最近では旧石器の「ねつ造」(捏造)なんてのもありました。
で,「少し前まではこんなおかしな表記のしかたはされていなかったように思います。…どうして変わってしまったのでしょうか」とのことですが,私の印象ではむしろ逆でして,表外字(常用漢字表に含まれていない字のことをこう呼びます)が前に比べて自由に使われるようになってきたように思われます。
たとえば,「拉致」という言葉がありますが,新聞では「ら致」と書くのが普通でした(例えば「金大中氏ら致」←1974年)。
しかし現在では漢字で書くのが普通です。
ただ,「拉」の字が常用漢字表に入ったわけではないので,一つの記事の中で少なくとも1回(ふつうは初出時)はルビ(振り仮名)を振るか,「拉致(らち)」のようにカッコ内に読みを示しています。以前はカッコ読みが多かったのですが,活字の寸法が大きくなってきた(=字数を減らして書かないといけない)ので,最近はルビを付ける社が増えてきています。
社外原稿(記者以外の人が書いたコラムや小説など)は常用漢字の制約に必ずしもとらわれず,表外字も出てきますので,従来からルビを振っていました。
最近は記者の書いた記事でもルビつきを見かけます。確か最初にルビを全面的に解禁したのは毎日新聞社だったと記憶しています。
中には朝日新聞のように「拉」など一部の文字は特に振り仮名を付けないで(常用漢字と同様に)使っている社もあります。
anko76さんの回答にもありますように,常用漢字の前身は当用漢字ですが,これはかなり制限色が強く,表外字はなるべく使わずカナで書くか言い換えろ,ということでした。
この点に批判が強かったので,1981年制定の常用漢字では,「一般の社会生活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」(常用漢字表前書きより)と,「目安」という文字が入りました。
さらに「この表の運用に当たつては,個々の事情に応じて適切な考慮を加える余地のあるものである」という注意書も加わりました。先程の「拉致」のような各社独自の扱いは,ここに根拠があるとされています。
ただ,適切な考慮をどんどん拡げていって,常用漢字表を無視して紙面を作るわけにはいかないと思います。なぜなら現実問題として,義務教育の国語で学ぶ漢字が,常用漢字1945字だからです。
かといって,便宜的に決めたに過ぎない漢字表にとらわれすぎるのもおかしいし,交ぜ書き(「ら致」のように熟語の一部だけカナで書くこと)はなんといっても読みにくい。かといって,言い換え(「ら致」→「さらう」など)も無理がある。
失踪→蒸発,輿論→世論のように定着してしまった言い換え(書き換え)もありますが,便宜的な漢字表に言葉の言い回しまで左右されるのはおかしいと思います。やや大げさに言えば言語文化の破壊。
とりあえず,「表内字は自由に使い,表外字は初出時ルビ」という方針で,交ぜ書きは極力避けるようにするのがいいのではないかと思っています。
cherry77さん:
>どうやって読み方を調べるんでしょう?
「韓国・朝鮮地名便覧」(日本加除出版)とか「韓国・朝鮮人名仮名表記字典」(ブレーンセンター)といった本がありますし,ハングルが読めれば向こうで出ている漢字辞典が使えますが,一般の読者が調べるのは難しいでしょうね。
ただ,以前は大統領や大臣ぐらいしか韓国語読みがつけられていないことが多かったのですが,最近は他の人についても読みが振ってあることが多くなりました。
お礼
ありがとうございました。大変よくわかりました。 しかし、また疑問がわいてしまいました。この疑問はかなり個人的なものですが。 常用漢字は1981年に制定されたということですが、実は私は1980年生まれなのです。1981年以降に義務教育を受け、常用外漢字も多く目にしているはずの私が先のような疑問を抱いたのはなぜなのでしょう? 我が家で20年以上とり続けている某新聞社の表記法が変わったのでしょうか。調べてみようと思います。