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『ハムレット』の1節について

シェイクスピアの『ハムレット』に登場する「God hath given you one face, and you make yourself another.」という言葉ですが、ネットでは「ひとつの顔は神があたえてくださった。もうひとつの顔は自分で造るのだ。」といった風にポジティブな言葉として紹介されているのをよく目にします。 しかし、実際にハムレットを読むと、「おまえたちの化粧のこともよく知っているぞ。神様は一つの顔をお与えになったのに、おまえたちは別の顔を作ってしまう。(河合祥一郎訳)」と訳されており、本来はネガティヴな言葉であるように思われます。 この言葉はポジティヴなものとして捉えてもよいものなのでしょうか? そして何故かようにもポジティヴな言葉として紹介されるまでに至ったのでしょうか?

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  • Nakay702
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回答No.1

以下のとおりお答えします。 >シェイクスピアの『ハムレット』に登場する「God hath given you one face, and you make yourself another.」という言葉ですが、ネットでは「ひとつの顔は神があたえてくださった。もうひとつの顔は自分で造るのだ。」といった風にポジティブな言葉として紹介されているのをよく目にします。しかし、実際にハムレットを読むと、「おまえたちの化粧のこともよく知っているぞ。神様は一つの顔をお与えになったのに、おまえたちは別の顔を作ってしまう。(河合祥一郎訳)」と訳されており、本来はネガティヴな言葉であるように思われます。この言葉はポジティヴなものとして捉えてもよいものなのでしょうか? そして何故かようにもポジティヴな言葉として紹介されるまでに至ったのでしょうか?⇒ハムレットのセリフの一部分が切り取られて、独り歩きしたことが原因のようです。 問題の個所は、第3幕、第1場の中ほどですね。原文は、"I have heard of your paintings too, well enough; God hath given you one face, and you make yourselves another."とあります。河合祥一郎訳は存じませんが、三神勲訳では、「知っているぞ、きさまたちがどんなに塗り立てているかはちゃんと知っているぞ。神さまから授かった顔をまるで別物にしてしまう。」となっています。こうして原文と翻訳文を突き合わせてみれば、訳者ごとに若干ニュアンスの違いはあっても、原文がネガティヴな内容の表現であることは確かであろうと思われます。 では、なぜ巷ではしばしばポジティヴな内容の言葉として紹介されるに至ったのでしょう。それは、"God hath given you one face, and you make yourselves another."の部分だけが切り取られ、名言・金言として独り歩きしたからに違いありません。例えば、https://izenkei.com/good-face では、《小野寺健2010『心にのこる言葉 ベストセレクション162』ちくま文庫》と題して、次のように紹介されています。 《今回はシェイクスピアの名言をご紹介します。 God hath given you one face and you make yourselves another. From “Hamlet” by William Shakespeare 「ひとつの顔は神があたえてくださった。もうひとつの顔は自分で造るのだ。」》 なるほど、これはこれで、深淵な意味をもつ格言と言えるかも知れませんね。ただし、当の『ハムレット』で原作者シェイクスピアが意図した意味とは全然違ったものになっていますね。これぞまさにしく、《独り歩きした名言》でなくて何でしょう。 なお、このように、《発言当初の意味と「格言化」した後の意味が異なる場合》は、ほかにもありますね。例えば「、健全なる精神は健全なる身体に宿る」・「もっと光を」などです。 ・「健全なる精神は健全なる身体に宿る」:ローマ時代の詩人が、「健全なる精神」を探求すると「健全なる身体」が犠牲になり、「健全なる身体」を追及すると「健全なる精神」がおろそかになることを嘆いて、神にその「一体化」を祈った文言だったそうです。 ・「もっと光を」:ゲーテは晩年目を病み、おまけに石造りの家は窓が小さいので、昼間でもあまり明るくなかったようですね。それで、ゲーテは嘆息しながら、「もっと明るい光が欲しい」というような意味のことを切望するために発した文言だったらしいです。

papertree
質問者

お礼

やはり誤訳の一人歩きですよね。しかし、「独り歩きした名言」というのは私にはない観点で、大変興味深く読ませていただきました。ご回答いただきありがとうございます。

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