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『第三の男』の背景&シェークスピアとディケンズの関係について。

ojiqの回答

  • ojiq
  • ベストアンサー率41% (121/291)
回答No.1

 「第三の男」は、グレアム・グリーンと監督のキャロル・リードによって、シナリオが作られ、その後グレアム・グリーンによって小説に書き直されたものらしい。映画でのあの印象的なラスト・シーンは、キャロル・リードが作り出したものであり、グレアム・グリーンは、アンナ〔アリダ・ヴァリ〕とホリー・マーチンス〔ジョセフ・コットン〕が仲良く腕を組んで歩いていくという終わり方にしたかったようだ。従って、グリーンがハリー・ライムをどう捉えていたかということになると、中間小説家ホリー・マーチンスの「良識」と変わらず、単なる悪、四カ国共同管理という矛盾したウィーンの戦後社会に咲いたあだ花として描いたという印象を私は持つ。グリーンにとっては、「第三の男」は、簡単な映画用のストーリーほどの意味しかなく、それを見事な映像として造型したのはキャロル・リードの功績とすべきなのだろう。リードの捉え方から考えるなら、ホリー・マーチンスの庶民的な常識は、ハリー・ライムを裏切ることによって、アンナから強烈なしっぺ返しを受ける。極めて戦後的な悪を代表するような男であっても、女はそれが好きな相手であれば許すし、友情を踏みにじるような男はどんな善人であっても許さないのである。つまり、女とは感情に左右される動物だということである。しかし、どう観ても、「第三の男」のオーソン・ウェルズはかっこいいのであり、ジョセフ・コットンはかっこ悪い。リードもまた、感情に揺さぶられる人間だったと言うしかない。  ディケンズについてはよく知りません。私が調べた限りでは映画化された作品は9本あります。「オリヴァ・ツイスト」〔1948〕「二都物語」〔1957〕「オリバー!」〔1968〕「親友」「可愛いドリイ」「悪魔と寵児」〔1946〕「大いなる遺産」〔1946、1997〕「さすらいの旅路」〔1970〕がそれです。この中で、戦前のサイレント作品が「親友」「可愛いドリイ」で、その他についても、最近の作品は余りありません〔ちなみに「オリバー!」はキャロル・リードが監督したものです〕。シェークスピアの作品がいまだに数多く映画化されているのとは好対照だと思いますが、この9本の中で私が観た「オリヴァ・ツイスト」と「大いなる遺産」〔1946の方〕はとてもいい映画でした。最近のリメーク流行りの中では、もっと注目されていい作家だと思います。ご質問からはかなりそれました。失礼致しました。  グレアム・グリーンの言葉「この物語を作り出すについては、キャロル・リードと私とが密接に協力した。一日中、絨毯の上を歩き回り、お互いにシーンを演ってみたりした。われわれの相談には、第三者は誰も加わらなかった。だから、二人の間で徹底的に議論を戦わした点に多大の価値がある。勿論、小説家にとっては、特異な主題を最もよく表現し得るのは小説である。映画や戯曲に書き直すためには、それに必要な幾多の変更を甘受しなければならぬのはやむを得ない。だが、「第三の男」は、単に映画の素材として書き下されたにすぎない。〔中略〕事実、映画はストーリイより秀れている。それは、この場合、映画が、ストーリイの完成した形態だからである」〔「第三の男・落ちた偶像」早川書房〕

momonoki
質問者

お礼

とても詳しく書いていただいてとても感謝しています。 ありがとうございます! 「第三の男」は本当にいいですね。 あの映像は二度と忘れることはなさそうです。 ojiqさんのコメントを見てからもう一度見てみます!

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