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五重塔の違い

neil_2112の回答

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  • neil_2112
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回答No.2

結論を先に書きますが、インドのstupaが中国に伝えられて大きく塔建築へとイメージが改変され、日本は大枠でこれを受け継ぎながらディテールを変更していった、と言えます。つまり日本の仏塔建築はもとはインドのstupaとは言いながら、建築様式の根幹では中国の影響が大なのです。 一方で大雁塔は玄奘三蔵の個人的な意向が反映された建築で、stupaとはもともと別個の機能を持った建物ですから、これをstupaの代表とみてはなりません。 インドの本来のstupaというのは土のドームの頂点に小さな傘を重ねて乗せたようなものです。そもそもstupaという梵語の言葉の原義が「土塁、塚」で、仏舎利塔もその形状からやがてstupaと呼ばれるようになったわけですから、その基本はあくまで「土を盛ったもの」です。 このイメージは中国に入ってから大きく改変されます。素材が木造やせん造(瓦のようなもの)となり、形状も楼閣建築の流れを受けて層を重ねた塔状へと変化していったのです。日本にはこの建築様式が半島経由で伝えられ、風土に合った木造が主流となったうえで、さらに斗組などと呼ばれる組物の形式が一層発展していったわけです。 木造の塔は中国でも大変多く作られたとされますが、現存するのは最古でも11世紀頃のもので、法隆寺クラスのものは残されていません。このことは複数回の兵難や仏教弾圧の激しさを意味こそすれ、古い木造塔建築の存在を否定するものでは決してありません。 さて、大雁塔はこういった仏舎利塔としてのstupaではありません。この塔はインドから戻った玄奘三蔵が唐の太宗皇帝に具申してつくられたものですが、その目的は経庫つまり経典の収蔵のためであって、もともと仏舎利塔として意図されたものではないのです。 あまり知られていませんが、大雁塔には実はモデルが存在します。玄奘の著した「大唐西域記」に記載がありますが、彼がインドのナーランダ寺に滞在して学問を修めていた際に色々と尋ね歩いた仏跡のうちのひとつ、「雁塔」という石造の塔を帰国後にいわば模倣して再現したのです。 この雁塔は当時中国でもよく知られていた伝説的な塔であったようです。小乗の僧が肉を得られずに腹をすかせ、空を飛ぶ雁にその旨を語ったところ雁が自ら墜死して僧に自分の体を供養した、僧は自ら招いた殺生を恥じて雁の供養のために塔を建て、それ以降食肉を禁ずる大乗に転向した、という説話があり、玄奘の時代にはその発祥地であるオリジナルの塔が存在していたのです。 従って、大雁塔はオリジナル自身も含めstupaではありません。寺の記録である「慈恩伝」によれば玄奘はこの雁塔に触発されてこれを忠実に模したものを作ろうとしたらしく、当初は石組みで高層のものを作ろうとしたようですが、太宗皇帝の忠告をいれて最終的に煉瓦作りの五層の塔としたとされています。はるばるインドから持ちかえった経典をインド風の建物に収蔵したいと願った玄奘三蔵の思いは当然のことだったでしょう。 要するに、大雁塔というのはインド求経の旅を行った玄奘であってこそ作り得た特異な建築であって、stupaの流れを汲む多くの仏塔建築からは独立した存在だと考えるべきです。

goofing
質問者

お礼

長文での回答ありがとうございました。 不可解な点が大分なくなりました。 大雁塔が木製でない理由もよくわかりました。 ありがとうございます。

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