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憲法の内閣の条約締結権の質問です。

この問題がわかりません。  「内閣は,条約を締結する際,その条約の合憲性について,最高裁判所の見解を求めることができる。最高裁判所が違憲であるとの見解を示した場合は,内閣はその条約を締結することはできない。」という趣旨の法律が制定されたと仮定する。この法律に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。 本件の法律が制定された場合、内閣の条約締結権を侵害しているのはわかります。 しかし、憲法上、裁判所は違憲審査権もあるからそんなに問題とならないのではないのかなとも思います。また、この法律は内閣は意見を求めないこともできるのですよね。それでも違憲なのでしょうか。

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  • mariwana
  • ベストアンサー率33% (1/3)
回答No.1

素人知識ですが、一応個人的な意見を書かせてください。 私は、この問題には大きく分けて2つの論点があると思います。一つが、いわゆる「勧告的意見の合憲性」。二つ目が、条約に対する違憲審査の可否です。 ・「勧告的意見の合憲性」について 憲法81条が抽象的違憲審査制を規定したものであるか、付随的違憲審査制を規定したものであるかに争いがあることは質問者さんもご存じだと思います。違憲審査制の法的性格として、付随的違憲審査制説は「通常の裁判所が、具体的な訴訟事件を裁判する際に、その前提として事件の解決に必要な限度で、適用法条の違憲審査を行うことができる」と考え、こちらが現在の通説です。判例も警察予備隊違憲訴訟(S27.10.8)で抽象的違憲審査制説を明確に否定しています。違憲審査制が具体的な訴訟事件を判断する際に付随的にしか行使することができない権限であるとすると、本問の法律は81条に違反する可能性があります。 まだ条約が締結されておらず、具体的な事件も起こっていない段階で憲法判断をすることはできないのではないかということが問題になるのです。 それでは、本問の法律は抽象的違憲審査制説をとらなければ合憲の余地はないのか疑問ですが、今日の解釈上は、本問のような法律は厳密には抽象的違憲審査を定めたものではなく、抽象的違憲審査制「的」な制度であるといわれます。つまり、厳格な条件のもとで裁判所に憲法上の見解をうかがうことは、抽象的違憲審査制になっていない限度で、許されるのではないかということが議論されているのです。このような制度を「勧告的意見」といいます。おそらく本問の法律も勧告的意見を定めたものでしょう。 勧告的意見のメリットは(1)人権侵害等を事前に防止できる、(2)違憲状態を抑止できることなどがあげられます。デメリットとしては、(1)裁判所が不当な政治権力に巻き込まれやすい、(2)立法権に事実上の圧力を加えることになり、消極的立法権の行使となりうることがあげられます。本問だと、通常は国会が条約締結の承認を行う権限を有しますが、裁判所が事前に違憲判断をすれば事実上国会の立法権に対する圧力にならないかも問題になるでしょう。 ・条約に対する違憲審査の可否 まず、前提として条約は憲法の上位法か下位法かという議論があります。条約優位説と憲法優位説の対立です。条約優位説に立てば、当然条約には違憲審査はおよびません。したがって、本問は違憲です。 では、憲法優位説に立つとどうでしょうか。憲法優位説の中でも条約に違憲審査が及ぶかについては学説が対立します。 肯定説は以下のような論拠で違憲審査が条約に及ぶとします。 (1)条約によって、国民の権利・自由が規制される可能性があり、基本的人権を確保するため条約を違憲審査の対象とすべきである。 (2)肯定説であっても、違憲審査の場において問題となるのは、いわゆる自動執行力のある条約についてはその国内法的効力、自動執行力のない条約についてはそれを実施するための国内法の効力であり、国際法としての条約そのものの効力ではない。したがって、裁判所が条約を違憲であると判断しても、そのことによって条約の国際法的効力が失われるわけではない。 否定説は以下のような論拠で違憲審査が条約には及ばないと考えます。 (1)条約は81条の対象事項として明文条規定がない。 (2)条約は国家間の合意という相手国との関係があり、一国の意思だけでその効力を否定することはできないし、しかも、極めて政治的な場合が多い。 (3)98条1項も条約を列挙していないし、同条2項は国際法規の遵守を強調している。 なお、ご存じのとおり砂川事件(S34.12.16)では条約に対する違憲審査が可能であることを前提としております。

146husouzai
質問者

お礼

ありがとうございました。 「勧告的意見の合憲性」の問題は、私はあまりよく聞いたことがなかったので大変勉強になりました。 憲法優位説を前提としてお話したいと思います。この制度を肯定的に考えるのならば、「最高裁判所の見解を求めることができる。」という「できる」規定となっていることですね。内閣は意見を聞かないこともできるから条約締結権の侵害はないのでしないかという問題があります。また、現行憲法は具体的違憲審査制をとっていますが、立法によって抽象的審査権を付与することは許されています。条約も同じように考えることは可能ではないでしょうか。 そして、mariwana様がおっしゃっるように、勧告的意見を設けるデメリットもありまけれども、法の支配を実現するという意味でメリットの方が多いように思われますから、合憲という形にもなりますよね。どうなのでしょうか。

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