命は5~60年だそうですが、戦後すぐに植えられた桜がまだかなり頑張っていますね。 いつも大変ていねいなお礼をありがとうございます。今回の訳を拝見しますと、柔道ですと「黒帯」確定ですね。 1)『 Accordingly I behaved with the greatest coldness to her, and she as usual began her jealous fit and behaved with such folly that in the end I said to her, ’ If you want to be rid forever of one who loves you dearly, you are going the right way about it by all these endless poutings over nothing at all. 』 >従って私(馬頭)は彼女に対してもっとも非常な冷淡ささえも持って振舞いました。そして彼女はいつもの通りに彼女の嫉妬の興奮を始め、そして彼女は大変 な愚かさで振舞ったので、ついに、私は彼女に言いました。「もしあなたが、あなたを心から愛する人から永遠に解放されたいのなら、なんでもないことに対しても、ひたすらのこういった終わりのないふくれっ面をすることによって、あなたはそれについて正しい方法を行なうことになります。・・・・? ●安定した実力を感じます。 >she as usual began her jealous fit・・・・「fit」は「興奮」ですか? ●いいと思いますが、a fit of anger や a fit of depression などを考えると「激発」「発作」という訳語を覚えられていたほうが汎用性が高いかもしれません。 >you are going the right way about it・・・・「be going」で「行なうことになる」? ●「往来発着の動詞は、現在進行形で近未来を表せる」というルールを意識されたのだと思いますが、ここは現在進行形で解釈するのが自然だと思います。「(今まさに)やっている」という感じです。 >「about it」の「it」は「you want to be rid forever of one who loves you dearly」ですか? ●その通りです。厳密に言うと、be rid forever of one who loves you dearlyの部分であり、また前置詞 about の後に来ますので、小うるさく言うと、being rid forever of one who loves you dearly ということになります。 >all these endless poutings ・・・・「all」は(行為・状態について)「ひたすらの」? ●poutings と複数ですので、相手の女性が、ああだといってはふくれ、こうだといってはふくれる、そのすべて(のふくれ)という意味ですが、意訳として「ひたすらの」は優れていると思います。したがって「根も葉もない事に、こうやってひたすら際限もなくふくれ続けること」ということですね。(今回初めて気が付きましたが、「焼きもちを焼く」は pouting のイメージなのですかね(?)) >永遠に解放されたい、というのはつまり「別れたい」ということですか? 別れたいのならふくれっ面をし続けることは正しい方法でしょうね、と馬頭は言いたいのでしょうか? ●どちらもその通りだと思います。 2」『 But if you want to go on with me, you must give up suspecting some deep intrigue each time you fancy that I am treating you unkindly. 』 >しかしもしあなたが私と(関係を)続けたいのなら、あなたは私があなたを不親切に扱っていると心に描く度ごとに、あなたは何かの深刻な陰謀を怪しむことをやめなければならないのです。・・・・・・・? ● each time が接続詞であるというのは結構難しいですが、きちんと捉えられていますし、suspect の訳もぴったりです。完璧です。 3」『 Do this, and you may be sure I shall continue to love you dearly. It may well be that as time goes on, I shall rise a little higher in the world and then.....' 』 >これ《2》のこと》をしなさい、そうしたら多分私はあなたを心から愛することを続けるでしょう。時が経つにつれて、多分私は世間でより少しは昇進するでしょう。それから・・・・? ● 完璧です。 >It may well be that as time goes on,~・・・・仮主語構文ですか? ●仮主語構文だと be 動詞の後に補語が必要でので、厳密に言うと違うのでしょうが、It may well be that~で「多分~だろう」という構文として理解すればいいと思います。may だけだと「~かもしれない」と蓋然性がさほど高くないですが、may well だとかなり蓋然性がアップして「多分~だろう」くらいになります。 >I shall rise a little higher in the world・・・・昇進することですか? ●その通りです。 >馬頭の言っていることは理論的には合っている感じがしました。概ね男性は理論的で女性は感情的でしょうか。(なぜそうなってしまうのかわからないのですが。。) ●生物の性では、女性がノーマルな性で、(アダムとイブの神話とはうらはらに)男性はそこから作られたいびつな性だというのが通説であることはご存知かと思います。子供を生む能力のない男性は、女性に好かれなければ意味のない存在(遺伝子を後世に伝えられない存在)で、male plumage をshow offしたりcourtship dance を行う仕儀となります。手っ取り早いのは、いかに他のオスより肉体的に強いかを誇示することですが、頭が良いのも、”Hey, why don’t you let me guide you safely through this hazardous life by the strong intellect of mine?”という「ウリ」になりますので、そこに血道を上げる男性が出てきてもおかしくありません。(私の丸暗記努力もその哀れな1バージョンだったのでしょう。) ただ馬頭は、現実には浮気のし放題であるのにもかかわらず、しらばっくれて、焼きもち焼くと別れるぞと脅すことによって一人の女性を丸め込もうとしているわけですから、誠にいい気な理性の悪用(abuse of reason?)と言えるかもしれません。 長らく(高度な)教育を受ける権利を奪われて来た日本女性は、男性に対して従属的な地位に甘んじて来ましたが、戦後のGHQの教育改革による解放で、今や大学生の過半数、成績上位者の多くを女性が占めるようになり、夫よりは妻のほうが高い教養があるというのがありふれた光景になってきました。ありきたりの理論・理屈では、もう洟も引っ掛けられない時代になっているのでしょうね。 ********************* 《余談》日本におけるイプセンの受容は、もっぱら『人形の家』のノーラの「新しい女」に集中していたようですが、イプセンの真価はむしろ、登場人物の固定化した性格を廃し、シェイクスピアのように、いろいろな面を垣間見させる「生きた」登場人物たちが寄り集まるところに、古代ギリシャ悲劇のような起爆力のあるドラマを構築したところにあると思います。その意味で、『幽霊』、『ヘッダ・ガブラー』、『人形の家』など実によくできています。(後期の劇は、難しくよく分かりません。) イプセンの近代演劇に対する影響は深く、例えば戦後アメリカの劇作家アーサー・ミラーの『セールスマンの死』などにも顕著にその影響が見て取れます。(なおこれも現代アメリカを描いた傑作演劇ですので、映画ででも是非御覧ください。)(つづく)
お礼
今晩は。桜は私たちの戦後を見続けているのですね。 桜にはとりわけ日本人の心を惹きつけずにはいられない何かがありますね。 いつも大変丁寧に回答をしてくださってありがとうございます。 決してすらすら訳しているわけではないのでまだまだ黒帯はいただけないです。。。 「fit」は、最初に出てきた「fit」(適した)で意味をとっていたため どうしても訳せずに、「訳せませんでした」と一旦書いたのですが、よくよく見てみたら 「fit2(2は小文字)の方に「発作、ひきつけ、けいれん」「(感情・行動などの)一時的爆発、興奮」 というのがあったので、もしかしてこれのことだろうか、と思いました。 「激発」「発作」の訳語を覚えておいた方が汎用性が高い(いろいろ適用できる)のですね。 you are going the right way about it~・・ここは文脈で訳してしまいました。 (ふくれっ面をしたら、正しい方法を行なうことになる、といった具合に) 「往来発着の動詞は、現在進行形で近未来を表せる」というルールは頭にありませんでした。 普通に現在進行形(今まさにやっている状態)なのですね。 「about it」の「it」は「being rid forever of one who loves you dearly 」 「あなたを心から愛する人から永遠に解放されること」ですね。 all these endless poutings の「all」は「すべての」という訳がうまく文のなかに はまらなかったので、辞書からいろいろ探してみて「ひたすらの」としました。 「こうやってひたすら際限もなく」とすると文が滑らかに読めますね。 焼きもち(焼餅)を焼くのとpouting (ふくれっ面をする)というのはうまく繋がりますね。 (まさに餅を焼いてふくれる、というイメージですね) 2)は知っている単語を改めて辞書を引いて言葉を探して、いろいろ組み合わせて訳を作りました。 It may well be that as time goes on,~は仮主語構文とするには少し馴染みがない 雰囲気だったのですが(be動詞の後に補語がありませんね)、 It may well be that~で「多分~だろう」という構文として覚えておくといいのですね。 「may」と「may well」で蓋然性(確実性の度合い)の違いがあるのですね。 male plumage ・・・雄の羽毛? show off・・・人目を引くようなことをする courtship dance ・・・求愛ダンス 「やあ、この危険な人生を通して、私の有能な知性によって、 私にあなたを安全に手引きさせてみたらいかがです?」・・・? (なるほど・・・!) 異性を獲得したいという欲求や動機で男性は向上していくのですね。 馬頭は自分がモテる男だということを自負しているのかもしれませんね。 GHQの改革というと以前紹介してくださった「ベアテ・シロタ・ゴードン」を思い出します。 彼女こそ優れた女性でしたね。 時代は目覚ましく変わりましたね。 ***************************** 前回紹介してくださったイプセンの『幽霊』を読みました。 タイトルから想像して、幽霊が出てくる話なのかと思いましたが、 幽霊とは「因襲の幽霊」ということですね。 (もしくは亡くなって今はいないアルヴィング大尉のことのようにも思えました) 短いストーリーの中にいろんな秘密や過去が隠されていて 登場人物一人々が主人公になれるようなドラマ性を感じておもしろかったです。 起爆力は最後の瞬間に向かって高まっていますね。 (ラストは衝撃的でした。) 『ヘッダ・ガブラー』と『人形の家』も読んでみますね。 『セールスマンの死』はタイトルを聞いた事があります。 (すぐには観られませんが観てみたいと思います) *************************** 『ダフニスとクロエー』を読みました。 若い男女の恋に目覚める過程が繊細に描写されていたと思います。 (恋をすると苦しい、などと表現されているところなど) この作品から影響を受けたという『潮騒』は「三島由紀夫の作品」として完成されていますね。 古典であってもよいものからはどんどんインスピレーションを受けて、更によいものを 生み出すことができるのだと感じました。 (金曜日にまた投稿します)