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クラシック音楽の古典派とロマン派

Tann3の回答

  • Tann3
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回答No.4

 専門家ではありませんので、一つの意見として。  音楽が一般の市民(とはいっても裕福なブルジョア)に聴かれる「商品」となったは、モーツァルト(1756~1791)の頃以降でしょう(18世紀末)。モーツァルトはお抱え雇い主のザルツブルク大司教と決別して1781年からウィーンでフリーの音楽家になりますし、ハイドン(1732~1809)も前半生は貴族のお抱えですが、後半生で自立自営の作曲家として興行師ザロモンとタイアップしてロンドンの演奏会向けの交響曲などを作曲しています(いわゆるザロモンセット、交響曲第93番~104番)。  世は、王侯貴族の支配から、折からの産業革命で勢力を増したブルジョアの時代に移りつつあり、まさしく1789年にはフランス革命が起こります。音楽のマーケットは、急速に王侯貴族から裕福な市民へと移って行きます。  この音楽マーケットの変化が、商品としての音楽の「古典派」から「ロマン派」への移行だと思います。「古典派」は、それまでの王侯貴族の音楽をそのまま商品化したもので、趣味は良いが、単純でちょっと退屈。(ちなみに、古典派以前の音楽は、あくまで王侯貴族あるいは教会の独占物で一般に流布する商品ではなかったため、これといった商品名は付いていない。後世、バロック音楽とか、ロココ音楽と呼ばれてはいますが)  商品化に伴い、一般市民にヒットし、大いに売り上げを稼げる音楽が求められ、派手で、度肝を抜いてあっと言わせる、あるいはお涙頂戴でグッと来る、そういうちょっと奇抜な音楽が求められるようになります。それが「ロマン派」音楽の誕生です。  それに乗っかってヒットした最初がベートーヴェン(1770~1827)でしょう。分類上は「古典派」と言われていますが、交響曲第3番「英雄」Op.55(1804年)以降、ピアノ・ソナタ「熱情」Op.57(1805年、ほとばしる熱情!)、交響曲第5番Op.67(1808年、「運命」はこのように扉を叩く!)、交響曲第6番「田園」Op.68(1808年、標題音楽と嵐の描写!)、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」Op.73(1809年)、交響曲第9番「合唱付き」Op.125(1824年)など、なまじのロマン派以上にロマン的です。ここで「ロマン的」といったのは、万人受けする「喜怒哀楽の感情表現」、大衆にも分かりやすい「標題音楽」や「自然などの描写」という点です。  ベートーヴェンの後半生、つまり1800年頃以降、さらに明確に言えば交響曲第3番「英雄」あたり以降が、いわゆるロマン派の時代かと思います。ベートーヴェン自身や、同時代の人はそんなことを区別したり意識したりはしなかったかもしれませんが、そこには明らかな音楽の質的な変化があります。「古典派」「ロマン派」という呼び名は、後世の人が全体を俯瞰してそう命名した、ということだと思いますが。  この変化は、作曲者の区別というよりは、音楽の内容そのものの区別です。ロマン派作曲家と言われているウェーバー(1786~1826)はベートーヴェンより先に亡くなっていますし、代表作歌劇「魔弾の射手」は1821年の作品で、ベートーヴェンの第九よりも前です。同様にロマン派といわれるシューベルト(1797~1828)も、ベートーヴェンの1年後の1828に没しています。ベルリオーズ(1803~1869)が標題音楽の代表作とされる「幻想交響曲」を作曲するのは、ベートーヴェンが没した3年後の1830年です。  つまり、「古典派」「ロマン派」の差は、作曲家の違いではなく、あくまでその音楽が受け入れられた社会の「時代」の差なのだと思います。  その社会の主役が王侯貴族か一般市民か、という差です。言ってみれば、「ロマン派」の音楽は、現代の「流行音楽」に近い「一般市民の多数にウケる音楽」なのだと思います。社会の主役が交代し、音楽を提供する側も一般市民の多数のウケを狙って儲ける、というニーズに合わせて音楽を変えて行った、という結果なのでしょう。経済原理ということでしょうか。  「ロマン派」以降の19世紀の100年は、あまり音楽に本質的な差はなくなり、周辺の後進国の音楽を「民族音楽派」、成熟したロマン派・ワーグナーに対応した懐古趣味的な「新古典派」(ブラームス)と呼ぶ程度ではないでしょうか。  20世紀になると、クラシックの分野では音楽を根底からひっくり返す伝統の否定と混乱が引き起こされますが、「ロマン派」音楽の流れはポピュラー音楽、流行音楽、映画音楽の中に生き続けていると思います。(日本の演歌もロマン派の末裔ですよね)

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