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コンヴェンション論について
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>ヒュームのコンヴェンション論についてどういうものかロックとホップズの社会契約論と比較して説明していただけると助かります。 ⇒以下のとおりお答えします。 ホップズ、ロックおよびヒュームは3人ともイギリスの経験論哲学者で、社会政治問題に関連する人間学(社会契約説)を展開した。「社会契約説」の歴史的意義として、王権神授説に対する市民階級の理論的武器になった、ということができる。 以下、「社会契約説」(通常、「社会契約論」とは呼ばないようです)を中心に、各人の業績を順に見ることとします。 ホップズの社会契約説は、「万人の万人に対する闘争状態」から脱出するため、個人的人間が社会契約を媒介として絶対国家を形成するものとする。彼は、「リヴァイアサン」を著して国家を巨大な怪獣にたとえ、社会契約に国家の起源を求めつつも、国家主権への絶対服従を説いた。他方、功利主義を説くなど、社会における人間の倫理的権利を主張した。国権への絶対服従は、絶対王権から市民主権への移行に先立って王族・貴族と新興市民階級の対立があったのでその狭間に揺れていた、つまり、新しい時代への移行期の苦悩を示しているのかも知れない。しかし、それはあっても、個人個人の水平的関係としての社会契約がはじめて政治思想上に現われたという意味で、彼の所説は極めて重要である。 ロックの場合、自然状態は本来平和状態であると考えるが、それでも個人の生命・自由・財産等の自然権が保証されているわけではない。これを侵されないために、契約によって、自然権の侵犯者に対する処罰権を政府に委譲するが、自然権は委譲しない。すなわち、彼においては、ホップズと異なり、信託の範囲を逸脱する統治者に対しては反抗権を行使できる。この意味で彼の契約説は個人主義的で、立憲主義的である。こうして彼は権力分立を説き、名誉革命の理論的骨子として新興市民階級の政治的理念を提供した。彼の理論はアメリカ独立戦争・フランス革命の思想に大きな影響を与え、自然法の規範性を重んじたフランス啓蒙思想の先駆者となった。さらに、彼の労働価値説がアダム・スミスの先駆となっている。また、彼の「人間知性論」はフランス啓蒙思想に多大な影響を与え、その影響下にルソーも同じテーマの「社会契約論」(民約論)を著している。 ヒュームは、外的自然を考察する自然哲学にならって人間の自然本性を現象学的に考察した。これは、従来神学の見地からとらえられた人間学を、その神学から解放し、経験的・世俗的・地上的人間学として形成しようとしたものである。具体的に換言すれば、ニュートンが大自然に即してこれを観察し、自然法則(万有引力)を発見してこれに従ったように、ヒュームは第二の自然すなわち人間社会の現実に即してこれを観察し、人間社会の法則(コンヴェンション)を挙げてこれを尊重する人間学を展開した、ということである。こうした市民的人間学の方向はロックから始められたもので、ロックの段階では禁欲的傾向が強かったが、ヒュームはギリシャ・ローマのヒューマニズム(人文主義)を導入し、神との関わりを離れて、現実に生きる人間の学を目指した。彼はまた、道徳論・政治論・経済論などの執筆によって哲学的理性を拡充した。それによれば、道徳的善悪の判別は、理性によるのでなく、感情によるという。その国家・政治・法律論は、「公共の利害に関する一般的な感覚・規約」であるコンヴェンションに基づいて展開される。コンヴェンションとは、約束によらない暗黙の合意、すなわち、慣習を意味する。国家・社会の成立は契約によるのでなく、コンヴェンションによる。社会契約のための前提としてコンヴェンションがあり、これによって契約が可能になるとする。このような考察は、国家契約説を人間本性の感情の地層にまで深め、掘り下げたものといえる。 (まとめ)冒頭で触れたように、ヒュームはホップズ、ロックを引き継いでイギリス経験論哲学の観点に立って人間学(社会契約説)、コンヴェンション論を展開した。それは、神の裾野から人間の社会・個人が自立する一大契機になった、といえるだろう。
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