映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」

質問

映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」について質問があります。
何故、主人公がアスペルガー症候群と言う設定にしたのでしょうか？

ネットで調べても、主人公をアスペルガー症候群にした理由や、
何故、主人公をアスペルガー症候群と言う設定にしたのかと
言う解説が載っているサイトが見つかりませんでした。

単に、911テロの悲劇を描きたいのであれば、健常児でも良かった思いますし、
また片親を亡くすと言う悲劇を誇張したいのなら、
主人公を知的障害や、知的障害を伴う自閉症、ダウン症にしても良かったと思います。

回答No.1

ucok

「主人公をアスペルガー症候群と言う設定にした」かどうかは、個人的には疑問ですが、とりあえず回答します。

これはもともと、原作小説の作者が、まったく別の作品を書いていてスランプに陥った時に、気晴らしに練り始めた物語でした。ニューヨーカーである作者の実体験に基づいています。その実体験とは、時差ボケで寝ていた時に友人からの電話で起こされたというものから始まります。その友人が「テレビを見ろ。不思議な日になるぞ」と言ったのですが、それが9.11テロでした。それと並行して、作者は「とある子供の声に興味がいった」とのことで、それらのイメージが膨らんでいったようです。原作小説の主なテーマはトラウマです。トラウマやさまざまな精神不安だそうです。以上のようなことが、下記、BackgroundとThemeの項に書いてあります。
http://en.wikipedia.org/wiki/Extremely_Loud_and_Incredibly_Close

なぜアスペルガー症候群かということは資料に明示されてはいませんが、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」（原題も同じ意味）という感覚は、あのテロの衝突や、主人公である少年の雰囲気や、アスペルガー症候群の症状に共通しているイメージではないかと私は感じます。

さて、この原作小説を監督は常々、映画化したいと考えていたそうで、本当は9.11の10周年記念までに完成させたかったようなのですが、間に合いませんでした。こうしたことはInternet Movie Databaseに書いてあります。
http://www.imdb.com/title/tt0477302/trivia?ref_=tt_trv_trv

ちなみに、原作小説は読んでいませんが、私の記憶が正しければ、映画では少年が「アスペルガー症候群」であるという明確な描写はなかったと思います。確かに「どうやら僕はアスペルらしい」みたいなセリフがあったような気もしますが、「アスペルっぽい」という言い方は、当時の米国で、こういうエキセントリックな人に対して一般的に使われていました。

この映画がアスペルガー症候群の描写として不適切だという意見が、少なくとも上記サイト上にはありますが、「アスペルガー」に特化して語りだすと、確かに、そういう意見も出てくるでしょう。しかし、これを「アスペルガーの見本」ではなく「不安定な主人公」というふうに捉えると、自分や身近な人に似ていると感じて共感する人は少なくなく、こうした不安定な主人公を癒しへと導き、また、導き合う、さまざまな登場人物に共感をおぼえることができます。この映画の意義はむしろ、そういうところにあるのではないかと私は本編を観た時に感じました。9.11とかアスペル（っぽさ）は、小道具に過ぎないと思います。

お礼

丁寧な回答をありがとうございました