<参考>
他の方が答えていない点について
安倍政権・財務省が手を結んで、日銀をコントロール下に置いて、一体で政権運営を行うパワーを示したが、「黒田バズーカ」によって、安倍政権と財務省等官僚組織の間の不協和音が、国民にも見える形となり政権運営パワーが相当低下した。
解りやすいという自信はないのですが・・・
※「黒田バズーカ」:突然の日銀超金融緩和発表
これは何だったのか?
黒田総裁個人というよりも、財務省と日銀との金融政策に対する考え方の違いに起因するように思われます。
財務省出身の日銀総裁は、日銀を使って財務省の政策がやり易いように金融政策を誘導することが多くなります。
それに対して日銀生抜きの総裁は、日銀の独立性確立と物価の安定(『物価の番人』=インフレは、国民生活にしわ寄せが大きい。)を第一優先に金融政策を誘導します。
いまだに後遺症の残る1980年代のバブル経済を作り出したのも、大蔵省出身の日銀総裁でした。
当時も、赤字国債の累積額が増えすぎて、政治的に財政改革・行政改革が叫ばれ、国家公務員の削減・組織のスリム化が政治課題となっていました。
ところが、経済がバブル化して、消費の大量先買い効果が生まれ、税収が激増しました。誰が見ても、この規模の税収が続くはずがなく、バブルによる経済過熱を抑えるためにも、公共工事を大幅に減らして、国債の償還を進め、公定歩合を引き上げるべきところでした。
しかし、大蔵省・日銀は、プライマリーバランス(財政支出と税収がほぼ同額となった。)が一時的に均衡するまでバブル状態を放置し、大蔵省は、行財政改革を実施することのないまま、
「行財政改革は成功。財政は健全化した。」と宣言してしまいました。
そして、バブル経済がこれ以上続かないことが、素人の目にも明らかになった状態で、日銀総裁は日銀生え抜きの前川氏に交代し、その尻拭いに苦労することになりました。
今回の日銀総裁劇も同様の日銀生抜き組(=物価安定派:国民優先)と財務省出身総裁(=インフレ・景気刺激策優先:国家優先)の政策対立が見えます。
「国家財政の健全化は日銀の仕事ではない。」のは明らかですが、事が1000兆円を超える借金をどうするかという規模になってしまうと、国家財政の健全化をするためには、『国民負担に依るしかない』のは、明白なので、安倍自民党と財務省が組んで、日銀を支配下に置いて、インフレによる消費先取り効果(=自民党のメリット:安倍内閣の支持率上昇)と1000兆円の借金の実質的な踏み倒し(=財務省のメリット:物価上昇2%で20兆円の実質的増税効果。消費税3%の税収増加よりも大きい。)を目指しました。
「国家財政の健全化は日銀の仕事ではない。」・「日銀は『物価の番人』である。」と考える日銀生抜き派にとっては、安倍・黒田ラインによるインフレ政策は、日銀本来の役割からの逸脱としか見えないでしょう。
さて、問題の「黒田バズーカ」ですが・・・
私の個人的な目には、安倍内閣に財務省が撃った実弾攻撃のように思えます。
<経済成長期のインフレ>
経済成長によるインフレの場合、労働生産性が上がって購買力が増加し消費が増える。消費量が供給量に先行して増えるので、物価が上がる。(=インフレになる)
これが、成長している国家経済に起こるインフレです。このインフレを抑えるには金利を上昇させ、労働生産性を上げる投資資金の利用コストを上げると共に、余分な購買資金を貯蓄に誘導し消費量を抑制することで物価上昇を抑えることになります。
このようなインフレの場合、年間2%のインフレが起こっていれば、銀行預金金利は1.5%位になります。
<現在の日本:実質デフレ経済の元でのインフレ>
経済成長をしていない状態でインフレにするには、「マネーゲーム用資金の大量供給を行ってインフレにする。」ことになります。
日銀生抜きの日銀総裁には出来ない金融政策です。
このようなインフレの場合、年間2%のインフレが起こっていても、お金はざぶざぶに余るほどありますから、銀行預金金利はほとんどゼロになります。
<<実質デフレ経済の元でのインフレ>>
基本的に、お金を貸している人が大損します。
アメリカの行ったインフレ政策は、アメリカ国債の保有者が、日本・中国・産油国と外国が持っていました。
従って、アメリカ政府が行ったインフレターゲットに依って損をしたのは、日本以下の外国(ドル建ての外貨準備を巨額に持つ国)が主体です。実質的にアメリカ政府による外国の借金の合法的踏み倒し・パクスアメリカーナに必要な資金の強制徴収と言えます。
それに対して日本政府・日銀が円にインフレターゲットを導入した場合、日本国債の保有原資の多くは日本国民の貯蓄ですから、政府による強制裏増税と言えます。
その証拠に、このタイプのインフレは、必ず通貨安を伴います。と言うよりも(通貨安+インフレ)がワンセットという形になります。
理由:通貨が安くなる=外国通貨に対して購買力が下がる≒通貨の購買力が下がる=インフレ
<<アベノミクス>>
上記理由により、財務省と安倍自民が協力して日銀を支配下に置いて、「アベノミクス」を演出しました。
円安インフレによる高級輸入品の値上がりを見越した富裕層の高級品先買いと、消費税増税による一般商品の値上がりを見越した庶民の先買いを合わせ、消費の大量先取りによって、実体経済を一時的に底上げして好景気と見せて時間稼ぎを行い、経済成長戦略を実施するという案でしたが・・・
現在の経済指標を見る限り、消費の大量先食いによる反動減が、実体経済の上でも表れつつあるようです。また、実施するはずの経済成長戦力も現実化には時間が掛る様です。
消費の先食い効果=消費増によるインフレを実体経済に加算する効果がありますから、消費の反動減によって、デフレが実体経済の表に現れることにもなります。
<<財務省と安倍路線のかい離>> 以下は現時点の私の個人的な読みです。
現在、2%インフレターゲットを日銀の金融政策看板として掲げた以上、日銀は財務省と一体となって、インフレ政策を「安倍政権とは独立」して実施する路線を取る方針となったと考えています。
そして、日銀を支配下に置く際には、安倍自民党と財務省は手を結びましたが、現時点では財務省+日銀と安倍政権と言う構図のように見えます。
財務省は、安倍自民党と協力して、国民が認めた形とし手作り上げた『消費税10%と毎年2%のインフレによる20兆円(国家財政累積赤字1000兆円×2%=20兆円)の影の税収』を確保することで、国民負担の増加により国家財政を安定化して、財務省の差配する金額を極力減らさず、国家公務員の首切りを回避する路線を守りたいのではないかと見ています。
それに対して、安倍政権は
1、経済指標の悪化が表に出だした状態で「消費税増税」を実施すれば、支持率が急落する。
2、賃金アップが少ない状態でインフレが進むと、アベノミクス失敗と国民が看做すようになり、アベノミクス期待票が喪失する。
この2つのリスクを回避する必要が大きくなったために、
1、消費税増税を先送りする。
2、これ以上の更なる円安にはあまりしたくない。(自民党のスポンサーである財界も、今後の急激・大幅な円安は、あまり歓迎しない空気が強くなった。)
方針に舵を切る事を決断したと思われます。
<<黒田バズーカ>>
上記の安倍政権の路線変更に対して、財務省+日銀は
1、更なる金融政策で景気を刺激し、経済指標の悪化を逆転し、「消費税増税」の可能な環境を作る。
2、財務省+日銀は、更に円安にする。
ことを安倍政権に対して宣言した。
<<安倍政権の黒田バズーカ対策>>
1、国民の支持を背景に、消費増税を先送りする。
2、安倍政権支持率が急落しても、長期政権維持が可能な体制を作る。
⇒ 総選挙実施
1、消費税増税が国民の意思であるとする。・・・財務省が黙らざるを得ない理由
2、少なくとも、あと2年間は、総選挙実施を回避できる
お礼
行動力はすごいですよね。ありがとうございます。