>疑問其の壱
2004年10月のダイヤ改正で湘南新宿ラインは全て近郊形E231系になりましたが、その近郊形E231系は
・東北本線小金井の小山車両センター
・東海道本線国府津の国府津車両センター
に配属されています。
ここで湘南新宿ラインに東北-東海道という運行経路を設定するには何ら問題がありませんが、高崎-横須賀という経路は「運行経路(高崎-横須賀)内に使用される車両の車庫が無く、なおかつ運行経路から使用車両の車庫(小金井、国府津)までが遠い(大宮-小金井57.8km、大船-国府津31.2kn)」という特異な状況になってしまいます。
このような状況下で運行を行なおうとすると、毎日車庫から運行経路までの出庫送り込みや入庫戻しの列車を多数設定しなければならず、また、ダイヤが乱れた際に、運転途中打ち切りの入庫等の運行調整が非常にやりづらくなります。
湘南新宿ラインは多くの路線にまたがって走るため、他線の影響を非常に受けやすい弱点があります。ただでさえ運行管理が面倒な路線に車両管理までもが面倒になるような上記のような状況は、運行側としてもメリットが無い割にデメリットばかりが大きい為、高崎-横須賀という経路は設定されていないのだと思われます(2004年12月31日から2005年1月1日にかけて、年末年始の終夜運転限定で試験的に運行されたことがあるが、その後は運行されなかった)。
>疑問其の弐
湘南新宿ライン横須賀線ルートは、2004年10月改正までは横須賀駅・久里浜駅までE217系による直通の列車もありましたが、E231系化に伴い、直通は廃止されています。
直通が無くなった理由は以下のようなものかと。
その1:田浦駅問題
田浦駅はホームが9両と3/4分しかないため、E231系を入れるには両方の先頭車に1ドアカット機能の追加が必要。小山所属のE231系全部を改造すると経費がかかり、かといって一部編成のみ改造すると、運用を分けなければならず、編成の互換性が低下する(未改造編成は横須賀線運用に使用できない)等のデメリットが発生する。
その2:逗子駅電留線の問題
逗子駅の付属編成用留置線は全部で7本ありますが、うち5本は8連(4連×2本)、2本が12連収容可能です。
E231系付属編成は5連なので、8連用留置線には1本しか入れられないうえに、E217系とは留置線を分けなければならず(混じって入れると、ダイヤが乱れた時に邪魔な車両がいて肝心の編成が出せない、という事態に陥る)、収容効率が悪くなります。
昼間の逗子駅留置線は、横須賀線E217系付属編成の折り返し待機や「昼寝」に使用されていることが多く、それらの編成が8連用留置線に入っていると、有効長不足でE231系付属編成はそこには入れません。
また、E231系基本編成を逗子止まりとすると、2本しかない12連用留置線に入れることになりますが、湘南新宿ラインの運転感覚と逗子-久里浜間の所要時間の関係から、ギリギリで見積もっても2本の留置が必要となり、12連用留置線を2本ともを占有してしまうことになります(現実的にはおそらく3本必要で、1本分不足する)。
ちなみに、逗子駅留置線は、終端の先に京浜急行逗子線の築堤があるため、これ以上の延伸と線路増設は不可能。
その3:逗子駅増解結の問題
横須賀線E217系は付属編成が久里浜側に連結されており、逗子駅構内もそれに合わせて久里浜方に留置線が設けてあります。
ところが、湘南新宿ラインE231系は付属編成が鎌倉(新宿・宇都宮)側に連結されているため、逗子での付属編成の増解結が難しいのです。
下りは、解結後、基本編成が田浦に向けて発車してから付属編成を久里浜方の留置線に回送すればよいのですが、上りの増結をどのようにするか問題になります。
昔、113系投入前の横須賀線は東京側に付属編成が連結されていましたが(湘南新宿ラインE231系と同じ編成形態)、その際は以下のように東京側に増結を行なっていました。
1.上り先行列車が発車
2.付属編成を久里浜方の留置線から出し、東京方の引き上げ線(今は現存せず)に退避
3.基本編成到着
4.付属編成を東京方引き上げ線から出し、基本編成に増結
5.発車
このようなことをやっていたのですが、増発して運転間隔が短くなると、これではとても間に合わないことが判明した為、現在のような久里浜側連結に変更された経緯があります。
現在の逗子駅東京側は、沿線に住宅が立ち並んでいる為、複数の留置線はおろか、引き上げ線すら設置不可能です(やろうと思えばできるが、立ち退き費用等かなりの建設費と立ち退き交渉で相当な時間がかかる)。
また、付属編成を先にホームに入れておき、そこに久里浜から来た基本編成を追突させるように連結するという方法(東京駅の成田エクスプレスと同じやり方)もありますが、これは安全確保のために連結するまでに非常に時間がかかるうえ、万が一のブレーキ故障による事故等も考慮すると、積極的には採用しづらい方法です。
なお、基本編成を逗子止まりとすればこの増解結問題は解消されますが、今度は2.で取り上げた留置線不足の問題が出てきます。
とまあ、長くなりましたが、以上のような諸要因(八方塞がり?)により湘南新宿ライン付属編成の増解結はかなりの難問であり、そのため湘南新宿ラインは逗子止まりなのであろうと思われます。
お礼
ご回答頂き有難うございます。 「基本編成のみなら直通できる」という考え自体が、 大きな誤りだったのですね。