WAIS-IIIの検査結果について

質問

いつもお世話になります。

先日受けたWAIS-IIIの検査結果について、質問させてください。
病院の勧めでWAIS-IIIを受けましたが、文章でもらった傾向を読んだだけでは
どのように対処していけば良いか分からず、カウンセラーの方に尋ねてみたところ
WAIS-IIIの結果を見てないので後で見ておきます・・・と言われました。

結果ですが下記のようになります。

言語性IQ　104
動作性IQ　117
全検査IQ　111
言語理解　93
知覚統合　116
作動記憶　111
処理速度　97

長年通院を続けている病院ですので、ある程度の信頼はあるのですが
先生やカウンセラーからWAIS-IIIの結果についての説明はほとんどなく・・・

WAIS-IIIだけでは判断できないとは思いますが、普段の生活において
生き辛いと感じてることが多く、仕事上でも困ることがあり、日々とても混乱しています。
検査結果から何かしらの障害の可能性はあるのでしょうか。

何かお知恵をいただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。

回答No.1

vzb04330

臨床心理士です。

結果を文書で受け取っていらっしゃるということですから、基本的には、その病院で検査を実施してくださった心理士の方に、お分かりになりにくいところについて、直接お聞きになるのがベストです。

「先生」というのは主治医をさしていらっしゃるかと思いますが、精神科医であっても、知能検査の結果を十分に読み取ることができる方は、かなり限られると思います。

また、検査結果の解釈につきましては、本来は質問者様の状態、検査を受けられたときの観察所見、これまでの経過などを照らし合わせて総合的に判断することが必要となります。

それ故、最初に書きましたように、検査を実施した心理士にご確認になるのが、もっともよろしいということになります。

ここで、数値的な結果だけを拝見して、それから考えられることを書くことも可能ですが、あくまでも質問者様について、WAIS-IIIの知能指数と、群指数の得点から推定されることになります。
この点をまずは、よくご理解ください。
また、WAIS-IIIを受検されたご事情が分かりませんし、受検された際の年齢も分かりませんので、言語性IQと動作性IQとの比較や、群指数（言語理解～処理速度の4つの指標）の間の比較は、全年齢の平均で行ってみました。

以下の記述は、あくまでもご参考までに、という意味でお読みください。

1．知能水準
WAIS-IIIのIQ（知能指数）は、ある年齢集団の中で平均的な成績を取ったときに、IQ=100になるよう設定されています（統計学的には、標準得点といいます。群指数も同様です）。
また、IQ=90～109が、「平均」と判断され、この範囲に50％の人たちが含まれるように作られています（これも、群指数についても共通します）。

質問者様のFIQから見た、全体的な知能水準は、「平均の上」といえます（誤差範囲を考えますと、「平均}から「平均の上」に含まれます。本来は、誤差範囲を考慮して説明する必要がありますが、煩雑になりますので、以下の記述では、割愛します）。

また、言語性IQ (104）は「平均」、動作性IQ（117）は「平均の上」になります。

したがって、IQから見たとき、質問者様の知能の高さは、「平均」か、そのやや上のレベルにあると考えられます。

なお、最近の理論的、実証的研究の進歩で、言語性IQ・動作性IQという区分には、意味がないことが分かってきて、WAIS-IIIの次期バージョン(WAIS-IV)では廃止されると思われます。
実際、児童用のWISC-IVでは、廃止されました。
それ故、ここでは、言語性IQ・動作性IQについての説明はこれ以上は控えます。

2．群指数の特徴
言語理解以下、4つの群指数とも、「平均」または「平均の上」と判断されます。
したがって、質問者様の知的な能力は、IQから見ても、群指数という、IQよりはやや細かい個別能力の面から見ても、いずれも「平均」かそれ以上のレベルにあると考えて、間違いはないでしょう。

しかし、群指数の間で、差があるかどうかを検討してみますと、統計学的な有意差(統計学的に見て、意味のある差を有意差と呼びます。数値の間に違いがあっても、有意差が認められないと、そこには意味のある差はないと考えます)。

質問者様の場合、知覚統合（116）がもっとも高く、次いで、作動記憶（111）でした。
この2つの間には、有意差は認められません。

3番目に高いのは、処理速度(97）で、低かったのは言語理解（93）でした。
この2つの間には、有意差はありません。

高い方の2つ(知覚統合と、作動記憶)と、低い方の2つ(処理速度と、言語理解)との間には、統計学的にみて、5％水準で有意差が認められました(5％水準の有意差というのは、差がない確率が5％未満であることを意味します。つまり、5％未満であるというのは、差がないということはほとんど考えられないとなります）。

知覚統合vs.処理速度、作動記憶vs.言語理解、知覚統合vs.言語理解の、3つの組合せの間にも、それぞれ5％水準で有意差がありました。

群指数の比較をまとめますと、上にも書きましたように、知覚統合・作動記憶という高い能力と、それに比べれば低い(ただし、一般的には「平均」的な能力はあります)処理速度・言語理解とに分かれたとなります。
これは、質問者様の個人の中での能力の差ということで、能力の「個人内差」と呼ばれるものです。
いわゆる「健常者」や、「定型発達者」という方々でも、多少の差は存在しますので、これだけで何か、障害があるということにはなりません。

しかしながら、群指数の間で、有意差が認められたということは、質問者様の個人内差は、アンバランスと呼べるくらいのものがあることを意味します。
具体的にはお書きになっていませんが、これが、「普段の生活において生き辛いと感じてることが多く、仕事上でも困ることがあり、日々とても混乱しています」ということの背景にあると考えられます。

群指数は、次のような能力を測定していますので、高いものは、質問者様ご自身も得意なところであり、低いものは、質問者様としては苦手な部分と認識していらっしゃると思われます。

・言語理解……言語理解だけではなく、言語表現能力や、言語を使った思考、推理の能力
・知覚統合……視覚や、視覚-運動に基づく、認知や、情報処理、また、非言語的な思考、推理の能力
・作動記憶……入力してきた情報を数秒から数10秒保持しておくととともに、その保持された情報を使って何らかの心理的作業、情報処理を行う能力。とくに聴覚・言語的な情報に基づいて、こういったことを行う能力
・処理速度……心理的な作業、情報の処理を行うスピード。視覚的な情報の短期記憶能力や、作動記憶、書字などの速さも含む

日々の対処として、一般的には、質問者様が得意と考えられる、知覚統合や、作動記憶の能力を活かすことをまず、お考えください（長所活用型のアプローチといいます）。

今回のように数値的な結果を示されますと、どうしても得点が低く、苦手な点に目が向き、「やはり、こういうところダメか」と思いがちですが、それを改善するのは、難しいものがありますので、是非、発想を転換して、まずは、長所を活用する（伸ばすというだけでなく、活かすことをお考えください）。

一方、質問者様としては苦手であったところは、それを鍛える、訓練するという考え方ではなく、長所でカバーすることを考えてみてください。

言語理解については、具体的な言葉で説明してもらう、視覚的な手がかりを利用する、いいたいことがうまく伝わらないことがあれば、周囲の人に言い換えや要約をしてもらいつつ、お互いに確認をしながらコミュニケーションを取る、などが有効でしょう。

処理速度については、たとえば、なるべく時間制限の内作業や活動を選ぶ、どれくらいで1つの作業が終わるか、実際に時間を計ってみて、質問者様のペースに合わせた作業の計画を立てる、時間内にできる作業や、その内容を吟味する、などが考えられます。

なお、知能検査の結果だけでは、発達障害などの診断は下せません。
したがいまして、今回の結果から何かしらの障害の可能性があるかどうかについては、正直に申し上げれば、「分かりません」ということになります。

以上は、最初にも書きましたが、今回お示しの数値的な結果のみから考えられるものですので、これをお読みになり、また、病院で受け取られたWAIS-IIIの説明文書と照らし合わしてご覧になり、お分かりにならない点、疑問な点については、再度、受診され、検査をしてくれた心理士さんと相談してみてください。