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遡及処罰の禁止は日本だけ?

以前「遡及処罰」について質問させて頂いた者です。多くの回答者様の意見を参考により深く「日本の遡及処罰の禁止」を理解することができました。ですが、ここでまた新たな疑問が生まれたので、たびたびで申し訳ありませんが質問させて下さい。 上記で述べた「遡及処罰の禁止」というのは日本に限ったことなのでしょうか? 世界一般的にみた時、「遡及処罰の禁止」とはどこの国でも法の大原則として用いられているのでしょうか? 特にアメリカ、カナダ、イギリスではどうなのか知りたいです。 私自身は「遡及処罰の禁止」は民主主義の根幹を成す考えの一つだから、基本的には民主主義国家ならどこでも採用しているとどこかで耳にしたことがあるのですが、実際のところはどうなのでしょうか?  どなたか教えて頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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noname#110938
noname#110938
回答No.4

その以前の質問ってのと思われる質問を見てみたけど、一人しか罪刑法定主義に触れてないのがいやはや恐れ入るね。 遡及処罰の禁止というのは、近代刑法の大原則である「罪刑法定主義」の一内容なんだよ。だからきちんと説明しようってんなら罪刑法定主義の話は避けては通れないね。 罪刑法定主義というのは、簡単に言えば、 行為のときにその行為が犯罪となり、どんな刑罰が科されるかが成文で明確に定めてなければ、その行為を処罰することはできない とする原則ね。 この原則のお蔭で、何がやってはいけない事かそれをやったらどんな罰を受けるか事前に判るからそれ以外はやっても良いということで行動の自由が保障されるってわけね。 これは、遡ればイギリスのマグナカルタにその淵源を見ることができると言われてるんだ。マグナカルタでは租税法律主義(国王は勝手に租税を課すことができない。議会の同意が要るって話)を謳っているだけだけど、この考え方を刑事法に取り入れたのが罪刑法定主義ってわけ。つまり、元々ヨーロッパ発の原理原則なんだ。日本は明治以降の近代化政策でそれを採り入れただけ。つまり日本「だけ」どころか日本は欧米の真似をしたむしろ後発の国なんだな。 この罪刑法定主義は近代欧米諸国の人権宣言の類(フランス人権宣言とかアメリカ独立宣言とか)に採用されてるよ。 そしてここからが重要。 罪刑法定主義は国連で採択した世界人権宣言にも採用されているの。だから国連に加盟している文明国といわれるような国では共通の原則となってるのね。 世界人権宣言には法的拘束力がないから、国内法で罪刑法定主義を採用していなくても国際法上直ちに違法というわけじゃないけど(国際人権規約に罪刑法定主義の規定があるのかどうかは知らない。もしあるなら批准国で罪刑法定主義を採用しないのは条約違反)、いわゆる先進諸国で罪刑法定主義を採用していない国はないと言っていいと思うよ。 仮に採用しなかったりすれば外交圧力が掛かるしね。だってそんな危ない国に自国民を行かせるわけにいかないじゃない。突然、今までなかった法律で捕まるかも知れないんだよ。日本が近代化に当たって法律の整備を急いだのもそのことがあるんだよ。この点について歴史の話だけど、なぜ、幕末の開国時に欧米列強は日本に対して不平等条約で治外法権を認めさせたと思う?ただの力関係じゃないんだよ。当時の日本では近代的な法律がないからどんな裁きをするか判らない、そんな国に自国民を裁かせるなんてわけにいかないからだよ。つまり信用できない国だったの。自国民を守るためには治外法権は必要だったの。だから不平等条約を強制されたって言っても、こと治外法権に関する限り、法律もないような国じゃあしょうがないんだよ(余談だけど、外交特権ですら正確に言えば治外法権ではないからね)。 そこで、不平等条約を改正するための条件として欧米列強は近代的法体系の整備を要求したわけ。つまり、治外法権を単にごり押ししたんじゃない。あくまでも日本という国が法律を整備して信用できるようになるまでは自国民保護には治外法権が必要だっただけなんだよ。ちなみに、この罪刑法定主義との関係で日本が欧米に認められた事件を一つ指摘しとこう。あの大津事件だ。大津事件ではロシアの皇太子(後の最後の皇帝ニコライ2世ね)が襲われたんだけど、時の政府はロシアとの関係悪化を恐れて皇族に対する罪を適用しろと裁判所に言ったのね。だけど、時の大審院院長児島惟謙は、刑法の皇族に対する罪は外国の皇族は含まないとしてこれに断固抵抗したわけ。これは、司法府の行政府からの独立の事例としてよく挙げられるけどその根底にあるのは罪刑法定主義に反する法律適用をしようとした政府と罪刑法定主義の原則を貫いた裁判所って構図なのよ。まあ、この結果、日本もいっぱしの法治国家になったと欧米では評価されたわけなんだけどね。 ところで、 >「遡及処罰の禁止」は民主主義の根幹を成す考えの一つ 必ずしもそうじゃないよ。民主主義というのは単なる代表選出についての方法論でしかないからね。確かに、民選の議会の定める成文の法に基づくという点で関係はあるんだけど、民選の議会の定める法律でも場合によって遡及効を生じることはある(法の一般原則である法律不遡及の原則というのは絶対的ではない)んで、それが刑罰法規では絶対的に禁止となるのは民主主義と論理必然の関係にはないよ。 罪刑法定主義はあくまでも自由主義的原理なの。先に述べたように、「人の行動の自由」を担保するために罪刑法定主義があるの。だから民主主義でなくても採用は可能。ただ、民主主義も自由主義を実現する方法の一つだから、実際上、相互に関係してはいるけどね。近代民主主義国家での究極の目標は自由主義で民主主義はその手段に過ぎないってことは知っておいて損はない。 ここからは後学のための雑談。 罪刑法定主義の内容というのは一般に、 1.成文法主義 2.刑罰不遡及の原則(=訴求処罰の禁止) 3.類推解釈の禁止 4.明確性の原則 5.絶対的不定期刑の禁止 だね。 成文法主義ってのは、慣習刑法の禁止のことで、つまり、罪刑法定主義が「成文で」としているゆえん。 刑罰不遡及原則ってのは、行為時に犯罪でない行為を行為後の法律で犯罪とすることはできないという話。罪刑法定主義が、行為時にその行為を犯罪として規定しなければいけないとしている帰結。 類推解釈の禁止ってのは、行為者に利益になる方は良いんだけど、不利益になるのは罪刑法定主義の「明確に」というところに触れる。そもそも罪刑法定主義の趣旨自体にも抵触する。 明確性の原則も類推解釈の禁止と類似しているけど、こっちはもっと直接的に刑事罰則規定が明確であることを要求している。類推解釈は刑事罰則規定が明確であっても可能だから一応次元が違うのね。 絶対的不定期刑の禁止。これも「明確に」という話だけど、何が犯罪かの問題じゃなくてどんな刑罰がという方の問題。しかも、法定刑(法律の条文に定める一般的な刑)の問題ではなくて宣告刑(実際の事件で裁判所が言い渡す刑)の話ね。絶対的不定期刑というのは要するに、刑期を定めないことね。無期も刑期を定めてないと思うかもしれないけど、あれは終身刑だから(死刑廃止の議論で出てくる終身刑というのは仮釈放なしの無期懲役のことなんだ)。死ぬまでと刑期が決まってる。そうじゃなくて、懲役ということだけを定めて期間を定めないのが絶対的不定期刑。ちなみに、少年法事件では相対的不定期刑(刑の長期と短期を定めて言渡す)刑が採用されてる。なお、実際には仮出獄の制度があるから、定期刑と言っても運用上は相対的不定期刑に類似しているのが日本の現状。 ところで余談だけど、尊属殺人罪の廃止は関係ないよ。尊属殺人罪の規定は違憲判決が出た後は運用で適用をしなくなっただけ。だけど、廃止は実に22年後だからね。つまり、廃止前に既に適用をしなくなっていたの。だから、刑の廃止に関する刑法6条の問題とは無関係。まあ「適用」を「適応」とか言っているようではな(よく見かけるけどね。ここでは)。 あと、ロス疑惑で遡及処罰なんて問題になったのか?一事不再理は問題になったけどね。一事不再理と遡及処罰は全然別だよ。 それと、最近話題の時効廃止の議論も、関連付けることはできるけど、罪刑法定主義とは別の話だからね。

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その他の回答 (3)

  • v008
  • ベストアンサー率27% (306/1103)
回答No.3

かつての戦後の軍事裁判では進駐軍はそれを破ったようですね。 右手は握手 左手にはムチ。 礼儀とリップサービスが違うのと同じ。 遡及処罰に近い物は日本でもあるような 無いような  。 アジアの国で中国 北朝鮮 インド イラン モンゴル ベトナム ミャンマー インドネシア どうなんでしょうか?疑問です。

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  • Us-Timoo
  • ベストアンサー率25% (914/3620)
回答No.2

最低でも、アメリカでは日本と同じく合衆国憲法で 刑罰法規不遡及の原則が規定されているようです。 アメリカ合衆国憲法 アメリカ合衆国憲法第1編9節3項及び同10節1項に、 「事後法(ex post facto law)を成立させてはならない」 また、州ごとに定める州法でも遡及処罰に禁止が 制定されている州がたくさんあるようです ロス疑惑で有名だった故・三浦元社長の逮捕に関しても この遡及処罰に当たるのではないかと逮捕時に裁判になりましたよね。

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回答No.1

遡及処罰の禁止は、ご存知かもしれませんが、行為者の利益のためのものであるため、本人に有利になる場合はこの限りではありません。(例えば、行為後に法定刑が軽減された場合、軽い方の刑に処せられる。例としては尊属殺人罪の廃止、犯行時死刑適応年齢の16歳から18歳への引き上げが挙げられる) 当方、刑法には詳しくないのですが、せん越ながら回答させて頂いております。参考にならなかった場合はお許しください<m(__)m> ※補足情報として・・ 「英米法」というのは、「大陸法」に対する概念であって、主にイギリスやアメリカで採用されている法体系を指す概念です。「イギリスの法律とアメリカの法律」という意味ではありません。 イギリスとアメリカ以外にも英米法の国はいくらでも存在します。カナダだってオーストラリアだってニュージーランドだって英米法の国です。実際に、毎日新聞にも、「英米」(これは「イギリスとアメリカ」という意味)と書いてありますが、「英米法」とは書いていません。 百歩譲って、「英米法」を「イギリスの法律とアメリカの法律」という意味だとしても、「時効の概念そのものがない」のはイギリスの話であって、アメリカには存在します。 アメリカでは、イギリスの影響のもとに、殺人罪に対する時効を廃止しているだけであって、時効という概念そのものは存在します。 実際に、毎日新聞にも「英国には」と書いてあるが、「イギリスとアメリカ」とは書いていません。 以上のように、「時効の概念が存在しない」のは「イギリスの法律」であって、「英米法」にはきちんと時効の概念が存在するようです。

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