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『悲しき熱帯』はなぜ「悲しい」のか。

クロード・レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』はなぜ「悲しい」のか。検索すれば、少々情報は得られる(得られた)のですが、ご意見をいただければと思います。昔、翻訳本を読みましたが、あまりわかりませんでした。

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  • amaguappa
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回答No.2

とりあえず原語でのこの形容詞は名詞の前からかかるちょっと特殊な用法で、 悲しいだけでなく、虚しい、みじめな、つまらぬ、くだらぬ、というニュアンスが込められる使用法なのですが、 レヴィ=ストロースが旅を顧みたとき、ひたひたとその身を浸されるような思いがあって、 それは地理と自然から実際に受ける印象と、文明の暗い流れと、人類の夜とでもいうべき始原以前と終末以後、それからちっぽけな個人の一つの人生の時間、 それが行ったり来たりしながら相互に照射し合い、全体と部分とをかき混ぜるような方法で、浸すものと浸されるものとの存在の様式を為さしめているようなところがあるわけですね。 時間的な意味でも空間的な意味でも全体視をもたらすようなものを回避しながら、それでいて全体から指し示されている細部を噛みしめるような、ぎこちなく哀れな、よるべないような存在様態が、近代文明を剥ぎ取ったところの人類に露わに曝け出されるのを、レヴィ=ストロースは感じるのだろうと思うのですね。

ga111
質問者

お礼

ありがとうございます。 構造主義そのものを内含する文化の香り高い高級なご解説です。 Tristes Tropiques、たしかに修飾が逆ですね。 The title literally means The Sad Tropics, but was translated into English by John Russell as A World on the Wane. http://en.wikipedia.org/wiki/Tristes_Tropiques だいたい題の訳が、むずかしいようです。

ga111
質問者

補足

http://www.dogustat.com/?p=1679 >ということで正確に訳すと「Tristes tropiques」は「くたばれ熱帯地方」「アホアホ熱帯地方」「もう来ねえよ南回帰線」の方がニュアンス的に正しい。 これもなかなかの解釈です。でも「アホアホ熱帯地方」では、訳本が売れませんからね。日本の翻訳者の苦悩が伝わってくるコメントですw。 まっ、こういうことを議論すること自体、仕事を(たぶんw)ちゃんとした感傷的気分の著者の罠にはまっている、ともいえるでしょう。、、、えっ、そういうことか。

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その他の回答 (4)

  • amaguappa
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回答No.5

ゴーストパスターさんをお久しぶりに拝見しました。 質問文はなるほど、なぜ邦題は「悲しい」としたのかと読みうるのですね。 わたしはうっかり、レヴィ=ストロースはなぜtristeにしたのかと捉えてしまいました。 邦訳は、「悲しき」で十分にして余りあるとわたしも思いますよ。 たぶん質問者さんも、と、そんな気がしていたのだけれど。

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回答No.4

翻訳をされた川田順造さんが出された本に『「悲しき熱帯」の記憶 レヴィ=ストロースから50年』(2010 中公文庫)という本があります。 この中に、どうしてこのようなタイトルにしたかということが書かれてあります。 「ここでは "tristes" というフランス語には、この形容詞が名詞の前につけられたときの語感として「悲しき」と日本語に直したのでは表しきれないニュアンスがこめられている。日本語の「悲しき」が意味してしまうかもしれない、甘美でさえある情感とはおよそ逆の、いやな、暗い、うんざりするといった感覚だ。この本を和訳したときも、私は題の訳出に窮したが、内容を読めば了解されることなので、表題ではあえて「悲しき」とした。このような留保をつけて「悲しき」という日本語を用いるとして、なぜレヴィ=ストロースにとって、熱帯は悲しかったのか」(p.100-101) ここから、15世紀末にヨーロッパが「発見」した「新世界」が、どのようなものとして受け入れられてきたか、ルソーやヴォルテールなどのとらえ方が簡単に紹介され、多少の差はあっても、16-18世紀のヨーロッパ人にとっては、「夢と不思議と可能性を秘めた別天地」であった、と続きます。 その上で、「西洋文明のけたたましい自己肯定と世界制覇の一世紀を経た二十世紀」にその「新大陸」を訪れたレヴィ=ストロースは、何を見出したのか。 「人類の顔に投げつけられた西洋文明の汚物」(『悲しき熱帯』1977 中公クラシックス I、p47)だった。 ここからは『記憶』を直接引用します。 「レヴィ=ストロースは、若い人類学徒として新世界に赴き、ルソーよりはるかに詳細な知識を「未開」社会について得ることができたのだが、それはほかならぬ西洋世界の進出によって可能になったのであり、同じ過程の別の帰結として彼が向かい合うのは、西洋文明によって直接間接に蹂躙され汚染されたあとの「未開」社会なのである。  そのゆがんだ「未開」の表情の奥に、レヴィ=ストロースは人間としての共感を読みとろうとし、知の次元で「未開人」を復権させようと試みる。その熱意にはまた、新世界に吸い寄せられた旧世界の入植者の末裔たちの、夢と悲惨を極限にまで戯画化したような人生も淀んでいた。」(p.103) この章は「なぜ熱帯は今も悲しいのか」とタイトルがつけられているのですが、やはり、この「悲しい」というタイトルには、川田さんの考えがこめられているように思うんです。 ここではレヴィ=ストロースが訪れた、50年後のナンビクワラ族のようすも描かれています。さきごろ、日本でもヤノマミ族の虐殺が報道されましたけれども、ブラジルのインディオは、一方で保護されながら、資源採掘にからんでの殺戮も行われる、という状況にさらされています。 そういうなか、人類学者というのは、レヴィ=ストロースも含めたかつての人類学者が、「未開」社会の標本や資料を、人類学者の住む社会にもちかえって研究していればよいという状況ではない、その研究対象とされる社会との政治的、倫理的なかかわりのなかで、その成果を、「彼らの」社会にも還元することが求められている、とあります。 そういう考えをもつ人類学者だからこそ、「いやな」、「暗い」、「うんざりする」という、対象を自分から切り離そうとする日本語ではなく、「悲しき」という日本語を当てたのではないか、と思うのです。さらには「アマゾンの森の野蛮人たちよ、機械文明の罠にかかった哀れな獲物よ、柔和で、しかし無力な犠牲者たちよ」(I p.54)と呼びかけたレヴィ=ストロースも、時代を経て、むしろ「悲しい」のだと賛同してくれるのではないかと思うのですが。 実は今日、たまたま川田さんの本を読み終えたんですが、その日にこの質問を目にしたので、これも何かの縁かと思って回答してみました。何らかの参考になれば幸いです。

ga111
質問者

お礼

ありがとうございます。日本語への翻訳者も悩んでいたのですね。

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  • amaguappa
  • ベストアンサー率36% (140/385)
回答No.3

あはっ。おもしろい記事をありがとうございます。 サルトルから遠く、やはりレヴィ=ストロースは気分の人であろうと思います。 禅に通じるような気もしてきました。無ですね、無。 書物全体を纏め上げる題名を付けたのではないでしょう、 書きあげて振り返ったりもしなかったりして。書き出す前に見通しがあるでもなく。 Tristes tropiques、 反省や見通しの作業にうんざりしている無意識を反映して、 気合いで喝を入れた題名に思えてきます。 前にも藪、後ろにも藪、分け入っても分け入っても藪、いまだけが道。 頭韻といえば、それこそtrop という響きがいかにも「ああもうあんまりだ」を含み持つようだと言ってみたりして。 ええ、この書物について何かを見定めて語ることはレヴィ=ストロースの術中にはまることかもしれませんね。 読み終わったらあんまり覚えていなかった、でも印象的なところがあった、というのが最良の感想ではないかと思います。

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noname#194996
noname#194996
回答No.1

そういえば私も昔アマゾンの情報が欲しかったので通読しましたが、なぜ「悲しい」のかは考えませんでしたね。私見では「人間に対して敵対している」とすら言われた大変過酷で危険なアマゾンの自然でけなげに生きているインディオたちのことを悲しいと感じたのではないでしょうか(彼らは文明人によって迫害され奥地へ追いやられたのです)。彼はあとで文明人も、かの地で暮らす「未開人」も、同じ人間としての対等な尊厳をもつと書いていたようです。

ga111
質問者

お礼

ありがとうございます。 「同じ人間としての対等な尊厳をもつ」ことを主張したから、熱帯の住人を哀れんでいるのではないような気がするのですが。深読みかなあ。

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