ステンレスの磁性-硬度について
- オーステナイトステンレス鋼(SUS304)は冷間加工することでマルテンサイトが析出し、硬度が高くなるとともに磁性を帯びると理解しています。
- しかし、700℃付近で5分程度の熱処理をすると、硬度はほとんど変わらず、磁性が大幅に減少します。
- この現象について、マルテンサイトが消滅することで磁性がなくなると考えられますが、なぜ硬度はほとんど変わらないのでしょうか?
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ステンレスの磁性-硬度について
個人的に調査をしています。 オーステナイトステンレス鋼(SUS304)は冷間加工することで マルテンサイトが析出し硬度が高くなるとともに磁性を帯びると 理解しています。 そこで700℃付近で5分程度熱処理をしたところ、硬度はほとんど 変わらず、磁性が大幅に減少しました。 この現象はどういうように理解したらいいのでしょうか? 磁性がなくなるということは熱処理でマルテンサイトが消滅 したと考えられますが、その場合なぜ硬度はほとんど変わらないのでしょうか? マルテンサイトが消滅した分軟化すると思うのですが。 すみませんがよろしくお願いいたします。
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◎加工誘起マルテンサイト変態の逆変態といいます。 ◎はじめに (1)準オーステナイト系sus鋼の加工誘起マツテンサイト変態(α’変態と略す)とは? ?変態温度は;Ms点~Md点の間の温度領域(-20~150℃) ?どんな加工;絞り・圧延など冷間での加工で、発生。 ?相変化;オーステナイト相(γ)から変態により硬い強度のあるα’相へ変態する現象。 ?結晶の変化;体心立法格子→面心立法格子(BCC→FCC) ?機械的性質の変化;加工硬化を引き起こし、強靭、硬化する。 (2)逆変態(SUS304の場合で、同じSUS鋼でも合金成分量で大きく異なる) ?逆変態温度は;700k(約430℃)を超える温度からはじまります。 923K(約650℃)でほぼ90%は逆変態する。 ?逆変態時間 ;温度により異なるが、 700kでは、3時間でも60%消失 923kでは、わずか10秒 (3)キューリ-点(磁性が消失する温度) ?鉄は ;770℃ ?相変化 ;723℃が重要な温度が鉄ー炭素系平衡状態図にありましたね。すなわちこの温度は共晶線温度です。 この温度より高温がγ(オーステナイト相) 低温がα(フェライト相)です。 鉄 α→γ 加工誘起マルテンサイト α’→γ 2.結論 ・比較的低温の温度領域400℃から、磁性は減少をはじめる。 ・700℃付近で、磁性は、ほぼ消失する。 理由(723℃ですべてオーステナイト相(非磁性体)γ鉄ともいう)になるから ・硬度の低下:加工硬化により転異が増大されているのでこの温度では軟化はしない。 3.注意点 ・600℃~850℃は、鋭敏化温度といいCr炭化物などの発生領域です。 したがって、防錆力が大幅に低下して、応力腐食割れなどにもつながり ます。 熱処理は慎重に行う必要があります。 ・磁性を嫌う製品であれば、SUS316等の安定オーステナイト鋼を使えば、磁性は冷間加工してもでません。 加工誘起マルテンサイト変態 組織が冷間加工により オーステナイト組織 → 加工誘起マツテンサイト組織(磁性) に変わること。これを仮に正の変態としましょう。 この材料を熱処理により加熱、急冷すると 加工誘起マツテンサイト組織 → オーステナイト組織(非磁性) に戻ることを逆変態といいます。 SUS304ステンレスで、深絞りして、変態しマルテンサイト化 した場合には、1050℃まで加熱して固溶化熱処理で オーステナイト組織に戻すことを 逆変態させるといいます。 簡単に考えれば、素材の組織に戻すことを言うと考えてください。
>700℃付近で5分程度熱処理をしたところ、硬度はほとんど 変わらず、磁性が大幅に減少しました。 キユーリー温度が700℃付近にあると思われます。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%AA%E3%83%BC%E6%B8%A9%E5%BA%A6
オーステナイトステンレス鋼(SUS304)は、常温では得られない状態を固溶化熱処理 温度(1050℃)から急冷することでオーステナイト相という組織を作り出している 従って準安定オーステナイト組織とも言われ、熱などに非常に不安定なのです 従って、このステンレスに熱を加える際には↓のような脆性温度帯があることを 十分理解しなければ大変なことになるような場合もあるので注意したいものです さて、今回は誘起マルテンサイト→σ相という非磁性の硬く脆い組織に変態した と考えられるので、左程軟化しなかったと思われます。完全に磁性を無くして ステンレスの特性を発揮させるためには、やはり冒頭の方法しかないと思います
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