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原子核、中性子の磁気モーメントについて

もう随分古い教科書ですが、 『新物理シリーズ7 磁性 金森順次郎 培風館』 を使って磁性について勉強しています。 自分の知識の無さもあり、文脈の解釈ができずに困っています。 -以下抜粋(ちなみに10ページ)- 原子核のスピンをhI→として、原子核の磁気モーメントμ→は、 μ→=gNμNI→ で与えられる。(μNは核磁子) ・・・(中略)・・・ 中性子はスピン(1/2)hを持ち、電気的に中性ではあるが、 μ=-1.9131μN という値の磁気モーメントを持っている。 ただしこのμはスピンI→のz成分Iz=1/2の状態でのz方向の磁気モーメントである。 -抜粋終了- hというのは、全てhバーのことです。 矢印→は、ベクトルです。(例えばI→はIのベクトル) Nというのは、核という意味の添え字です。 ここで問題が生じたのですが、『ただしこのμはスピンI→のz成分Iz=1/2の状態でのz方向の磁気モーメントである。』という一文が理解できません。 原子核のスピン磁気モーメントのz成分Izが1/2となるような状態においては、中性子のスピン磁気モーメントはz方向を向いて、その値がμ=-1.9131μNとなる、ということなのでしょうか? とすると、Izが1/2でないときは、中性子のスピン磁気モーメントはμ=-1.9131μNではなくなるのでしょうか? この本を読んでいない方でも、どなたかこの文章を上手く説明して頂けないでしょうか。よろしくお願いします。

質問者が選んだベストアンサー

  • ベストアンサー
  • nzw
  • ベストアンサー率72% (137/189)
回答No.2

まず、角運動量と磁気モーメントの違いを、古典力学から再確認してみましょう。これらは量子力学では密接な関係を持ちますが、本来別々の物理量です。  角運動量というのは、古典力学では、質量をもった粒子の回転に伴う力学的な物理量です。磁気的な性質をしめさない物でも、角運動量を持ちます。  一方磁気モーメントというのは、それを磁場中に置いた時に、どれだけのトルクをうけるか、という磁気学的な物理量です。一番身近な例では、方位磁石が北を向くというのが、この磁気モーメントのせいです。このように、磁気モーメントは、回転運動をしていない場合にも0でない場合があり、また電気的に中性であっても磁気モーメントが0でない場合もあります。  ただ、これら角運動量と磁気モーメントは、まったく無関係というわけでもありません。電流が円環状に流れているとき、この電流は回転軸方向に磁気モーメントを発生させます。また、球体の表面に電荷が分布しており、この球体が自転している場合にも、回転軸方向に磁気モーメントが現れます。  さて、ここで電子や陽子などの粒子について、古典的に考えてみましょう。電子や中性子、陽子、それに光子などの粒子は、スピンという内部角運動量をもつことが発見されました。これは古典描像では自転に対応します。ただ、スピンはあくまで角運動量の一種であり、lzはそのZ成分です。ここに磁気モーメントという意味合いは本来含まれていません。  陽子や電子は電荷を持っています。ですから、スピンと電荷の両方をもつ陽子や電子が磁気モーメントを持ち、電荷の符号の違いにより逆向きの値になっている事(電荷の正負により粒子の流れが同じでも、電流は逆向きになる)は、古典描像でも自然なことです。また、光子はスピンをもちますが、電荷を持たないため、これが磁気モーメントを持たないのもやはり古典的に自然なことです。量子力学では、スピンが粒子の自転であるとか、磁気モーメントの原因が荷電粒子の自転であるといった像は正しくないとされています。しかし、スピンが角運動量の一種であり、孤立した静止粒子の磁気モーメントがスピンと常に平行になるということは成立しています。  次に中性子です。中性子もスピンを持ちますが、電荷を持ちません。ですから古典描像では、本来磁気モーメントを持たない方が自然です。これが引用文中に「電気的には中性ではあるが」の一文がある理由です。  μ=-1.9131μNというのは、中性子単体での磁気モーメントであり、中性子のスピンが1/2であることから、磁気モーメントの値はこれと絶対値が同じであり、正負が異なる状態(lz=-1/2に対応)しかありません。  さて、原子核の磁気モーメントは、それを構成する陽子と中性子の磁気モーメントの単なる和にはなっていません。これは最も単純な複数核子の原子核である重陽子(重水素の原子核)の磁気モーメントでも成立しています。この事実は早い時点から認識されており、核物理構築の初期段階で重要な役割を果たしました。

kk0902
質問者

お礼

すみません、質問の文意があまり伝わっていなかったようです。 スピン角運動量や軌道角運動量と、磁気モーメントの物理的意味合いは理解しているのです。 分からなかったのは、 『ただしこのμはスピンI→のz成分Iz=1/2の状態でのz方向の磁気モーメントである。』 という一見当たり前のような文章を、筆者は何故わざわざ教科書中に書いたのかということだったんです。 つまり、何か別に真意があるんじゃないかって疑ってたわけです。 しかし、自分の頭の中では分かっていることでも、nzwが文章で丁寧に書いて下さったおかげで、より理解が深まった気がします。 ありがとうございました。

kk0902
質問者

補足

大変申し訳ありません、『この回答へのお礼』の下から2行目の文章で、nzwさんのことを敬称をつけるのを忘れてしまっていました。 回答してくださったのに申し訳ありませんでした。

その他の回答 (1)

  • Mr_Holland
  • ベストアンサー率56% (890/1576)
回答No.1

 私もしばらく離れていて、質問者さんのテキストを持っているわけではないので定かではありませんが、 >とすると、Izが1/2でないときは、中性子のスピン磁気モーメントはμ=-1.9131μNではなくなるのでしょうか?  その通りだと思います。   Iz=±1/2,±3/2,±5/2,・・・ となるスピンIのz成分に対して、磁気モーメントのz成分は、   μ=±1.9131μN, ±3*1.9131μN, ±5*1.9131μN,・・・ (複号は反転して同順。) と変化するものと捉えています。  通常、z方向というのは、磁場H→を意識して、この方向に向いています。そして、スピンI→は、磁場H→とは同じ方向を向かず、スピンIzに応じた角度を保ちながら、磁場H→の方向を軸にして歳差運動をしているというイメージだったと思います。  テキストの文章中、あえて『ただしこのμは・・・z方向の磁気モーメントである』と断っているのは、想像ですが、この値を求めておくと磁場との相互作用の大きさが求めやすくなるからだと思います。  磁場と磁気モーメントの相互作用を考えるとき、H→とμ→の内積を取りますが、核子では磁気モーメントはz方向で量子化されますので、あらかじめ量子化された磁気モーメントのz成分を求めておけば、磁場の大きさとスカラーで掛け合わせればよいので、便利になるからだと思います。  そして、その値を求める際、Izは±1/2,±3/2,±5/2,・・・と量子化されているので、最小単位のIz=1/2 のときの磁気モーメントのz成分だけを求めておけば、あとはその奇数倍ですので、Iz=1/2 の値だけを計算したものと考えられます。 >ここで問題が生じたのですが、『ただしこのμはスピンI→のz成分Iz=1/2の状態でのz方向の磁気モーメントである。』という一文が理解できません。 >原子核のスピン磁気モーメントのz成分Izが1/2となるような状態においては、中性子のスピン磁気モーメントはz方向を向いて、その値がμ=-1.9131μNとなる、ということなのでしょうか?  この解釈は次のようになるのではないでしょうか。  ⇒ 中性子のスピンのz成分Izが1/2となるような状態においては、磁気モーメントのz成分の値がμ=-1.9131μNとなる。  (ほとんど原文どおりになってしまいますが。)  理由は次の通りです。 1) Izは中性子のスピンのz成分であって、磁気モーメントμ→とは別物です。さらに磁気モーメントのz成分はμ(ベクトルなし)だと思います。 2) スピンも磁気モーメントも、必ずしもz方向には向くとはいえないと思います。 3) 原子核のスピンのz成分Izが1/2となっても、その原子核が中性子だけで構成されているとは言えず、他の核子の場合異なる磁気モーメント(陽子では+2.79276μN)をもちますので、μ=-1.9131μNを使う場合は、中性子に限定しなければならないとおもいます。  以上、おぼろげな知識であやふやな部分もありますが、お役に立てればと思います。

kk0902
質問者

お礼

非常に丁寧なご回答ありがとうございます。 返事が遅くなって申し訳ありません。 自分の知識欠如のせいで、まだMr_Hollandさんの文章を完全には理解できていません^^; なので、しっかり内容を理解できてから、再度お礼を申し上げたいと思います!

kk0902
質問者

補足

Mr_Hollandさんの回答を参考にさせていただきながら、色々調べました。 中性子のスピンの大きさは(1/2)hのみのようです。 私が疑問だった、 『中性子はスピン(1/2)hを持ち、電気的に中性ではあるが、μ=-1.9131μNという値の磁気モーメントを持っている。 ただしこのμはスピンI→のz成分Iz=1/2の状態でのz方向の磁気モーメントである。』 という文章は、中性子のスピンのz成分が『正』のときでも、磁気モーメントは『負』になる。 つまり、g因子が負だから気を付けようね!みたいな意味だと捉えることで納得がいきました。 答えていただき、まことにありがとうございました!

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