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n次元ベクトルの外積の定義

oodaikoの回答

  • oodaiko
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回答No.10

siegmund先生、物理側からのフォローありがとうございます。 >>「応力」はR^3上の3階のテンソルです(6階でしたっけ。) >R^3 上の2階のテンソルですね. やっぱり勇み足でしたか f(^^; 少しお断りしておきます。(言い訳ばっかりです (^^;) 私はスピヴァックの『多変数解析学』をネタにこの解説を書いています。今書いている定義や議論の進め方はおおむねこの本にしたがっています。しかしこの本の主題はテンソル代数ではなく、ベクトル解析の主要な定理(古典的なストークスの定理)を現代的な方法で(つまり高度に代数化、抽象化された手法で)解説しようというのが目的です。 例えていえば伝統的なε-δ方式の代わりに超準解析を使って解析学を展開しているような本です。 そこで、この本ではテンソルや外積に関する議論もその目的に必要な部分だけを取りだし、抽象化したような体系になっています。ですから伝統的なテンソル代数の教科書(もちろん数学者が書いたもの)と比較してさえ、言葉の定義や議論の進め方は若干異なっています。 chukanshi さんは >さらに詳しく知りたくなったら、専門書をもう一度読みなおしてみようと思います。 >そのときは、大局がみえているので、少し楽になると思っています。 とおっしゃってますがかえって混乱するかも知れません。そこで今日の投稿の最後にテンソル代数の標準的な教科書との違いを簡単にまとめておきます。 さて続きです。 (7)外積 やっと「外積」が定義できるところまで来ました。 交代テンソル同士のテンソル積が交代テンソルになるとは限らないのは明らかですね。そこで交代テンソル同士の演算であって、結果が交代テンソルになるようなものを定義します。これが「外積」です。 S∈Ω^k(R^n),T∈Ω^l(R^n)とします。SとTに対し「R^n上のk+l階交代テンソル」S∧Tを次のように定義します。 (ただし×の記号は先に述べたベクトル積ではなく、通常の実数のかけ算の意味です) S∧T=(k+l)!/(k!l!)×A(S※T)    ………(*Alt) 「交代化」の部分を先の定義で置き換えて、引数を含めて書き下すと S∧T(u_1,…,u_{k+l}) = 1/(k!l!)Σ_{σ∈S_k} sgnσ・S※T(u_{σ(1)},…,u_{σ(k+l)}) = 1/(k!l!)Σ_{σ∈S_k} sgnσ・S(u_{σ(1)},…,u_{σ(k)})・T(u_{σ(k+1)},…,u_{σ(k+l)}) となります。1/(k!l!)という係数はなにやらいわくありげに見えますが、これは後で定義するΩ^k(R^n)の標準基底をR^nの標準基底に作用させた時1になるようにするため、つまり正規化のための係数なのであまり本質的ではありません。今問題にしているのは「ベクトル」すなわち「1階のテンソル」に関する話なので係数は1と考えておいてもさしつかえはありません。 外積の演算法則をチェックしておきましょう。S,S_1,S_2∈Ω^k(R^n),T,T_1,T_2∈Ω^l(R^n),U∈Ω^m(R^n),a∈Rとします。 S∧(T_1+T_2)=S∧T_1 + S∧T_2 (S_1+S_2)∧T=S_1∧T + S_2∧T (aS)∧T=S∧(aT)=a(S∧T) S∧T=(-1)^{kl}(T∧S)  (S∧T)∧U=S∧(T∧U) が成り立つちます。始めの3つは交代化の線形性からほとんど明らかですね。4つめは外積を特徴づける性質です。この性質のため外積は「交代積」と呼ばれることもあります。 最後の結合律を示すのは少々面倒です。しかし結合律が成り立つため任意のsに対し《s個の「R^n上の交代テンソル」の「外積」》を定義することができます。言うまでもなくk_1,…,k_s階の交代テンソルの外積は(k_1+…+k_s)階の交代テンソルになります。先の「ベクトル積」がn-1個の要素に対してしか定義できなかったことを考えると「外積」のほうがずっと「積」らしいと言えますね。 とはいえkを固定した場合、「外積」はΩ^k(R^n)の中で閉じていない(Ω^k(R^n)の要素同士の外積はΩ^{2k}(R^n)の要素になる)ことは明らかですから、これを「演算」と見なすのは少々無理があります。「テンソル積」および「外積」は、演算の意味での「積」というより、どちらかといえば集合の意味での「直積」に近いものと考えた方がよいでしょう。 「外積」を「演算」と見なすためにはすべてkについてのΩ^k(R^n)全体の集合 Ω(R^n)={ Ω^k(R^n): k ∈ N } を考え、それを1つの空間と見なし、「外積」をΩ(R^n)上の演算と定義する方法があります。(定義の方法は今説明した方法の簡単な拡張です) Ω(R^n)とその演算としての「外積」を組にしたものが、いわゆる「外積代数」または「グラスマン代数」と呼ばれる代数系のことです。ここでは外積代数の話までは深入りしません。 なお(*Alt)の表現では3つ以上の多重積の場合にどう書き下すのか良くわかりませんから、s個の交代テンソルに対する「外積」の表現を書いておきます。 T_i∈Ω^{k_i}(R^n)(i=1,…,s) とすると T_1∧…∧T_s=(k_1+…+k_s)!/(k_1!…k_s!)×A(T_1※…※T_s) となります。もちろん T_1∧…∧T_s ∈ Ω^{k_1+…k_s}(R^n) となります。 (8)Ω^k(R^n)の基底と次元 さて外積を使ってΩ^k(R^n)の標準基底を構成し、またΩ^k(R^n)の次元を決めることができます。Ω^k(R^n)はT^k(R^n)の線形部分空間ですから当然次元はT^k(R^n)の次元より小さくなります。また先に書いたようにk>nの場合はΩ^k(R^n)は0次元です。 標準基底の定義方法はT^k(R^n)の場合と大体同じですが、Ω^k(R^n)は交代性があるため微妙に違います。 e_1,…,e_nをR^nの標準基底とし、f_1,…,f_nをその双対基底とします。すなわちf_i(e_j)=δ_{ij}です。f_1,…,f_nはもちろんΩ^1(R^n)の要素です。 f_1,…,f_nから任意のk個の要素f_{i_1},…,f_{i_k}(1≦i_1<i_2<…<i_k≦n)を取り(添字の選び方に注意して下さい)、外積 f_{i_1}∧…∧f_{i_k} を作ります。これは当然Ω^k(R^n)の要素です。そしてこのようなΩ^k(R^n)の元全体がΩ^k(R^n)の基底になります。従ってΩ^k(R^n)の次元数は n!/(k!(n-k)!)=nCkになります。 さてR^nの「ベクトル」は「R^n上の1階交代テンソル」ですから、R^nの「ベクトル」の「外積」は「R^n上の2階交代テンソル」になります。そしてその次元はnC2となります。すなわちn=3の時のみ「外積」は「ベクトル」と同じ次元になります。R上のn次元ベクトル空間は本質的にR^nただ一つだけ(R^nと同一視できる)なので、「ベクトルの外積」はn=3の時のみ同じベクトル空間の中で閉じた演算と見なすことができます。 *********************************************************************** ここまでで「外積」についての一般論は終りです。 最初に書いたようにこの解説はスピヴァックの本を元に書いています。そしてこの本では(一般化された)ストークスの定理の証明を主目的にしているため、用語や記法もその目的に対し最適化された形で構成されています。そのため一般的なテンソル代数の本とは少々用語や定義が異なっています。 スピヴァックの本では、テンソル代数の教科書でいうところの「k階の反変テンソル」のことを「k階のテンソル」と呼んでいます。 わかりやすい例でいえば、正方行列だけを「行列」と定義するようなものです。一般の線形変換の話をするならば一般のn×m行列から論じなければなりませんが、行列式や逆行列や行列の対角化などの解説を目的とするならば、「行列」を正方行列に限定してしまっても構わないわけです。 一般のテンソル代数の教科書では「p階反変テンソル」とその双対空間というべき「q階共変テンソル」というものが定義され、これらのテンソル積をとったものが「p階反変q階共変テンソル」または「(p-q)型のテンソル」と呼ばれる一般的な「テンソル」になっています。 物理テンソルでも相対論などでは「共変テンソル」も出てきますので、ここで解説した「テンソル」の範疇に収まらない物理テンソルも存在します。 次は「ベクトル」の「外積」に話題を絞って、成分による具体的な表示や物理テンソルとの関連などをみていきます。

chukanshi
質問者

お礼

本当に、詳しい解説をありがとうございます。私個人の躓きそうな点までご指導頂き、本当に感謝しています。まだ、続きをご講義いただけるようなので、楽しみにしております。

chukanshi
質問者

補足

そういえば、齋藤正彦先生って、「超準解析」大好きでしたね。そのわりには、齋藤先生の「線形代数」の教科書は普通っぽかったです。

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