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詐害行為取消権と相続承認

詐害行為取消権の対象とならない行為に身分行為があげられます。 よくあげられるのは、相続放棄を取り消せるかどうかですが、通説・判例は (1)取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為でなければならず、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを含まない (2)身分行為意思の尊重 の観点から相続放棄は取り消せないとします。 それでは、相続承認はどうなのでしょうか。 債権者を困らせるつもりで、多額の借金を相続した場合、もはや積極的に債務者の財産を減少させる行為といえるのではないでしょうか。 (2)の観点からだけで、やはり取り消せないとなってしまうのでしょうか?? ご教授お願いします。

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noname#81273
noname#81273
回答No.2

majestic7 さんは今、詐害行為取消権のあたりを勉強されているのですね。実際、この条文周りは難しい問題が山積してます。 相続放棄については質問者さんの書かれるような理由から詐害行為取消権が及ばない、ということがよく言われますが、そもそも(1)の点から詐害行為として問題にするのがおかしいともいわれます。つまり、身分行為に詐害行為取消権が及ばないかどうかは(2)の点からのみ判断するべきだという主張は十分可能です。 現在の判例解釈からすると、身分行為は形式上「財産権を目的とせざる法律行為」となるが、その形式に仮託して実質的に詐害行為になっているような場合には詐害行為取消権は肯定しうるといえます。 例えば、内田貴の教科書の例を引けば、 (1) 離婚に伴う財産分与(768条)に関して、「身分行為に仮託した詐害行為、と言える場合は取り消しうる」(最判昭和58年12月19日)。 (2) 有責配偶者の行った過大な慰謝料の合意について、「慰謝料支払の名を借りた対価性を欠く新たな債務負担行為」であるとして、一部取消を肯定(最判平成12年3月9日)。 ところで、質問者さんの説例である「相続承認」の場合ですが、そもそも相続は死亡を原因とする包括承継なので、被相続人の債権者にとっては死亡によって債務者が相続人に代わったに過ぎず、相続以降に新たに相続人の債権者に対して悪意を認定するのは無理があると思います。

majestic7
質問者

補足

別の質問でもご教授いただきまして、重ねてお礼を申し上げます。 ありがとうございます。 昨日から、責任財産の保全のところを勉強し始めたので、勉強不足でした。 「被相続人の債権者にとっては死亡によって債務者が相続人に代わったに過ぎず、相続以降に新たに相続人の債権者に対して悪意を認定するのは無理がある」というのは確かにその通りですね。詐害行為取消の客体の問題とするのではなく、詐害意思の有無で判断するということですよね。そっちで判断を下したほうがはやそうですね。 それに、たとえ取消が認められたとしても、承継を取り消したあとは、債権者代位権を行使して相続放棄させるなんてちょっと考えられないですよね。 相続放棄の場合は、包括承継が原則であるところ、あえて放棄するわけだから詐害意思が認められやすいとしても、詐害行為取消の客体の面で、質問であげた二つの理由(特に二つめの理由)から認められないと考えようと思います。

その他の回答 (1)

  • buttonhole
  • ベストアンサー率71% (1601/2230)
回答No.1

>(2)の観点からだけで、やはり取り消せないとなってしまうのでしょうか??  そういうことになるでしょう。仮に認めるとしても、熟慮期間内に相続放棄(あるいは限定承認)の手続をしなければ、単純承認をしたものとみなされるのですから、取り消す実益がありません。(債権者代位で相続放棄の申述をするというのは無理があると思います。)  相続人の債権者としては、家庭裁判所に第二種財産分離の請求をするしかないでしょう。 民法 (相続人の債権者の請求による財産分離) 第九百五十条  相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。 2  第三百四条、第九百二十五条、第九百二十七条から第九百三十四条まで、第九百四十三条から第九百四十五条まで及び第九百四十八条の規定は、前項の場合について準用する。ただし、第九百二十七条の公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がしなければならない。

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