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戦後の文学を勉強するには

hyoutouの回答

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  • hyoutou
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回答No.6

#4です。 たしかに、個別の作家について調べていく事のなかでも、その作家を取り巻く文学史的状況を把握していくという事は幅広い知識を要求されるので、大変かと思いますが、それでも作家が定まっているのであれば、それら作家のの作家論をいくつか読んで、そこに出てくる用語、文献を足がかりに根気良く調べていくのがよいかと思います。一応わかる範囲でアドバイスさせていただきます。 幸田文については、#5の方が詳しく説明されている通り、文壇の大きな流れからは少し離れていると思います。 吉村昭と山本周五郎についてですが、これは、 >戦後から1960年代の日本文学 という括りで調べるのは大いに意義のあることかと思われます。 というのも「戦後から1960年代の日本文学」の歴史とは、一面で言えば、日本経済の発展に伴って出版コマーシャリズムが文学において勝利を収め、「純文学」のあり方が大きく変質した歴史であると言え、彼らはこの流れの中で文学的変遷を経ていっているからです。 戦後すぐの文学は、戦前からの流れを受け、総合雑誌(「文藝春秋」「世界」「改造」「中央公論」など)、新興出版社の文芸雑誌(「人間」「風雪」「群像」「個性」など)、戦前から続く文芸雑誌(「新潮」「文學界」「文藝」など)が純文学作品を掲載し、再び文藝復興の様相を呈していました。 一方で、探偵小説や、時代小説は、それぞれ探偵小説雑誌、講談雑誌などでまさに大衆文学として読者に受容されていました。戦前からこの時期までは大衆文学と純文学は棲み分けがなされていたと言えます。 しかし、1946年に創刊された「小説新潮」、および1947年に創刊された「日本小説」が、旧来の自然主義文学とはことなる、強いストーリー性を持った作品を多く掲載し、成功を収めます。これが、いわゆる「中間小説」です。当初「文藝春秋」の別冊として講談雑誌的性格をもって始められた「オール讀物」もこれに追随し中間小説誌となります。 この中間小説誌が、大衆文学作家を多く起用し、消費者に広く受け入れられ、朝鮮特需を背景に出版業界の消費拡大を牽引しました(1950年代初頭)。そうして、大衆文学が「売れる」文学となる一方で、純文学は徐々に「売れない」文学となります。(あるいは、「中間小説」という言葉に象徴されるように、大衆文学と純文学のボーダーレス化が指摘されるようになります。)これは、「週刊新潮」などの週刊誌の創刊によってさらに加速することとなりました。 一方、1956年に芥川賞を受賞した石原慎太郎の「太陽の季節」が一代ブームとなったのを受けて、純文学内部でさえ、「売れる」「売れない」という基準がはっきりとするようになっていきます。 このような中で、自然主義的・私小説的な「売れない」文学のシェアは制限され、「文学者」「文藝首都」あるいは「早稲田文学」「三田文学」といった非商業的文芸雑誌や同人誌が、純文学者の活動の場として機能するようになります。同人誌の隆盛(勿論非商業的な隆盛ですが)は1970年代前半まで続きますが、オイルショックによる紙不足の影響を受け、1970年代に大きな打撃をうけることとなるのです。 前置きが長くなってしまいましたが、吉村昭に関しては、1966年の「戦艦武蔵」が出世作と言われますが、それ以前には、上記「文学者」において長く同人活動(純文学活動)を続けています。「文学者」には奥さんの津村節子、瀬戸内晴美(寂聴)などがおり、この3人は、小田仁次郎の「Z」という同人誌にも参加しています。特に先日亡くなられたばかりですので、新しい文献で回顧録、追悼談のようなものが手に入るかと思います。(「文學界」の追悼特集が充実していたかと記憶しています。) また、山本周五郎は、戦前から活動していましたが、初期はやはり、講談雑誌を中心とする大衆文学雑誌での活動が長かったかと思います。その後、中間小説雑誌の隆盛に乗って人気作家となっていく意味では上記に挙げた流れの典型と言えます。こういった観点からは、十返肇の「「文壇」崩壊論」(参考URL)に具体的例として山本周五郎の名前があげられています。 蛇足かもしれませんが、これ以降(1970年代以降)の純文学の更なる変質については柄谷行人の言うような左翼の衰退による文学の役割の終わり(近代文学の終わり)ではなく、あくまでオイルショックから立ち直りバブル景気を迎える事によって出版コマーシャリズムがさらに加速したという流れが重要ではないかと私は考えます。

参考URL:
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/study/togaerihajime.html
straysheep0722
質問者

お礼

返答ありがとうございました。 簡便な流れがつかめて 調査の出発点として 参考になりました。

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