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XPSとAESどのような場合にどちらが適しているのですか?

XPS(X線光電子分光法)とAES(オージェ電子分光法)がどのような場合、どちらを用いればいいのかが良く分かりません。 XPSとAESの原理は本で勉強したのですが、この2つ徹底的に比較していないので表面を分析するならどちらでもいいのかと思うのですがどうもそうでもないようなのです。 深さ方向の分析にどちらが適しているなどがあるのでしょうか?

質問者が選んだベストアンサー

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  • Umada
  • ベストアンサー率83% (1169/1405)
回答No.1

時々AESやXPSで試料を分析してもらっている者です。分析法自体の専門家ではなくてすみません。 オージェ電子分光(AES)とX線光電子分光(XPS)は対象とする分析内容が比較的似ています。AES・XPSのどちらでも適用できる場合も少なからずあります。 原子の結合状態まで知りたい時にはXPSが好んで使われます。元素の結合状態の違いによって生じる、XPSスペクトルの化学シフトが容易に観測され解析もしやすいためです。具体的には例えば試料の中からケイ素が検出されたとして、それらのケイ素が酸素と結合しているのか他のケイ素と相互に結合しているのかまで知ることができます。またプローブがX線で試料の帯電の問題がないので、絶縁物の分析をする場合に有利です。 AESはプローブが電子ビームですが、電子ビームは容易に細く絞ることができるので表面内での元素の2次元分布を細かく調べたい場合(マッピング)に適しています。 ただしXPSでもプローブ(X線)を絞り込めるようになり、一方でAESでも結合状態の解析技術が進んだために、互いの技術は接近してきているようです[1]。 深さプロファイルはAESでもXPSでも取れます。深さ方向の分解能はいずれも数[nm]程度だったと思います。感度はXPSの方がよいようです。 以下のページなども参考にしてみてください。 [1] http://www.kanagawa-iri.go.jp/kitri/kouhou/ssknews/pdf/sannewspdf.html ここの「1999年度発行 Vol. 5 No. 1(1999.5)」(pdfファイル)をダウンロードして読んでみてください。 [2] http://www.idema.gr.jp/news/38.htm ここの「表面分析法を用いたヘッド・ディスクの測定事例」(pdfファイル)をダウンロードして読んでみてください。内容はTOF-SIMSについてのものですが、最初にXPSやAESなどの表面分析法を比較した表があります。 [3] http://www.cacs.co.jp/12kinou/conts/hyoumen_c1.htm [4] http://www.nsg.co.jp/ntr/NTR-NEWS/ntrnews20.htm [5] http://www.jeol.co.jp/technical/information/eo/escadata/esca006/esca006-01.htm

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質問者

お礼

お礼が遅くなって申し訳ありません。 御回答、ありがとうございました。 URL、非常に参考になりました。

その他の回答 (1)

  • kenojisan
  • ベストアンサー率59% (117/196)
回答No.2

Umada様の回答でほぼ十分だと思いますが、実際の装置ユーザーとしての補足です。私は、試料を大気に出さずに合成装置内で測定する(in-situ測定)XPS、AESを使ってますが、ここでは一般的な試料を大気から持ち込む場合で比較します。 1.測定試料の違い  基本的にはAESは電子を使って測定するので、導電性試料にしか使えません。X線を使うXPSは試料を選びませんが、絶縁性試料では放出する光電子のためにやはり多少charge-upするので、後述する化学シフトの測定には少し影響が出ます。  あと、複数の元素が含まれる試料の場合には、それぞれの元素からのXPSピークとAESピークが重なる可能性が有りますから、事前にデータ集で調べて都合の良い方を選びます。ただし、XPS測定でもAESピークが出てきますから考慮が必要です。 2.化学シフト  同じ元素からの信号ピークでも、その元素が含まれている化合物の違いでピーク位置がわずかにシフトすることを化学シフトと呼び、その元素のイオン状態や化合物種類を決めることが出来る場合が有ります。  AES測定でも有る程度情報が得られるらしいですが、参考に出来るデータ集などが揃っているのはXPSです。ただし、XPSピークの位置(束縛エネルギー)を正しく決めるには信頼できる基準とするピーク(炭素の1sが良く使われる)を一緒に測定して、上述のcharge-upなどによる影響を除かなければいけません。 3.マッピング  AES、XPS共に、測定ビームを細く絞って試料を走査して、元素別の分布状況を調べることが出来る機能が付いている高級装置が有ります。しかし、XPSの方はX線ですから、AESの電子ビームのように簡単には絞ったビームには出来ません。ミラーやスリットでビーム径を絞るのですが、分解能+強度+価格でAESよりはるかに不利です。 4.感度、定量性  感度は装置と元素によって大きく異なるので一概には言えません。ただ、一般的にはX線より電子の方が試料との相互作用が大きいですから、AESの方が感度的には有利でしょう。ただし、AESの場合はバックグラウンドが高くて生ピークでは分かりにくい場合が多く微分ピークで測定することが多いので、定量評価ではXPSの方が優っているでしょう。しかし、どちらの場合も表面感度が高いために、試料の表面のデコボコや汚れ具合に非常に敏感ですから、定量評価は多くの注意を要します。 5.装置価格  どちらも高級機では天井知らずですが、マッピング機能の無い安価なタイプを比較するならAESの方が手軽ですが、AESのみの市販機は少ないかも知れません。XPS装置の場合は、電子銃を追加するだけでAESも測定出来るようになっているのが普通です。 6.深さ分解能  対象とする光電子のエネルギーと表面を覆っている物質で異なりますが、おおよそ表面から数原子程度(1nm程度)の深さを測定すると考えて良いと思います。通常の深さ測定では試料をイオンビームで掘りながらの測定になります。従って、深さ分解能はどれだけ均一に正確に掘れるかにかかっています。また、両分析法自体では掘った深さは分かりませんから、予め同じような試料を使ってイオンビームの掘る速度を別の手法で決めておかないといけません。実際にはこの校正はなかなか難しく、測定深さの絶対値を決めるのは簡単では有りません。  以上の比較を総合すると。導電性試料を使って、手軽に定性測定をしたりマッピングを取るならAES。絶縁性試料や状態分析を含めての測定ならXPSということになると思います。

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質問者

お礼

お礼が遅くなって申し訳ありません。 よくまとまっていて、大変わかりやすかったです。

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