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パラダイムとエピステーメー

ghostbusterの回答

回答No.2

あらっぽくいってしまえば「知の枠組み」というのが共通点。 相違点は「科学的成果の集合」か「歴史的《ア・プリオリ》」か、という点にあるんじゃないかと思うんです。 こういうふうに問題を立てると、かなり見通しがよくなりません? 少なくともわたしはそういう理解の仕方をしています。 まず、パラダイムについて、基本的な点をおさらいしておきましょう。 このあいだのウィーン学団にせよ、あるいはポパーの批判的合理主義にせよ、彼らは科学の発展を、科学的真理がつぎつぎに積み重ねられる、直線的・累積的な過程と考えます。そしてまた、科学と非科学を区別する規準を論理的に確立しようとします。 それに対してクーンは科学の歴史のなかに劇的な転換点がある、と指摘するんです。 たとえばアリストテレスの目的的自然観から、近代科学への転換は、ひとつひとつの事実の積み重ねで形成されるものではなく、劇的な転換、科学革命が起こっている。このときに転換していく「それ」がパラダイムです。 『哲学の木』では、「科学革命」の項を河本オートポイエーシス英夫さん(笑)が書いていらっしゃるんですが、「パラダイムは、研究に手引きをあたえる先行事例の集合であり、ひとつの時代に広く共有されている。通常の科学研究は、先行事例のひとつをさらに増やすことしかできないが、時として事例そのものの集合を組み替えてしまうような画期的な事例が生じることがある。これがパラダイム転換である」(p.155)とまとめてあります。「集合を組み替え」る、という指摘は非常に重要だと思います。 ただ、このパラダイムという概念は使いやすいところがあって、科学を離れて広義に解釈されてきた。そのことから逆に、パラダイムという概念そのものが「台無し」にされた、という指摘が続いていて、この部分はおもしろいですから、ぜひ質問者さんもご一読なさってください。あの辞典はほんとにおもしろくて好きなんですよね(ちょっと高いんですけど)。 さて、エピステーメーに関しては、フーコーの『言葉と物』を読むのがやっぱり一番いい(クーンだって『科学革命』を読んだのがいいんでしょうが、わたしは読んでないので)。 ----(p.20)--- …いかなるところから出発して認識と理論が可能となったか、どのような秩序の空間にしたがって認識と理論が可能となったか、どのような秩序の空間にしたがって知が構成されたか、あるいはただちにほどかれ消え去るためだったかもしれないが、どのような歴史的《ア・プリオリ》を下地とし、どのような実定性の本領内で、観念があらわれ、学問が構成され、経験が哲学として反省され、合理性が形成されるということが可能だったのか、そのようなことをあらためて見きわめようとする研究なのである。 だからここでは認識というものを、結局のところ今日のわれわれの学問の姿がそこに認められるであろうような、客観性をめざしての進歩のうちに描きだすことが問題ではない。あきらかにしようとしているのは、認識論的な場、すなわち、合理的価値や客観的形態に依拠するすべての規準のそとにあるものとしての認識が、そこにおのれの実定性の根をおろし、そうやってひとつの歴史、みずからの漸次的完成化の歴史ではなく、むしろみずからの可能性の条件の歴史といえる、ひとつの歴史を明確化する、そうした場としての《エピステーメー》なのである。 ---- 「認識と理論」を可能にするためには、認識に先立って、ひとつの知の枠組みが必要です。それをフーコーはギリシア語で「知」を意味するエピステーメーと呼ぶのですが、これは学問の基盤にあって、学問を可能にする条件である。その可能性の条件の歴史をフーコーは、エピステーメー、あるいは「歴史的《ア・プリオリ》」と言い換えるのです。 この程度ならわかっている、というのでしたら、また補足ください(笑)。 わたしの能力の及ぶ限り、おつきあいします。

noname#68627
質問者

補足

つい先日お世話になったばかりだと思ったらまたまたお世話になる羽目に。 決して暇つぶしで質問しているわけではないのですが、どうもこれは癖になりそうです(笑)。 それで補足というほどの補足でもないのですが、 >その可能性の条件の歴史をフーコーは、エピステーメー、あるいは「歴史的《ア・プリオリ》」と言い換えるのです。 フーコーはカントのアプリオリの概念をつかっている、と中山さんの本にかいてありましたが、この知の枠組みと関連して「制度」とか「暗黙知」という言葉で何か思いつかれたことがありましたらお教えいただけますでしょうか。

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