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「ロータリーディーゼル」エンジンの可能性

noname#2748の回答

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noname#2748
noname#2748
回答No.1

ヴァンケルロータリーのディーゼル化自体は可能ですが、決して低燃費(熱効率の良い)エンジンや高回転のディーゼルエンジンにはなり得ないと思います。 軽油を燃料とするディーゼルエンジンの回転数がガソリンエンジンよりも低いのは何も、エンジン内部の往復運動を行う部分が重く、高回転向きでないせいだけではありません。断熱圧縮により高温高圧になった空気の中に燃料を噴射し、自己着火により燃焼させるという燃焼方式自体に問題があり、高回転化が難しいのです。それは、燃焼を開始するときの燃料の性状に由来することですが、ディーゼルでは燃焼開始時点での燃焼は霧化された状態で存在しますが、この時点ではまだ燃料は液体の状態で空気と十分に混合してはいません。その後燃焼室の中で燃料の粒子の外部から徐々に気化し、空気と混合し燃焼に移ります。ガソリンと比べ軽油は気化しにくく、微細かしにくい(ガソリンより粘性が高く、引火点が高い)燃料ですので燃焼自体に時間がかかるのです。GDIなどのガソリンエンジンでは筒内噴射方式であるため、ディーゼル同様燃料と空気が混合するのは燃焼室内ですが、ガソリンが気化しやすく微細な霧にしやすいので問題がないのです。また、ロータリーエンジンのようにローターの移動がポートを開閉することによる吸排気方式では高い圧縮比を得るためには吸排気の時間を短くしなければならず、これも高回転化するには極めて不利な要因です。 低燃費があまり望めない原因は、ロータリーエンジンの燃焼室がローターハウジングとローターで形成される空間であり、エンジンの回転とともに移動することに起因することによる物が大きいでしょう。これは即ち、燃焼によって形成された火炎が広い面積に渡り移動しながら接触することを意味し、燃焼によって発生した熱の逃げ(動力にならず逃げてしまう)が多いことを意味します。高効率のエンジン(高出力ではないことに注意)の条件は如何に外部に熱を逃がすことなく利用するかにかかっていると言っても過言ではないでしょう。従って燃焼ガスに接触する面積はできるだけ少なくすることが望ましいのです。これを数値的にあらわす手段としてS/V比という物がありますが、これは燃焼室面積と燃焼室容積の比率で、一般にこの比率が大きいほど熱の逃げが少なくなると考えてよいでしょう。この点でひとつの燃焼室に注目した場合、一回の燃焼でローターハウジング全周を移動するロータリーエンジンは不利なのです。熱効率(燃費の良い)エンジンの代表してはタンカーなどに使用される超大型の2ストロークディーゼルエンジン(オートバイのようなピストンバルブではなく4ストロークのようなバルブ機構を排気弁にのみ使用しています)が上げられます。この種のではボア(シリンダの直径は)1000mm・ストロークは3000mmなどというものもあります。燃焼により発生した熱を圧力に変え、その圧力をできるだけ最後まで利用しようとした結果、ストロークが非常に大きなエンジンになったわけですが。このようなエンジンの熱効率は優に50%を超えます ロータリー&ディーゼルといった発想がなかったわけではなくロータリーの生みの親であるヴァンケル社でも研究・試作は行われていました。ただ、やはり結果的に見るものがなかったようです。まぁ少なくともロータリーディーゼルが実現すれば、あの不快な振動からは開放されるかもしれませんが、振動をキャンセルする方法は他にもあり、遥かに安価な方法をとることができるでしょう。 ロータリーに不利な条件ばかりを挙げたのアンチロータリー派の意見ととられるといけないので最後に書き加えます。ロータリーエンジン自体の素晴らしさはよく理解しているつもりです。素晴らしくシンプルなメカニズムで軽量・コンパクトでありながら高い出力を得られる点や完全な円運動ではないまでも、レシプロエンジンのようなピストンの停止・反転という非常に大きな慣性モーメントの変化が起こらないなど列挙に暇がないことも事実です。できるだけ軽く、しかも高出力をえる容積型熱機関(ガスタービンやジェットエンジンなどを含めるとそちらのほうが上ですが、これらは速度型熱機関であり、その特性上ある一定の回転数以外では極端に効率が低くなり、パワーも出ないので加速減速を繰り返す自動車用には不向きで、もっぱら船舶や。航空機・定置用のものです)としてはロータリーエンジンは最有力であるといえるでしょう。

hyperbird
質問者

お礼

前回に引き続き、詳細なご解説を頂き,ありがとうございます。 プロの方の解説を読んでみて、エンジンの奥の深さを感じます。 なかなか思いつきだけでは簡単にはいきそうにもないことがわかりました。 これからもよろしくお願いします。

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