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肖像権の行使範囲について教えて下さい。

noname#1455の回答

noname#1455
noname#1455
回答No.4

 結論的には、ケース・バイ・ケースとしかいえません。申し訳ありません。 1 肖像権の法的根拠  現行法上、「肖像権」を定義した法令の明文の規定は存在しません。  しかし、最高裁昭和44年12月24日判決(無許可デモを指導したとして起訴された事案)は、警察権等の国家権力の行使に対する個人の私生活上の自由(憲法13条)の一内容として、何人も、その承諾なしにみだりにその容貌等を撮影されない自由を有しており、警察官が正当な理由もないのに個人の容貌等を撮影することは同条の趣旨に反し許されない旨判示し、容貌等をみだりに撮影されない法的利益(肖像権、と略称します。)が存在することを認めました。  そして、shoyosiさんがNo.3のご回答でご引用の裁判例などにより、肖像権が、国家権力との関係(*1)だけでなく、私人間においても保護されるべき法的利益であることが確立されてきました(私人による私人の容貌等の写真撮影について、東京地裁昭和49年6月27日判決など)。 2 肖像権と表現の自由との調整(違法性・故意過失)  他方、表現の自由(憲法21条1項)には、芸術としての表現活動も含まれると解されています。例えば、富山地裁平成10年12月16日判決は、表現の自由には芸術上の表現活動の自由も含まれ、芸術家は芸術作品を製作して発表し、他人に鑑賞してもらう自由を有する旨判示しています。  そうすると、芸術としての個人の容貌等の写真撮影によって、肖像権と表現の自由と(*2)が衝突することになり、両者のいずれを優先させるのか、という問題が浮上してきます。これが、肖像権をめぐる議論の核心です。  ところで、自由な言論は民主主義社会の根幹であることから、表現の自由は、他の人権に優先して保障されると解されています(表現の自由の優越的地位)。  この優越的地位について、東京高裁平成5年11月24日判決は、表現の自由の行使として相当と認められる範囲内の行為(*3)によって他人の肖像権を侵害しても違法性が阻却される(=肖像権侵害であるが、例外的に違法ではない)が、ただ単に個人的な興味を満たすために他人の肖像に関する情報を伝達したとか、表現内容が表現目的との関係で不当なものであるというような場合には、違法性が阻却されない旨判示しています。  私見ですが、oni_ocさんがお写真を発表されることが「表現の自由の行使として相当」か否かは、撮影時の状況、写真の題材を表現する際に被撮影者が映り込む必然性、画面に占める被撮影者の映像の割合、被撮影者の姿態、予定される発表態様、撮影者(=oni_ocさん)が被撮影者の肖像権保護のために払った配慮の有無・程度など、諸般の事情を総合考慮して、ケース・バイ・ケースに判断されることになると考えます(民法709条は、不法行為の成立要件として「故意又は過失」をも要求していますが、故意過失の存否の判断は、上記の相当性判断に包摂されると思われます。)。 3 慰謝料の額  慰藉料の額は、裁判所の裁量により、公平の観念に従い、諸般の事情を総合考慮して定められます(最高裁昭和56年10月8日判決など)。そして、ここにいう「諸般の事情」の中心となるのは、上記2の違法性及び故意過失の判断要素となる事情群であると思われます。  それゆえ、oni_ocさんが被撮影者の肖像権に対して相当の配慮を払っておられるかぎり、損害賠償責任を負わされることはまず考えられないし、仮に負わされたとしても、それが高額になることも考え難いと考えます。  なお、東京高裁平成8年3月19日決定(東高民報47巻1~12号10頁)が、写真集の出版差止めの仮処分について判示しているようです。  また、shoyosiさんがNo.3のご回答でご引用の参考文献のほか、拙答の引用裁判例の評釈(『判例マスター』などの判例検索システムにより検索可能です。)をご覧になれば、ご検討の手がかりとしていただけるのではないかと思います。  以上、ご参考になれば幸いです。      ---------------- *1 憲法上の人権は、原則として国家権力との関係でのみ保障される(=私人が憲法上の「人権」を「侵害」しても、直ちに違憲・違法とはいえない)が、「被害者」が被った不快感が「法的利益」の侵害といえるか(=不法行為責任(民法709条)等を「加害者」に負わせてまで保護するのか、現時点では道徳上の問題として裁判所は介入しないこととするのか)を考える際に、その「利益」が憲法上の人権であることを考慮に入れるべきであると解されています(間接効力説・最高裁昭和48年12月12日判決など)。 *2 それぞれ、「肖像権を背景とする利益」、「表現の自由を背景とする利益」などと表現した方がよいのでしょうが、煩雑ですので、略称させていただきます。 *3 東京高裁は、「表現の自由の行使として相当」と認められる要件として、 ・ その表現行為が公共の利害に関する事項に係り ・ 専ら公益を図る目的でなされ ・ 公表された内容が右の表現目的に照らして相当なものである ことを要する旨判示しています。「公共の利害」や「公益」といった表現が用いられていますが、事案は、護送車の窓から見える原告(「ロス疑惑」の犯人とされた方です。)の容貌を「フォーカス」誌が撮影、掲載したというもので、上記の要件定立(刑法230条の2ご参照)にあたって、芸術上の表現活動は念頭に置かれていないと思われます。

参考URL:
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=172804
noname#8665
質問者

お礼

ひさしぶりに御回答頂き少々驚いております。 すっかり、忘れ去られている回答であるかと思っておりましたので。 justiniani様、詳細な御回答ありがとうございます。 熟読させて頂いた結果、明確な法的判断基準は成立していないということだと理解しました。大意はそういうことでよろしいのでしょうか。 >そうすると、芸術としての個人の容貌等の写真撮影によって、 >肖像権と表現の自由と(*2)が衝突することになり、 >両者のいずれを優先させるのか、という問題が浮上してきます。 >これが、肖像権をめぐる議論の核心です。 まさしくそのとおりですね。 しかし、これはその後の >*3 東京高裁は、「表現の自由の行使として相当」と認められる要件として、 >・ その表現行為が公共の利害に関する事項に係り >・ 専ら公益を図る目的でなされ >・ 公表された内容が右の表現目的に照らして相当なものである から推察すれば、作品の完成度、またはその評価などとは一切関係なさそうに思われます。 御指摘のとおり、 >芸術上の表現活動は念頭に置かれていないと思われます。 というところでしょう。 正直なところ、表現としての強度、完成度の高さにより、 「公益」を満たすこともあり得るとは思うのですが、いかんせんこのあたりは個人によって評価軸がバラバラでしょうから、法的根拠または判断基準にするにはやや弱すぎると思われます。 となれば、結局のところ、これはもう法律とかなんとかって話ではあり得ませんが、 被撮影者の不快にならないような写真であれば裁判はおこされないので、 不快にならないような対処をしておけばよろしい、ということに落ち着くんでしょうか。 あと、お分かりになればで結構ですが、誰かの所有になる建築物を無許可で撮影した場合、やはり法的に問題の生じることになり得ましょうか? こういうこと考えだすと、写真を撮って、訴えられる可能性がゼロなケースというのは稀なケースであるように思われてきて、写真撮影ということが違法と背中合わせな行為に思われてしまいます。難しい問題ですね。 御回答ありがとうございました。

noname#8665
質問者

補足

失礼しました。建築物の件に関しましては参考URLに書いてありましたね。 となると、お店の前で写真を撮って、被害を申し立てられたりした場合にはどのような法的違反に関わる可能性が出てきましょうか?

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