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事後チェック型への移行と検察官に求められる資質について

現在進められている規制改革の基本理念は「事前規制型」から「事後チェック型」への移行を図ることだそうですが、 この改革に伴って、検察に求められる資質や知識は変わってくるのでしょうか。 たとえば、数年前に起きたヒューザーの耐震偽装事件のケースでは、検察は捜査~起訴にあたって専門的な建築の知識を必要とされていたのでしょうか。 私は大学で理系の学問を専攻しているのですが、とある事情があって将来は検察官になりたいと考えております。 つきましては、大学で身につけた理系の知識が役立たせる機会のあるなしを教えていただけないでしょうか。 よろしくお願いします。

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回答No.1

 事後チェック型社会への移行は,これまでは事前に規制の根拠となる法令の範囲内に(場合によっては過度に)調整されていた関係者の利害が調整されず,関係者は,自主的にルールを守ることが求められることになります。  事前規制型社会では,ルールを守らない関係者は,ムラからの排除によって生存を許されなくなるという制裁を受けます。逆にいえば,ムラの掟を受け入れ,過度の規制に甘んじることで,皆で平等の利益を保証されるという関係にあったといえます。また,そのような自主的なルールは,そのスジの「専門家」が寄り合って作るものですから,ルールに反しているかどうかの判断も,「専門家」によって判断されていたといえます。  これが事後チェック型社会になると,明確に定められている(はずの)ルールの範囲では自由に活動ができることになりますから,関係者の行動選択の幅が拡がります。これまでの自主ルールでは,許されなかった活動が,それも法令の枠の中であれば許されることになります。  事後チェック型社会では,法令は,建前上は,明確なルールを定めることになっていますが,旧時代の法令を引きずっていること(旧時代にあいまいであったところが,問題が生じなかったためそのままにされていること)もありますし,もともと,法律関係の用語の定義にはあいまいさがつきまといます。  そうすると,ある活動が法令の枠外にあるとして,その行動を処罰しようとした場合には,検察官は,その行動が法令の枠外にあることを裁判所に納得させなければならないことになります。そのためには,検察官において,法令を正確に理解することが求められますが,その前提として,法令に用いられている用語の正確な理解が必要となります。その用語が,科学技術に関する用語であれば,当然に,その科学技術に関する理解を要することはいうまでもないことです。  さらに困難なのは,法令違反を問われた者がした活動が,いかなる内容のものであるかを理解することです。例えば,耐震偽装問題でも,データを操作したかどうかは,簡単に分かることですが,これで処罰できるのは,せいぜい建築基準法違反(手続違反)にすぎません。これを,例えば詐欺のような罪で処罰を求めるのであれば,どのようなデータの操作によって,必要な耐震強度を備えていない結果を導いたのかを証明しなければならなくなります。あるデータを操作したから,耐震強度が偽装されたとして起訴したにもかかわらず,そのデータの操作は,耐震強度とは関係がないとされたり,そのデータの操作だけでは,耐震強度が基準を下回ることにならないとされれば,下手をすると無罪にもなりかねないわけです。  このようなことからすると,これからの検察官は,法律に止まらず,法律が規制するあらゆる分野の知識を求められるものといえます。  そのことは,裁判官でも弁護士でも変わらないわけで,特に,当事者の提出した証拠による判断を求められ,専門家のサポートを自由に受けられない立場にある裁判官にとっては,大変厳しい状況にあるといえます。  また,特に,検察官としては,法令の枠スレスレの活動をしている者を摘発する場合には,相手もまた,時に弁護士を入れて法令の枠に納まっていることの理論武装をしているわけですから,それを打破できるだけの理解がなければならないことになります。  そのようなことですから,これからの法律家には,理系の知識,理解力が,求められているということができます。

momokubari
質問者

お礼

遅くなってしまい、大変申し訳ございません。 たいへん詳細な解説、本当にありがとうございます。 自分の経験が自分の目指す分野で活かせることを知り、励まされました。

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